CRM/コンタクトセンター構築に役立つテクノロジートレンド
顧客体験価値が重視される今、顧客の使用する多様なコミュニケーションツールに対応できるコンタクトセンターが注目を集めています。さらに、これまで企業活動の中心であった基幹システム(ERP)に加え、CRMが重要さを増していることも見逃せません。
一層の顧客体験向上を目指し、CRM/コンタクトセンターを構築・強化するためには、どのようなシステムが必要なのでしょうか。最新のテクノロジートレンドに沿って解説します。
目次
CRMとは何か?
CRMは、Customer Relationship Managementの略称です。日本語では「顧客関係管理」と訳されます。CRMは本来、システムやソリューションの名前ではなく、1990年代に米国で誕生した経営手法の一種です。具体的には、「顧客接点における情報を一元管理し、顧客との長期的な関係を構築し、製品やサービスの継続的な利用に繋げ、収益の拡大を図る経営手法」といえます。
また、経営手法としてのCRMをITシステムに落とし込み、具現化したものが「CRMシステム」です。しかし、昨今では「CRM」といえば「CRMシステム」を指すことが多いでしょう。
前述したようにCRMは、顧客と継続的に良好な関係を保ち、自社の利益を拡大させるために使用されます。また、その一環としてコンタクトセンターとの連携も重視されるようになりました。
コンタクトセンターもオムニチャネル化に対応し、顧客に良質なサービスを提供するという目的があります。そのため、CRMとは親和性が高く、相互にシナジーを発生させる存在といえるのです。
エンタープライズITの中心はERPからCRMへ
冒頭でも触れたように、かつてエンタープライズITの中心はERPといっても過言ではありませんでした。在庫、購買、販売、人事、会計など企業活動に欠かせない業務の機能をカバーするERPは、企業が積極的に投資を行うITシステムだったのです。しかしここ数年で、CRMへの投資額がERPを追い抜く現象が確認されています。
実際に米国ガートナー社が2017年に発表した統計では、エンタープライズIT市場において、CRM分野の投資額がERPを上回っています。この理由としては、「所有」よりも「利用」が重視される「サブスクリプション型ビジネス」の台頭が挙げられるでしょう。サブスクリプション型ビジネスでは、顧客との良好な関係が利益に直結するため、CRMの重要性が一層増します。また、CRM導入を求める層は、コンタクトセンターの構築を検討する層も含まれると考えられます。「顧客に良質なサービスを提供する」という共通した目的を持つCRMとコンタクトセンターを連携させることで、シナジー発生させやすいからです。
さらに、これらをクラウドサービスとして提供するベンダーが増えています。オンプレミス型よりも小さなコストで目的達成が見込めることから、クラウド化の流れは加速していくと考えられます。加えて、オムニチャネル対応も引き続き重視されていくことでしょう。
CRMとコンタクトセンターのテクノロジートレンド
では、CRM/コンタクトセンターに使われているテクノロジーを、実際の導入事例と共に紹介します。CRM/コンタクトセンターには、次々に新しいテクノロジーが投入されています。
チャットボット
チャットボットは、テキストベースのリアルタイムコミュニケーションである「チャット」と半自動的に作業を行う「ボット」の特性を合わせ持つ仕組みです。チャットボットは、以下4つの種類が存在すると考えられています。
●Eliza型(人間の入力に対し、相づちや要約を返す)
●選択肢型(プログラムされたシナリオにから最適なものを選択し、会話をする)
●辞書型(あらかじめ登録された単語に沿って応答する)
●ログ型(蓄積された会話ログを利用し、応答する)
このうち、CRM/コンタクトセンターの分野で使われるのは「選択肢型」と「ログ型」がメインです。実際には、選択肢型とログ型の特性を併せ持ち、さらにAIの活用で会話の精度を上げている例が増えています。
例えば、自転車による宅配便「エコ配」のサービス提供会社である株式会社ユーザーローカルでは、自動応答システム「サポートチャットボット」を導入しています。サポートチャットボットには、自然言語処理技術とテキスト解析に特化した独自AIが搭載されており、SNSから取得した60億件超の会話データを分析・処理します。さらに、この結果を用いて顧客との高品質な会話を実現しました。コンタクトセンターにおけるユーザーサポート業務効率化に貢献しているようです。
感情分析
同じくAIを用いた感情分析も、要注目のテクノロジーです。感情認識技術は、「言語解析型」と「音響解析型」とに大別されます。
●言語解析型…顧客が発した言葉をキーワードに感情認識を行う
●音響解析型…声質から感情を判断
現状では言語解析型による感情分析が主流といえるでしょう。しかし、声質をベースに感情分析を行うソリューションも出始めています。
CENTRIC株式会社では、人の声を「言葉(キーワード)」ではなく「音(トーン)」として認識する感情解析エンジンを、コンタクトセンター専用アプリケーションに導入しました。
同アプリケーションでは、約2秒ごとに顧客とオペレーターの声を解析し、時系列に沿って結果を表示します。感情が大きく揺れた部分に注目して優先的にモニタリングできることが特長です。これにより、対応品質や製品・サービスの改善業務を効率化できるとしています。
感情分析は解約防止や顧客満足度の向上によりLTV( Life Time Value=顧客生涯価値)増大に効果があるため、需要増が見込まれるテクノロジーのひとつといえるでしょう。
WebRTC
WebRTCはWebブラウザを介し、ユーザー同士が直接・リアルタイムに情報・データをやりとりできる技術の総称です。Webブラウザ上でP2P通信が可能なことから、サーバーレスな双方向通信が実現できます。また、通信に使われる端末の種類も問いません。簡単に言うと、「ブラウザを使ってテレビ電話する仕組み」です。コールセンターに居ながら、オペレータの顔を見せた接客が可能となるため、顧客体験の向上につながります。
また、在宅オペレーターでも高品質な対応が可能になり、複数拠点の人材を有効活用できるというメリットもあります。
実際にあるクレジットカード会社では、コンタクトセンターにWebRTCを導入。顧客がWebサイトや専用アプリからコンタクトセンターへ発信すると、プロフィールや利用状況などに応じて適切なオペレーターにつながるような仕組みを整えました。さらに、オペレーターのWeb通話画面には、ポップアップで顧客の情報が表示されます。このような仕組みにより、オペレーターは、顧客情報を見ながらも自分の顔を見せた接客が可能となりました。
また、コンタクトセンターのオペレーターにかかる負荷軽減、業務効率の向上を達成しただけではなく、NPS(ネットプロモータースコア)や新規加入率も向上したとのことです。
まとめ
今回は、コンタクトセンター 構築に役立つテクノロジートレンドを解説しました。従来は電話とコールセンターシステムを中心に構築していましたが、昨今ではチャットボットやAI、WebRTCなどもコンタクトセンターに活用され始めています。これは、インバウンド(受電)のコンタクトセンターだけでなく、アウトバウンド(架電)においても同様です。
これらのテクノロジーは、コールセンターシステムを補完・強化するかたちで導入できる可能性があります。つまり、顧客体験価値やカスタマーサクセスの向上には、最新テクノロジーと連携可能なコールセンターシステムの選定も重要なのです。最新のテクノロジートレンドとともに、どのコールセンターシステムを利用するかについても注目していきたいですね。
*「コンタクトセンター」関連のおすすめ記事
近年注目されている「コンタクトセンター」とは?
「コンタクトセンター」に必要なシステムとは?