コンタクトセンターとは?概要やコールセンターとの違い、期待される役割と効果を解説

近年、製品やサービスそのものの質に加え、購入前〜購入後の丁寧なサポートを重視する消費者が増えています。これはいわば「顧客体験価値」がより重視される時代になったといっても良いでしょう。
このような背景の中、「コンタクトセンター」の構築に着手する企業事例が増えています。
ではコンタクトセンターとはいったいどのような存在で、その構築には何が必要なのでしょうか。
この記事では、コンタクトセンターの基本や、コールセンターおよびカスタマーサポートとの違い、コンタクトセンター運営における課題と解決方法について解説します。
目次
コンタクトセンターの概要と特徴
従来のコールセンターは、主に顧客からの質問やクレームを電話で受ける場として存在していました。しかし、近年では問い合わせ手段は電話だけにとどまらず、メールやチャットなど多岐にわたります。
コンタクトセンターとは、このような様々なチャネルを通して送られてくる顧客からの問い合わせを、一括でサポートする仕組みのことを指します。対応方法が複数あること(マルチチャネル)や、良好な顧客体験価値を生み出す場であることが大きな特徴です。
もちろん、従来のコールセンターでも、顧客とのコミュニケーションを担っていました。
しかし今後は、様々なチャネルを通してコミュニケーションをとる必要があるため、コールセンターを補強しながら、コンタクトセンターの構築を目指す例が増えていくでしょう。
コンタクトセンターとコールセンターの違いとは
では、コンタクトセンターとコールセンターにはどのような違いがあるのでしょうか。以下で詳しく解説します。
コールセンターの定義
日本コールセンター協会※によると、コールセンターとは「顧客や消費者のインバウンドやアウトバウンドの電話応対を行う拠点・窓口のこと」と定義されています。
アウトバウンドの担当者は(テレフォン)アポインターとも呼ばれ、主にコールセンター側から顧客へ新商品・サービスの紹介などを行います。また、インバウンドを行う担当者は(テレフォン)オペレーターと呼ばれ、商品の受注や問い合わせ・クレーム対応などを行うことが多いです。
※日本コールセンター協会
https://ccaj.or.jp/glossary.html
「対応するコミュニケーションチャネル」が異なる
コールセンターはその定義の通り、主に電話対応をメインとした組織として設置されるのが一般的です。
一方で、コンタクトセンターは上述の通り電話だけでなく、SNSやチャットなどの幅広いコミュニケーションチャネルを利用するため、多様なチャネルを統合し、一貫した顧客対応を実現できる仕組みを設ける必要があります。
「コストセンター」から「プロフィットセンター」への変化
従来、特にインバウンド型コールセンターは、利益の創出には結びつかない活動がメインであったため、コストセンター(支出が多く計上される部署)として見られやすい傾向にありました。
対して、様々なチャネルを通して良好な顧客体験価値を提供するコンタクトセンターは、結果として営業活動にも影響するため、戦略次第でプロフィットセンター(利益を生み出す組織)になる場合もあります。
複数チャネルにおける顧客情報の蓄積・収集や、見込み顧客への購買促進の実施によって満足度アップや新たな付加価値を生み出すことができるという点でコールセンターとは異なるといえるでしょう。
コンタクトセンターとカスタマーサポートの違いとは
コンタクトセンターやコールセンターに類似するもう一つの概念として、カスタマーサポートが挙げられます。これらは混同されやすいものですが、以下のような違いがあります。
カスタマーサポートの定義
カスタマーサポートの目的は、電話や対面などのチャネルの種類を問わず、顧客をサポートすることです。
電話以外のチャネルにも対応しているケースが多く、その点ではコンタクトセンターとも共通しますが、特にアフターフォローなど「購入後における顧客の課題を解決する」役割を強く持つのがカスタマーサポートの特徴です。
カスタマーサポートの業務内容
カスタマーサポートの主な業務としては、商品・サービスの設定作業の支援や導入に関する教育・研修、トラブルシューティングやアフターメンテナンス、不良品・トラブルへの対応、そのほか問い合わせの受け付けなどが挙げられます。
顧客からの問い合わせは貴重な接点です。製品に対して抱いている想いや不満点などを吸い上げてスマートに解決し、満足度の向上を目指すことが求められます。
カスタマーサポートとは顧客接点や支援の姿勢が異なる
コンタクトセンターは、複数のチャネルを通して、企業側からも顧客とのコミュニケーションが活性化するように働きかけ、課題解決だけでなく、価値ある体験の創出を図っていく役割を担います。
契約前〜成約〜契約後まで幅広い接点を持ち、購入や継続利用といった利益を生む顧客行動に結びつくことが多いです。
一方でカスタマーサポートは、主に製品やサービスの購入・契約をした後の支援を行います。
顧客からの問い合わせに対応し、課題を解決するのが主な役割です。そのため購入・契約前にコミュニケーションをとる機会が少なく、利益を生む活動と結びつくことも少ないでしょう。
以上の通り、コンタクトセンターはより能動的かつ企業発信型の側面を持つのに対し、カスタマーサポートは受動的で顧客発信型であるといえます。
なぜ今コンタクトセンターが重視されているのか?
