やってみて分かった、リモート教育の課題とコツ【前編】

新型コロナ対策で始まった、新しいコールセンター運営もだいぶ定着してきました。
まだまだ試行錯誤の最中かと思いますが、良い気づきや解決すべき課題などがさまざま見つかったのではないでしょうか。

その中でも、スタッフの“人材育成”はひとつの大きなテーマといえます。

実体験をもとに、Web会議システムを使ったリモート教育(※1)に関する声が寄せられたので、今回はそれについて皆さんと情報を共有し、対策を考えてみたいと思います。

(※1)リモート教育:研修講師と受講生が直接対面して行うのではなく、インターネットを通じて離れた場所から教育すること。

 

リモート教育のメリット

・まだ課題は多いものの、リモート教育はやり方次第で効果が期待できる。

一番多く聞かれる声がこれです。まだはっきりと断言できないものの、コロナが沈静化して無くなるといった一時的なものではなく、従来型の集合研修と共存していくのではないかと思う人が多いようです。

ZoomをはじめとするWeb会議システムの機能(チャット・ブレイクアウトルームなど)や、オンラインならではの強みにより、従来型の研修より効果的な面もあるようです。

具体的な効果について、以下の項目で紹介していますので見てみましょう。

 

・対話が行われない座学研修なら、従来型より効果的にできる。

講師と受講生の対話がない講義型の座学研修においては効果を発揮するようです。

特に1か所にわざわざ集まらなくてもよいというのが強みで、全国から採用した大量の電話オペレーターを一人の講師で教育できるという、従来型の研修では出来なかったことが可能になります。

 

・グループワークをやると皆、良くしゃべる。

これは発見でした。

コロナ自粛での引きこもりによるストレスがたまっているのか、グループワークをやると皆が良く発言し、議論が活発化しました。

リモート教育では受講生に発言する機会を多く作ると研修も盛り上がるようです。

 

・チャットでの意見交換はしやすかった(参加者全員が発言できる・発言しやすい)

ZoomなどのWeb会議システムについているチャット機能を使うことで、参加者はいつでも自由にメッセージを送り、皆と共有することができます。

チャットを利用することで、研修中、参加者全員に発言するチャンスができます。さらに人前で発言するのが苦手な人にとっては、そのハードルが少し下がります。不明点の確認やちょっとしたクイズの実施をする際にも活用でき、リモート教育ならではのメリットとなっています。

 

・人見知りタイプには、リモート教育の方が落ち着ける。

こういう声もありました。

 

リモート教育のデメリット

全体の課題

・受講生間の交流は集合研修よりも劣る。

従来型の研修では、研修開始前後や休憩時間などに世間話をしたり、情報交換したりする場がありました。初対面の人とは名刺交換をすることもあるでしょう。場合によっては研修後に飲みに行くということもあったでしょう。これがリモート教育ではほぼ無くなります。

無くなって初めて、こういう一見無駄に見えることが実は大事なことだと気づかされます。

 

・受講生よりも講師のほうがやりづらい。

慣れの問題かもしれませんが、リモート教育は講師側に多くの負担をかけるようです。詳細については、下段【講師側の課題】を参照してください。

 

システムや環境の課題

・事前に接続テストをしても、当日上手くいかないことがある。

リモート教育をする際、ほとんどの方が前日までにあらかじめ接続テストをされると思いますが、テストでは問題がなかったのに研修当日になって映像が乱れる、音声が途切れる・つながらない、といったトラブルが散見されます。

回線のデータ状況などは日々変わるので、研修当日は早めに接続状況を確認する必要があります。

 

・複数拠点で同時に研修をすると、映像や音声が上手くつながらない拠点が出やすい。

映像や音声の通信安定性については、インターネット回線が有線か無線かに加えて、利用するパソコンのCPUやメモリといったスペックが強く影響します。企業などにおいてシンクライアントを活用している場合は、サーバでのデータ通信状況も影響します。

問題が発生すると復旧に時間がかかったり、研修自体ができなくなったりと、スケジュールに大きく影響します。

教育で利用する各拠点のP Cは、なるべくスペックの良いものであることが望まれます。

 

・受講生に発言や大声での発声を求める研修の場合、それ相応の場所を確保する必要があるため、事前に知らせておく必要がある。

受講生は必ずしも自宅にいるとは限りません。喫茶店等、自宅以外の場所で受講する場合があります。また、たとえ自宅にいても大声が出せない環境にいるケースもあります。

受講生に何らかの発言や発声練習などを求める研修の場合は、その旨を事前に伝えておく必要があります。

 

講師側の課題

・受講生と講師が初顔合わせだとやりづらい(お互いの距離感がつかめない)

「この人にはどこまで言っていいのだろうか?」

「彼は前向きなのか?好意的なのか?それとも...?」

対面型の研修でも難しいのですが、これまでは場を共有することで、なんとなく空気感が読めました。リモート教育だとその空気を読むのが非常に困難です。

 

・アイスブレイク(※2)に時間がかかる。

講師が各受講者の人となりを把握するにあたり、従来型の集合研修よりもアイスブレイクの量・時間が増える傾向にあるようです。

(※2)アイスブレイク:緊張をほぐし、コミュニケーションを円滑にするために、会議や研修をはじめる前に簡単なゲームや自己紹介をおこない、初対面の人どうしのぎこちない雰囲気を和ませること。

 

・講師が教育の手ごたえを感じにくい(受講生満足度や成果が読めない)。

これが研修講師が感じる一番の課題のようです。実地の研修では受講生の顔を見渡すと、理解しているのかしていないのかがだいたい分かります。しかし、画面越しだとこうした雰囲気や手応えが感じにくくなります。

これは研修内容をよりブラッシュアップさせていくにあたって大きな障害となります。また、最後にテストを実施しないと受講生の理解度を把握することもできません。

 

受講生側の課題

・受講者同士が気を使って、質問が減る。

受講生にとっても現場の空気感が読めないため、音声での発言がしづらいと感じるようです。また発言のタイミングも慣れていないせいか、つかみにくいようです。

講師の側でも、従来型の研修であれば受講生の表情から疑問点があるか察知できるのですが、リモート教育では気づきにくいため、そのまま先に進めてしまいがちになります。

 

・雑談が減る。

研修のちょっとした合間の雑談は受講生の息抜きになり、リラックス効果と集中力をもたらしてくれます。

これがリモート教育では激減します。そもそもコソコソ話ができないですからね。

こういうちょっとしたことが、受講生の集中力の阻害要因となります。

 

・サボってもバレない。

研修に限らず、これまでWeb会議に参加したことのある方ならお気づきだと思いますが、ボーっとしていても誰にも察知されません

実地の研修や会議なら、発言者や司会者の視線を受けるため気が抜けないものの、リモートの場合、数名の参加者しか画面に表示されないため、まず視線を受けることがありません。カメラのないPCであればそもそも映像が表示されないため、他のことをしていても気づかれません。

研修実施後の理解度チェックのテストが不可欠です。

 

以上のように、Web会議ツールを用いたリモート教育にはメリットがあるものの、同様にデメリットも数多くあります。とくに”場を共有しない”ことによる難しが大きな課題として挙げられます。

さて、次回はこれら実体験を通して得られた、リモート教育のコツノウハウについて一緒に考えてみましょう。