2021.11.30
2022.02.18

コールセンターにおける感情分析AIの活用 メリットや利用イメージも

近年では、第3次AIブームとも呼ばれる技術の発展により、さまざまなサービスが実用化されています。感情分析もその一つです。コールセンターにおいては、顧客やオペレーターの音声から感情を把握するための活用が進んでいます。
この記事では、AIによる感情分析の概要や仕組みに加え、コールセンターでの利用イメージや導入メリットについて解説します。

AIによる感情分析とは

AIによる感情分析とは、文章や音声、画像などから感情を読み取る技術のことを指します。ここではコールセンターで利用される音声感情分析について、その仕組みや注目を集める背景について見ていきましょう。

音声感情分析の仕組み

音声感情分析では、AIが音声データを分析することで話者の感情を推定します。具体的には、音声データのトーンや抑揚、テキスト化した会話内容などから話し手の感情を読み取ります。
例えば、声のトーンが高く、かつ会話内容に「好みである」「楽しい」などといった肯定的な単語が含まれていれば話者の感情は良好であると判断できますし、一方で声のトーンが暗く、会話内容も「残念」「つらい」などというものであれば、悪い状態であると判断できます。

感情分析には、精度を向上させるために機械学習が用いられます。機械学習では、まず事前に多様な話し手による怒りや喜びなどの声をAIに読み込ませて傾向を学習させ、分類の基準を作ります。
そのうえで実際の音声データを分析し、その会話がどのような感情で行われているものなのかを分類していきます。

注目されている背景

近年では、AI技術の発展が続いており、特に機械学習方法のひとつであるディープラーニング(深層学習)を用いることで認識精度が大幅に向上しました。ディープラーニングは画像や言語処理など幅広い分野に応用することが可能であり、これによって製造業における検査業務や製品の自動仕分けなどをはじめ、ビジネスの世界における活用も進むこととなりました。

音声感情分析も例に漏れず、ディープラーニングの登場によって精度が著しく向上した技術の一つです。
音声による感情分析自体は昔から取り組まれている分野ではありますが、ディープラーニングを用いることで、話し手の感情をより的確に分析できるようになったため、近年ますます実用化が進んでいます。

コールセンターにおける利用イメージ

以下では、コールセンターにおける感情分析の利用イメージについて解説します。分析を行うシーンは、大きく分けてリアルタイムと事後の2パターンが想定されます。

リアルタイムでの感情分析

通話中の音声データを同時進行でAIに読み込ませることで、現在行われている会話を分析し、注意が必要な応対を発見することができます。
例えば、通話中に著しく感情が悪化している顧客がいた場合は、SVにアラートを出すといった活用ができます。トラブル発生を速やかに検知することができるため、迅速なオペレーター支援が可能となります。

事後的な感情分析

顧客との通話録音データを蓄積してAIに読み込ませ、過去の会話内容を分析することもできます。これにより、VoCの収集やその場では検知できなかったトラブルのチェックなどが行えます。

また、応対の良かったオペレーターのノウハウを展開するのに役立てることも可能です。例えば、感情分析の結果、「あるオペレーターが応対した際に、顧客の感情が良好になるケースが多い」ということが分かったとします。このオペレーターがどのような会話をしているか解析することで、顧客に好印象を与える応対のポイントが明らかにできるでしょう。

感情分析の導入メリット

では、感情分析AIを導入することで、コールセンターにはどのようなメリットがあるのでしょうか。以下では、3つの効果について解説します。

顧客満足度の向上

感情分析により期待される効果の一つとして、顧客満足度の向上が挙げられます。例えば、リアルタイムでの感情分析により、顧客が不満を感じていることを早期に検知し、他のオペレーターやSVがサポートすることで、適切な応対を図ることができます。
また前述のとおり、事後に録音データを分析することで、どのような応対を行えば良い印象を与えられるかのノウハウを抽出することも可能です。得られた結果にもとづいて応対マニュアルなどの見直しを行うことで、より質の高い顧客体験が提供できるようになります。

成約率の向上

顧客が購買を検討している際の感情分析を行うことで、成約率の向上も期待できます。
リアルタイムでの分析によって、オペレーターが顧客の感情をある程度理解しながら会話できることはもちろん、SVからクロージングに向けた的確な指示を送ることも可能になります。

また、過去の録音データを分析し、顧客が最終的に購買に至ったケースで起きている感情変化の特徴を分析することで、成果が上がりやすいトークスクリプトやマニュアルの作成に活かすことができます。

オペレーターの離職防止

顧客だけでなく、オペレーターの音声データも感情分析にかけることで、ストレス状態が把握できます。これにより、オペレーターへの細やかなサポートができるようになり、コールセンター業界で課題となっている離職の防止にもつなげられます。終話後に感情が悪化しているオペレーターのフォローをしたり、応対内容の振り返りを行ったりすることで、不安や不満などが緩和できます。

BIZTELでの感情分析の活用

このような感情分析を行うためには、音声データとのリアルタイムでの連携や、録音データの蓄積などができるコールセンターシステムの活用が有効です。クラウド型のコールセンターシステムであるBIZTELでは、感情分析AI機能を備える音声認識サービス「AmiVoice」と連携して利用することができます。
 ※BIZTELのほか別途AmiVoiceの契約が必要です。

AmiVoiceに表示される感情分析の結果を見ることで、オペレーターはリアルタイムで顧客の感情を把握することが可能です。また、SVの画面からオペレーターや顧客の感情を確認することで、トラブルの発生やサポートが必要な応対の検知も可能となります。
さらに、BIZTELでは感情分析AIである「ESAS」および「Empath」との連携についても検証を進めています。

まとめ

この記事では、コールセンターにおける感情分析AIの活用方法について紹介しました。近年のAI技術の発達は著しく、コールセンターにおける活用も現実的なものとなっています。さらに、離職率の高さというコールセンター業界の課題解決においても有効な手段となるでしょう。