コンタクトセンターが重視されるようになった背景には、ふたつの理由があります。
ひとつ目は、「消費者の価値観の変化」です。これまで、さまざまな製品・サービスを購入していた消費者は、サービスや製品自体に価値を見出していると考えられていました。
しかし、最近ではサービスや製品そのものに加えて「購入したという体験」や「企業とのコミュニケーション」にも価値を見出す傾向が強いと考えられています。
つまり「顧客体験価値=カスタマーエクスペリエンス(CX)」が重要性を増しているのです。この顧客体験価値を担う場がコンタクトセンターです。
二つ目は、顧客とのコミュニケーション手段が多様化していることです。スマートフォンやタブレットの普及で電話以外の通信手段が発達した今、顧客とのコミュニケーション手段は電話・Eメール・FAX・チャットなど多岐にわたります。これは「オムニチャネル化」と呼ばれています。
どのチャネルでも一定のサービスレベルの窓口を提供することで、顧客に安心や信頼を感じてもらいやすくなると言われています。そのため、さまざまな対応手段を用いて良質なサービスを提供するコンタクトセンターの構築が求められているのです。
コンタクトセンターに期待される役割と導入効果
このように重要さを増すコンタクトセンターは、「顧客との良好な関係を構築する」という役割を負っています。クレームや質問に対応するだけではなく、顧客体験価値を高め、エンゲージ(愛着)を抱いてもらえれば「ファン」を獲得できる可能性があります。ファン層の形成は、売り上げの安定化だけではなく、より良いサービス・製品の開発にも貢献するでしょう。
さらに、「サービスレベルの均一化された応対」という役割も期待されています。応対品質は、オペレーターのスキルや経験に依存しがちです。しかし、属人的なスキルや経験によって応対品質が上下する仕組みでは、オムニチャネル化への対応として不十分だといえます。
さまざまなITシステムを活用してコンタクトセンターを構築することにより、誰が、いつ、どういった手段で接触しても、同じようなサービスを受けられる、といった効果が期待できるでしょう。
加えて、「他部門との連携」もコンタクトセンターに課せられる業務内容のひとつと言えます。顧客から吸い上げた情報を開発部門やマーケティング部門へ展開できれば、サービスの企画や製品開発に役立つほか、マーケティングの効果を高めることができるでしょう。
このようにコンタクトセンターは、企業の持続的な成長に寄与する存在として期待されているのです。
コンタクトセンターにおける課題とその解決方法
一方で、コンタクトセンターの運営においては様々な課題が発生します。以下では、コンタクトセンターで発生しがちな課題やその解決方法について解説します。
応対品質の向上
チャネルを問わず、良好な顧客体験を提供することを目的とするコンタクトセンターにおいて、応対品質の向上は最も重要といえるでしょう。オペレーターの対応がスムーズであるほど、顧客へ与える印象も良くなります。
応対品質の向上策としては、過去の問い合わせ内容や顧客情報をCRMに登録することで切れ目のない対応を実現したり、属人化しがちな知識やノウハウを共有し、標準化を図ったりする取り組みなどがあげられます。
また、電話やチャット・SNSといった複数接点の情報を統合するオムニチャネル化も応対品質の向上に繋がるでしょう。
対応時間の短縮化・業務の効率化
コンタクトセンターの生産性を向上させるためには、対応時間の短縮化、業務の効率化が必要です。たとえば、問い合わせの多い内容を整理した上で、チャットボットなどを導入してFAQの参照を促す導線を作り、一次問い合わせの切り分けを実施することなどが考えられるでしょう。
顧客の自己解決を促すことで、入電数を減らすことにつながります。また、CTIなどが提供している入電を分配する機能を用いて、オペレーターの処理能力に応じて適切に振り分けるといった対策も効果的です。
売上向上への貢献
