「あなたの敬語、大丈夫?」言葉のテスト【敬語編】
コールセンターで働く私たちは、主に「言葉」を扱ってその使命を果たしています。
少し堅苦しい言い方になりましたね。
仕事柄、言葉をいかに巧みに操れるかが鍵で、自ら言葉に精通することが望まれますね。
しかし、皆さん
自分の敬語に自信ありますか。
電話応対していて、お客さまから
「あなたの敬語の使い方間違っているよ」
と指摘されたことはありませんか。
これまで研修の中で敬語に触れてきましたが、意外と苦手にしている方が多いですね。
SVや管理者に敬語テストしても、100点満点はおろか、50点取れない方も少なくありません。
オペレーターの応対指導する方の敬語があやふや。
笑うに笑えません。
さて今一度、自分の敬語力を確認してみましょう。
目次
敬語テスト
答とその理由もあわせて考えてください。
(理由や正しい言い換えが大事です)
※設問をよく読んでくださいね(先入観や思い込みがあると引っかかります)
問題は10問(一問10点)
合格ラインは70点。
制限時間は10分です。
※解答は文末【解答編】参照。
問題1
次の使い方のうち間違っているものはどれ?
その理由は?
a:お客さま
b:クライアントさま/ユーザーさま
c:クライアントさん/ユーザーさん
d:田中部長さま
問題2
次の言い方は正しい?
(×なら正しい言い方は?)
(お客さま)「~を~してくれる?」
(オペレーター)「了解いたしました。」
問題3
次の言い方は正しい?
(×なら正しい言い方は?)
「使い方をお教えいたしましょうか?」
問題4
次の言い方は正しい?
(×なら正しい言い方は?)
「まず最初に、右上のボタンをクリックしてください。」
問題5
次の言い方は正しい?
(×なら正しい言い方は?)
「部長が先ほどお話しになりましたが~」
問題6
どちらの表現がより適切?
その理由は?
a:「お客さまは、よくご存じでございますね。」
b:「お客さまは、よくご存じでいらっしゃいますね。」
問題7
どちらの言い方が正しい?
その理由は?
a:「本日担当させていただく、山田と申します。」
b:「会議室を使わせていただき、ありがとうございます。」
問題8
次の言い方は正しい?
(×なら正しい言い方は?)
(応対を保留してSVに相談)「お客さまが、このようにおっしゃられています。」
問題9
次の言い方は正しい?
(×なら正しい言い方は?)
a:「工事担当者が明日、お客さまのご自宅に伺います。」
b:「工事担当者が明日、お客さまのご自宅に参ります。」
問題10
次の言い方は正しい?
(×なら正しい言い方は?)
お客さま「我儘ばかり言ったけど、最後まで付き合ってくれてありがとう。あなたは本当に素晴らしいね。」
オペレーター「とんでもございません」
問題は以上です。解答はこのブログの最後にあります。
オペレーターの方であれば50点以上、SV以上の方であれば70点以上はほしいところです。
敬語が全てではないけれど
今回敬語テストしておきながらなんですが、必ずしも敬語の文法に縛られる必要はありません。
たとえ敬語の扱いを間違っていたとしても、素晴らしい応対は出来ます。
敬語に縛られて不自然な応対になってしまうのは、本末転倒でもあります。
しかしながら、コールセンターで働く人は皆、「言葉のプロ」であることが望まれます。
同じ「言葉のプロ」であるテレビ局のアナウンサーがいい例です。
たとえばアナウンサーが漢字の読みを間違えたり、間違った言葉遣いをしていたりしたら、皆さんはどう感じますか。
「アナウンサーのくせに」
「テレビ局はどんな教育をしているのか」
などと思ったりしませんか。
敬語に縛られる必要はありませんが、言葉の正しい使い方を知っておくことに無駄はありません。
さらに「言葉のプロ」として、‟美しく、しなやかに言葉を操る”高みを目指すのも悪くありません。業務が忙しく、なかなか勉強する機会が取れないと思いますが、定期的に言葉や敬語に向き合う場を作れるようにするといいですね。
日報など定期的な提出を義務付けているコールセンターでは、一日一問クイズを出して、日報に解答を書かせているところもあります。
今回の敬語テストもぜひ応対品質研修の一環として、オペレーターやSVのみなさんにやってもらってみてはいかがでしょうか。
解答編
問題1
a:〇
b:×
c:×
d:×
「クライアント」や「ユーザー」といった英語に日本語の敬称をつけるのは不自然です。
「ドクターさま」や「ポリスさま」、「キャプテンさま」とは言わないですね。
しかし、「クライアントさま」を使う人はベテランのなかにも多く見受けられます。
「クライアント」の意味は「顧客(お客さま)」であり、これに「さま」をつけるのは「顧客さま」、「お客様さま」ということになります。やはり違和感がありますね。
