2021.06.11
2022.03.09

CTIについて学ぶ!仕組み・PBXとの違い・必要な機器は?

顧客接点の強化が企業の重要課題として認識されるにつれ、コールセンターが担う役割も拡大してきています。

もし、現在のコールセンター運用に限界を感じているのなら、CTIの導入が解決策になるかもしれません。

CTIの導入においては、その仕組みや機能PBXとの違いに加え、必要な機器・ソフトウェアなどを理解し、適切なサービスが選定できるようにしておきたいところです。

ここでは、CTIの理解を深めるためのさまざまな情報をご紹介していきます。

CTIの仕組み

まず、CTIの仕組みについて解説します。

CTIとは、「Computer Telephony Integration」の頭文字をとった略語で、「コンピューターと電話を統合した仕組み、またはその技術」を指します。

オフィスやコールセンターでは、PBXと電話端末を接続して通話を実現しています。このとき、PBXと電話端末だけでなく、PCやさまざまな外部システムと連携し、付加機能を提供する仕組みがCTIです。

CTIは、電話・PC・FAX・CRMなどを連携させ、コールセンターの電話を「複数の機能をもったコミュニケーションデバイス」に変化させますPCとヘッドセットのみで架電・受電が行えるソフトフォンが利用できるほか、CRMと連携することで着信と同時に顧客情報を表示することができます。

現在は、インターネットとP Cがあれば利用できるクラウドPBX・クラウドCTIが登場し、シェアを広げています。公衆電話回線を用意しなくても電話対応業務ができるようになったため、手軽にコールセンター運営が行えるようになりました。

CTIの主な機能

CTIの代表的な機能は、次のとおりです。

●顧客情報のポップアップ表示

電話番号をもとに顧客情報を検索し、コンピューターの画面上に表示する機能です。電話を取る前に顧客の名前や住所が把握できるため、スムーズに応対を始めることができます

●顧客情報管理システム(CRM・SFA・MAなど)との連携

顧客情報を管理するシステムと連携することで、過去のやり取りや顧客の状況などを把握しながら応対することが可能です。応対の際に無駄なやりとりが発生せず、オペレーターの作業効率化や応対品質向上が望めます。

●クリックトゥコール

PCに表示された電話番号をクリックするだけで発信ができる仕組みです。電話番号をダイヤルする手間が省けるとともに、かけ間違いを防止することができます。

●通話録音連携

通話音声を録音・再生できる機能です。顧客とのやりとりが音声で記録できるので、「言った・言わない」のトラブル防止顧客対応品質の向上など、さまざまな業務改善に役立ちます。

CRMシステムと連携することで、個々の通話音声と応対記録のデータを紐付けて管理することも可能です。

CTIとPBXの違い

よくCTIと混同される仕組みに「PBX」があります。既に述べたようにPBXは「構内交換機」であり、CTIとは別の仕組みです。

PBXとは

構内交換機(Private Branch eXchange)」の略称で、内線電話の接続をコントロールします。「内線同士」「外線から内線」「内線から外線」といった具合に、複数の経路を制御できることが特長です。

本来、構内交換機は、より少ない公衆電話回線で電話網を構築するための仕組みであり、回線利用料の削減が主な役割だったと言われています。その後、デジタル化によってインターネット回線を利用する「IP-PBX」や、構内に機器を設置する必要がない「クラウドPBX」が登場しました。

PBXの機能紹介

では、もう少し具体的にPBXの機能を紹介していきます。PBXには、大きく「着信制御」「転送制御」「保留制御」という3つの機能があります。それぞれの具体的な内容は次のとおりです。

着信制御

着信制御は、PBXが持つ代表的な機能のひとつです。簡単に言えば「親番号(契約している外線番号)への着信を子番号(実際に着信させる電話番号)に振り分ける機能」です。

具体的には、契約番号Aへの着信は経理部門の子番号1へ振りわけ、契約番号Bへの着信はカスタマーサポート部門の子番号2へ振り分ける…といった制御を行います。親番号と子番号の紐づけをPBXが管理することで、取り次ぎの手間をなくし、柔軟な着信制御が可能になります。
また、電話を利用する社員が増えた際、契約番号の数は必要最低限に留めて子番号を追加することで、電話回線の契約費用を抑えることもできます。

