コンタクトセンターでのEX(employee experience)を向上させるツール・システムとは?

近年、コンタクトセンターではCX(顧客体験価値)の向上が叫ばれてきました。

しかし、顧客体験価値を上げるにはその提供元である従業員の満足度、すなわち「従業員体験価値= Employee Experience(EX)」を向上させる必要があります。EXが考慮されていない職場では、従業員の離職率が下げ止まらず、結果的にCXにも悪影響をもたらすためです。

複雑化・高度化するコンタクトセンターにおいて、今やEXはCXと表裏一体をなす指標といえるでしょう。ここでは、EXの基礎知識と共に、具体的な施策につながるツールを解説します。

1.コンタクトセンターでEX(employee experience)を重視すべき理由

まず、EXの概要とコンタクトセンター領域で重視すべき理由について解説します。

EX(Employee Experience)とは?

EXとは、端的に言えば「従業員が働くことによって得られる体験、満足度を高めることを目的とした概念」のことです。近年、GAFAなど海外の巨大企業が挙ってEX向上施策を打ち出しています。その背景には、「EX向上が生産性やCXの向上、ひいては競合優位性につながる」という考えがあります。世界的に人材の流動性が高まる中で、優れた人材を獲得・維持するためには「この職場で働きたい」と思わせる動機が必要です。

また、従業員のエンゲージメントを高め、高いモチベーションを維持した状態で働いてもらうことで、あらゆる業務の質が上がっていきます。このようにEXは単なる人手不足対策ではなく、長期的な企業の成長を促す概念なのです。

コンタクトセンターにおけるEX(employee experience)の重要性

EXは、コンタクトセンター領域においても重要だと考えられています。現代のコンタクトセンターは「顧客体験」「顧客満足度」「サービス品質」を重視した業務プロセスを敷いています。しかし、これらはいずれも一朝一夕に高められるものではありません。

特に離職率が高いコンタクトセンターの場合は、スキル・ノウハウの平準化が難しく、上記3つの課題をクリアするための土壌が形成されにくい傾向があります。

例えば、CXが重視される中でオペレーターへの要求水準や業務負荷が高すぎれば離職率を高めてしまうでしょう。

EX向上によってこれらの課題が解決されれば、離職率の低減に効果があると考えられます。

EX(employee experience)を高めるためのステップ

EXを高めるのは、「組織体制」「労働環境」「技術」という3つの観点からのアプローチです。

・組織体制……顧客と従業員を中心とした組織体制
・労働環境……労働環境の整備
・技術……仕事のために必要なツール、システムの充実

このうち、組織体制および労働環境については、既存の仕組みを改善したり、運用方法を変えたりすることで実現できるでしょう。しかし、実際に従業員が触れるシステムが改善されなければ「仕事のしやすさ」「利便性」などは生じず、満足度や体験が上向きません。そのため、EX向上策としてITシステムの整備にも注力すると良いでしょう。

2.コンタクトセンター向けEX(employee experience)向上施策とは

次に、EX向上対策の具体例を見ていきましょう。いずれもITシステムを有効活用し、EX向上へとつなげています。

在宅勤務によるライフワークバランス、ライフイベントへの対応

●使用するシステム

・クラウド型コールセンターシステム
・クラウド型CRM・SFA

上記システムを使い、在宅で受電・架電業務が可能な環境を整備することで、余暇時間が拡大し、ワークライフバランスの向上につながります。また、オペレーターの通勤ストレスやコスト(時間・身支度の時間)、新型コロナへの感染リスクなどを低減させることも可能です。

さらに、育児や介護などのライフイベントを理由とした離職・休職を緩和する効果もあります。このようにワークライフバランスの維持やライフイベントに対応しながら働く体験が、従業員のエンゲージメントを高めていきます。

徹底した業務効率化による“周辺業務”からの解放

●使用するツール

・音声認識システム
・音声認識IVR

人間はマルチタスクが肥大化するにつれてストレスが増え、生産性が落ちるという研究結果があります。この結果に従うならば「コア業務(顧客との1:1の対応)」以外のタスクを徹底して効率化・自動化することでストレスが減少し、EX向上につながるといえるでしょう。

例えば、問い合わせ内容に応じた情報検索や対応後の事後処理、メモ作成などは、コア業務以外の「周辺業務」といえます。音声認識システムを活用すれば、通話内容の自動文字起こしや顧客感情の把握、問い合わせ内容と関連するQAの自動表示により、こういった業務の処理効率が上がります。

さらに音声認識IVRによる受注/解約の自動受付などで業務フローが効率化されれば、オペレーターは「働きやすい」という体験を得ることができ、EX向上が見込めます。

教育・研修制度の充実による「スキルアップ」体験の提供

●使用するツール

・クラウド研修サービス

教育・研修によって得る知識は、顧客対応の最前線にいるオペレーターにとって貴重な武器となります。十分な武器を持った状態で業務に臨めば、当然のことながら戸惑いやストレスは減るでしょう。したがって、教育・研修制度の充実度は、コールセンターの働きやすさを測る指標のひとつともいえるのです。

一方、専任の研修担当者がいないコールセンターでは、SVが現場業務と研修講師を兼務している場合が多いのが実情です。

こうした現場では、すべてのオペレーターに十分な教育・研修を施す余裕がありません。クラウド研修管理サービスは、講義動画やPDFのマニュアルなどをオペレーターにクラウドで共有でき、研修を自動化できる仕組みです。クイズによる研修内容の理解度チェックなど、研修の進捗状況を可視化できるほか、在宅勤務環境でのリモート教育にも対応しています。

つまり、最小限の人手で多くのオペレーターに教育・研修を施すことができるため、有望なEX向上策のひとつになり得るのです。

3.まとめ

ここでは、EX(employee experience)の概要やコンタクトセンターにおける重要性、ITを使ったEX向上策などを紹介してきました。CXを担う最前線であるコンタクトセンターでは、業務負荷の高まりがEXの低下につながります。限られたリソースの中で、CXとEXの低下を防ぐには、ITツールをうまく活用していく施策がおすすめです。

最新のクラウド型コールセンターシステムは、コンタクトセンターの業務に必要な機能を提供するだけでなく、従業員の業務効率を向上させる機能が多数搭載されています。組織体制および労働環境の整備と並行してシステムの変更も視野に入れると良いでしょう。

この機会にEXの観点もぜひコンタクトセンターの戦略に取り込んでみてください。