「クライアントさん」や「ユーザーさん」も、「さま」が少しくだけた「さん」になっただけで同じです。
「部長さま」についても、役職名自体が敬称なので、典型的な二重敬語になってしまいます。
問題2
×
「了解」には納得し、了承するという「許可」のニュアンスが含まれています。
相手がお客さまや上司の場合には、すごく失礼な言い方になってしまいます。
「承知いたしました。」「かしこまりました。」が適切です。
問題3
×
「教える」は上からものを言っているように聞こえ、相手が不快に感じることがあります。
「よろしければ、使い方をご説明いたしましょうか?」が適切です。
問題4
×
「まず」も「最初」も同じ意味で、重ね言葉になります。
「頭痛が痛い」と同じですね。
同様な重ね言葉でよく間違うのは、「従来より~」、「お体をご自愛ください」、「各ファイルごとに~」、「あらかじめ予定された~」など。
重ね言葉は氾濫しており、かつ日常会話に定着しているところもあり、間違っていても不快感どころか気づくことすらないかもしれません。
しかし「言葉のプロ」なら、正しく理解して使いこなせるようになりたいですね。
問題5
〇
「お/ご~なる」の基本的な尊敬語です。
「お話になられましたが~」と解答した方は、二重敬語です。
※「お/ご~なる」は意外と注意が必要
丁寧に話そうとして過剰敬語になりやすく、「れる/られる」をつけがちです。
ここは、きちんと敬語教育ができているか差が出るチェックポイントです。
問題6
b
「ございます」でも間違いではないが、基本的には自分に対して使う言葉です。
相手に対しては「いらっしゃる」のほうがより敬意が高まります。
問題7
b
最近多いですね、「させていただく」問題。
1.相手側、または第三者の許可を受けて行う場合
2.そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合
文化庁では、この2つの条件がある場合だけ「させていただく」が適切だとしています。
問題8
×
典型的な二重敬語です。
「おっしゃる」+「られる」
「お客さまが、このようにおっしゃっています。」が適切です。
問題9
どちらも〇
「伺う」はお客さまの自宅に行くことに対して、自分を下に扱う『謙譲語Ⅰ』、
「参る」は、自分の行為を相手に対してあらたまった言い方にすることで、相手に対する敬語として働く『謙譲語Ⅱ』に該当します。
どちらも正しいものの、相手先の場合は、「伺います」のほうが自然ですね。
※意外と難しい「伺う」と「参る」の使い分け
文化庁がわざわざ『謙譲語Ⅰ』と『謙譲語Ⅱ』の二つに分け、なおかつこの二つの言葉の説明にページを割いているのは、実は使い分けが難しいからです。
【伺う】謙譲語Ⅰ、向かう先に対する敬語。
・立てられる人物や物(向かう先)に対する敬語。
〇「先生の所に伺う」
×「弟の所に伺う」
・自分の行為(自分側の行為)に対して使う。
〇「息子が先生の所に伺いまして~」
〇「田中君が先生の所に伺ったそうですね」
【参る】謙譲語Ⅱ、相手に対する敬語。
・自分側の行為に対する敬語。
〇「私は明日から海外に参ります」、「息子は明日から海外に参ります」
〇「弟の所に参ります」、「先生の所に参ります」
×「あなたはどちらから参りましたか」
×「先生は来週、海外へ参ります」
・自分側の行為ではないが、話や相手に対して丁寧に述べる。
〇「向こうから子供たちが大勢参りました」、「夜も更けて参りました」
問題10
〇
謙遜して、相手の褒めや賞賛を打ち消す使い方として適切。
「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」と解答した方は、知識が古くなっているので、頭をアップデートしましょう。
かつては「とんでもございません」は間違っているとされ、上記の言葉のように言い換えるよう指導されていました(今でもネットに多く載っています)
というのも、この言葉は「とんでもない」というひとつの形容詞であり、「とんでも」と「ない」で分割することは語法的に間違っています。そのため、「とんでもない」、「ございません」から「とんでもないことでございます」となるわけです。
しかし、2007年(平成19年)文科省下の文化審議会が発表した「敬語の指針」によると、相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現として、「とんでもございません(とんでもありません)」を使うことは問題がないという指針が示されています。
用法として間違っていても、既に定着した言葉として認められた言葉ということです。
「とんでもございません」にどうしても抵抗がある方は、「恐れ入ります」など他の言葉に置き換えるといいでしょう。