転送制御

転送制御は、大きく「手動転送」「自動転送」の2つに分類され、手動転送にはさらに「保留転送」と「ブラインド転送」の2種類があります。

・手動転送

⇒保留転送
着信した通話を一旦保留し、転送先の番号を手動で押下して転送を行う方法です。保留転送のステップは次のように進みます。

①発信元との通話⇒②保留ボタン押下⇒③転送先番号の押下⇒④転送先へ用件を伝える⇒⑤転送⇒⑥転送先での通話開始

このように取次者は①と④で必ず2回(2者)の通話が必要です。取次者にとってはやや負担が大きい方法ですが、転送先の担当者は「誰から、どんな内容か」を把握した状態で応対することができます。取次者の仲介が必要になるため、仲介転送・アテンド転送・応答後転送とも呼ばれます。

⇒ブラインド転送
保留転送の「④転送先へ要件を伝える」が省略できる機能です。取次者は、転送先との通話が無くなる分だけ負担が軽くなります。直接転送とも呼ばれる機能です。

・自動転送

人の手を一切介さず、転送処理をすべて自動化するための機能です。自動転送を利用したい電話番号Aに対し転送先の電話番号Bを設定することで、着信時にA⇒Bの転送処理が自動で行われるようになります。転送処理に入る条件(着信してから経過した秒数など)も設定することができます。離席時・休暇時・在宅勤務時などにも利用できる機能です。

保留制御

保留制御は、「自己保留」「パーク保留」の2つが代表的です。

・自己保留

一般的な保留機能で、着信を受けた人が保留ボタンを押下することで利用できます。また、「保留中の電話機のみで解除⇒通話再開」といった操作ができるため、他の電話機で応答されたくない通話に向いています。

・パーク保留

自己保留とは異なり「保留した電話機以外でも通話が再開できる」機能です。着信を受けたのちにパーク番号を押して保留状態に入り、他の電話機で同じパーク番号を押下すると保留状態が解除され、通話が再開できるという仕組みです。同じオフィス内で声が届く範囲に転送先がいる場合は、「パーク保留⇒転送先に口頭で声掛け⇒転送先で保留解除・通話再開」といった使い方ができ、手動転送よりも手早く簡単に取り次ぐことができます。

CTIとPBXの違い

すでに述べたように、CTIは「コンピューターと電話を統合するための技術(仕組み)」の名称です。PBXを含む電話に関する仕組みと、他のシステムやP Cとを連携させる仕組みを指します。

CTIは複数のシステムで構成される”仕組み”を指す

CTIの正式名称「Computer Telephony Integration」には「Integration」という言葉が含まれています。Integrationは、日本語で「統合・完成・調整」といった意味をもつ単語です。このことからもわかるように、CTIは単体で何かを提供するというよりも、複数のシステムをまとめ、個々のはたらきを調整する役目を負っているのです。

CTIを構成する要素としては「通話用端末(PC・ソフトフォン・ハードフォンなど)」「CTIサーバー」「PBX」「顧客情報データベース」「通話録音用機器」などが一般的でしょう。近年は、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)とのデータ連携を担う場合もあります。

PBXはCTIに統合されるシステムの“一部”

前述したようにPBXは着信制御・保留制御・転送制御を行うものです。一般的には「PBXサーバー」と呼ばれる機器を設置することで、こうした機能が利用できるようになります。CTIはこのPBXを制御し、他のシステムと連動させることでコールセンターシステムにさまざまな機能を付与しています。このことから「PBXはCTIによって統合されるシステムの一部」と言えます。ちなみに、PBXには次のようにオンプレミス型・クラウド型の2種類があります。

PBXの種類

・オンプレミス型

自社内(構内)にPBXサーバーを設置する方式です。設置と同時にきめ細かいカスタマイズを施すことができます。一般的には「イニシャルコスト+月間の費用(保守費用など)」で利用でき、月間の費用は低額であることがほとんどです。ただし、PBXサーバーの調達・設置・カスタマイズといった工程には数百万単位の費用が必要になることもあります。また、業務要件の変更や座席追加、故障対応などに伴い、契約にない設定変更・保守作業が発生する場合は、別途数万円~数十万円の費用が必要です。こうしたことから、使い方によってはクラウド型よりもランニングコストが大きくなる場合もあります。