重要な顧客接点であるコンタクトセンターには、売上向上への貢献が求められます。音声認識AIを活用した通話内容のリアルタイム解析によってオペレーターを支援したり、商品・サービスの提案力向上を図ったりする取り組みが有効です。
また、コンタクトセンターにて適切な顧客対応を続けていくことにより、顧客のロイヤルティ向上やファンの獲得などを目指していくといった、長期的な視点での活動も重要です。
離職率の高さ
コールセンターやコンタクトセンターなど、顧客の窓口対応を行うオペレーターについては、業界全体として離職率の高さが課題となっています。オペレーターの新規採用に苦慮している企業は多く、仮に採用できたとしても改めて教育を行う必要があるため、コストも時間もかかってしまいます。
オペレーターの離職率を下げるためには、業務負荷を軽減するなどして働きやすい環境を整えることが重要です。
たとえば通話内容の要約システムを利用し、応対履歴の登録を自動で行ったり、AIによる感情分析を用いてオペレーターのストレスケアやモチベーション維持を実施したりするといった対策が考えられます。
オペレーターの教育
コンタクトセンターで対応を受ける顧客の満足度は、担当したオペレーターの力量に大きく左右されます。よって、オペレーターの教育はコンタクトセンターの品質向上やクレーム防止の観点からも重要です。近年ではコロナ禍の影響で集合研修が難しい状況であるため、オンライン教育システムの活用も検討するとよいでしょう。
また、実務を通してオペレーターの対応力を向上していくことも大切です。コールセンターシステムによっては、SVからオペレーターに指示を出せるモニタリング・ささやき機能が備わっているものもあり、オペレーターの教育・指導に活用できます。
コンタクトセンター構築に必要なものは?
では、コンタクトセンターを構築するためには何が必要なのでしょうか。コンタクトセンターでは、PBX・電話機・座席・オペレーターのほかにも、いくつかの仕組みが必要です。特に重要なのがさまざまなシステムと連携できるコールセンターシステムです。
まず連携させるべきシステムはCTIです。
CTIとは電話とコンピュータを統合したシステムで、従来のコールセンターの機能を拡張・強化することが可能です。
例えば、電話番号とCRMに記録された顧客情報を紐づけ、通話中、オペレーターの見ているモニターにデータを表示し、顧客の詳細な属性やステージ(潜在顧客、見込み客など)を把握しながら対応することができます。
こういった機能は、インバウンド、アウトバンド双方でスムーズなコミュニケーションをするのに役立ち、顧客満足の向上と業務効率化をもたらすでしょう。
また、コールセンターシステムとカスタマーサポートプラットフォームを連携させることも忘れてはいけません。カスタマーサポートプラットフォームとは、顧客管理機能やチャット、LINE連携などのオムニチャネル機能、お客さまの問い合わせを管理するインシデント機能などを提供するサービスであり、コンタクトセンター化を目指すにあたり効果的な仕組みです。
近年では、コールセンターシステムやCTI、カスタマーサポートプラットフォームはクラウドサービスが主流となっています。クラウドサービスを活用することで、導入コストやリードタイムを圧縮しながらコンタクトセンター化を目指すことができます。
まとめ
このようにコンタクトセンターは、顧客体験価値を高める場として期待されています。コンタクトセンターの構築で、ファン層の形成、サービスレベルの均一化、他部門との連携を強化できれば、企業の持続的な成長が実現しやすくなります。日本国内ではまだ浸透しきっていないコンタクトセンターだからこそ、他社に先んじて導入できれば、その効果を実感しやすいのではないでしょうか。
また、コンタクトセンターへの構築には、コールセンターシステムをはじめとしたITシステムの活用が重要です。コンタクトセンターを構築するシステムについて不明点があれば、サービス提供会社に問い合わせてみましょう。
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