・クラウド型

クラウド型PBXは、PBXの持つ機能をクラウドサービスとして提供する方式です。インターネットプロトコルを使用した通信を行うIP-PBXの発展版で、インターネット回線さえあれば、場所の制限を受けることなくどこでも利用できます。また、PBXサーバーの調達・設置を行うことなくシステムが構築できるため、オンプレミス型と比べてイニシャルコストが非常に小さいという特長もあります。月々にかかる費用だけを比べるとオンプレミス型よりも高額ですが、保守費用が定額の月間利用料に含まれていたり、席数の変更・機能追加などにかかる費用が抑えられたりするため、年間単位のトータルコストでは安価になるケースも少なくありません。

CTIとPBXのはたらき

前述したように、CTIが統制できるシステムの一つにPBXが存在します。CTIは、コンピュータシステムによって電話通信全体を制御しつつ、周辺システム(CRM・SFA)などとの連携も管理しています。例えば、CRMの顧客情報を着信時にポップアップ表示するという動きは、CTIによって実現されるものです。また、「SFAの画面上に表示された顧客ページから、直接電話をかける」といった動きも、CTIによってSFAとPBXが連携することで実現します。

一方、PBXは電話システム全体のうち、発着信・転送・保留といった「基礎的な電話のふるまい」を専門的に制御しています。

「CTIは広い範囲でデータとシステムの連携を制御し、PBXはその中でもとくに電話に関する機能を提供している」と考えれば、つながりを理解しやすいでしょう。

CTIの導入に必要なソフトウェア・機器は?

CTIの導入方法として、オンプレミス型クラウド型の2通りが存在します。一般的に必要なソフトウェア・機器等は、それぞれ次の通りです。

オンプレミスで導入する場合

  • CTIシステム
  • PBXサーバ
  • 公衆電話回線
  • ビジネスフォン(物理的な電話機)

クラウドの場合

  • PC及びヘッドセット
  • インターネット回線
    ※これらの機器に加え、クラウドCTI・PBXサービスの利用申込みが必要

クラウド型では物理的な設備が不要です。インターネット回線と、ソフトフォンなどを動作させるためのPC・ヘッドセットがあれば導入できます

こうした手軽さ・柔軟さ・コストの低さが、現在クラウドCTIが急速に普及している要因となっています。

クラウド型CTIの導入事例

実際に、オンプレミス型CTIからクラウド型CTIにリプレイスした企業の事例を見てみましょう。

今回紹介するのは、1893年創業の大手漢方製剤メーカー「株式会社ツムラ」さまの事例です。同社では、年間約4万件の問い合わせを、10名強のオペレーターで処理していました。

●課題

当初は既存のオンプレミス型ビジネスフォンによるコールセンターを運営していたものの、コール数の増加や複数拠点化に対応しきれなくなったそうです。そこで、顧客数・コール数の増加に対応しつつ、オペレーター・拠点間のスムーズな情報共有を支える仕組みとして、クラウド型CTIへのリプレイスを決定しました。

●リプレイス後の効果

同社では以下のような効果を得ることができました。

  • コールセンターの稼働状況に応じた入電コントロールが可能になり、話中率は5%以下、放棄呼は1件/日まで減少
  • CRMとの連携により顧客情報のリアルタイムな共有・対応品質向上が達成された。
  • 以前使用していたオンプレミス型PBXに欲しい機能を追加する場合は1,000万円単位の予算が必要だったが、クラウド型CTIであれば50万円以下で導入できたため、大幅なコスト削減につながった。
  • 複数拠点間における情報共有がスムーズになった。
  • オペレーターの業務量均一化やシフト配置の最適化が進んだ。

同社はさらに、在宅勤務制度への適用やBCP対策としての活用を視野に入れているとのことであり、まさにクラウド型CTIの強みを最大限に引き出している好例といえます。

まとめ

本稿では、CTIの仕組みや機能のほか、PBXについての具体的な解説とその違いなどについて解説してきました。

CTIは複数のシステムを複合し、従来の電話システムにさまざまな付加価値を加えられます。また、また、PBXはその中でも電話に関する機能を専門的に管理・制御する仕組みです。両者ともにクラウド型を採用することで、コストパフォーマンス・スケーラビリティ・設定変更の手間の少なさといったメリットが発生します

時間と予算の制約がある中でコールセンター強化を目指すなら、ぜひクラウド型CTI・PBXの活用を検討してみてください。

 

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