2019.03.24
2022.02.18

コンタクトセンター運営を効率化させるAI

顧客体験価値創造の場としてコンタクトセンターが注目されています。

その背後にはAIの進歩があることをご存じでしょうか。コンタクトセンターの質を高めるためのヒントが、AIの活用に隠されているのです。

そこで今回は、AIの定義をおさらいしながら、コンタクトセンターにおけるAIの活用事例をご紹介します。AIが具体的にどのような役割を果たすのか。コンタクトセンター構築の一助になれば幸いです。

そもそもAIとは何か?

まず、AIの定義からおさらいしていきましょう。

AIは、「Artificial Intelligence」の略称です。日本語では「人工知能」と翻訳されています。

実は、AIには明確な定義が存在していません。

しかし、一般社団法人人工知能学会が公表している「AIの定義と開発経緯」によれば、AIとは「大量の知識データに対して、高度な推論を的確に行うことを目指したもの」と紹介されています。膨大なデータを用いて、法則・ルール・着目点などを学習していく仕組み、と理解できそうですね。

また、AIの起源は意外と古く、1950年代まで遡ります。1950年代から60年代にかけての第一次AIブーム(推論・探索)、1980年代の第二次AIブーム(知識表現)を経て、2000年代には第三次AIブームが巻き起こりました。この第三次AIブームのきっかけとなったのは、「機械学習」と「ディープラーニング(深層学習)」という2つの技術です。

ちなみに、2つの技術を簡単に解説すると、以下のようになります。

● 機械学習…学習を重ねることで法則やルールを見つけ出す技術。

● ディープラーニング(深層学習)…機械学習の一種で進化版。人間の神経組織を真似た「ニューラルネットワーク」との組み合わせで学習を強化し、「着目点」や「重視すべき点」を見つけ出していく技術。

ディープラーニングは「概念」を学習し、自ら判定する技術と紹介されることもあります。

例えば、あらかじめいくつか画像を用いて「動物」を学習したAIに対し、ある動物の画像を投入したとき、「画像の動物が猫である確率は30%、犬である確率は60%、牛である確率は10%」といった判定を行います。

このようにディープラーニングを用いたAIでは、従来は人間が行っていた「特徴」「概念」の判定を機械が行うようになっているのです。

コンタクトセンターの課題を解決するAI

では、進化したAIが具体的にどう役立つのかを、コンタクトセンターの業務課題に照らし合わせながら整理してみます。

経験=対応品質からの脱却

コンタクトセンターでの顧客対応品質は、オペレーターの知識や経験に依存してしまうことがあります。

コンタクトセンターには、オムニチャネル化(複数の顧客接点を持ち、どの接点でも均一化された顧客対応を行えること)が求められます。AIが過去の対応履歴から最適な回答を導き出せれば、オペレーターの知識や経験に依存しない対応が可能になるでしょう。

顧客感情に即した対応

AIが顧客の「声」から感情を推察し、満足度を数値化します。声の高さ、大きさ、抑揚から顧客の「不満」を洗い出し、改善ポイントとして整理するのです。これによりサービス品質の向上が効率よく行えるというメリットがあります。

人手不足対策

軽微な対応はAIチャットボットで自動化できれば、その分だけ業務負荷が減り、人手不足対策になります。また、24時間対応が可能になり、サービス品質の向上にも役立つでしょう。

ちなみに、AIは問い合わせの履歴を用いて学習するため、使うほどに回答の精度向上が期待できます。

さらに、自動音声ガイダンスを低コストで作成できることも見逃せません。原稿データを入力するだけで音声(性別による声の違い)や、会話速度、声のトーンなどを指定でき、自然でクリアな応答を実現できます。従来は音声ガイダンス作成にも相応のコストがかかっていましたが、AIの活用でコスト削減が見込めるでしょう。加えて、文章の変更にも柔軟に対応できるというメリットがあります。

教育、情報共有の効率化

AIが問い合わせデータを整理・分析し、学習や情報共有に役立つ「ナレッジ」に昇華します。

新人が短期間で業務をマスターする仕組みを作るうえで役立ちます。

また、コンタクトセンターに寄せられるVOC(顧客の声)には、製品やサービスの開発に有用な情報が隠されています。AIが分析したデータをリアルタイムに他部門へ展開できれば、他社に先んじた製品・サービスの開発に役立つでしょう。AIは、これらVOC活動(顧客の声をベースにした業務改善活動)の一翼を担う存在かもしれません。

コンタクトセンター×AIの活用事例

AIを導入しているコンタクトセンターは年々増加傾向にあり、業界を問わず導入されています。ここではその一例を見ていきましょう。

電話対応そのものをAIで自動化した事例

福岡県に拠点を持つLPガス供給会社では、電話対応そのものを「AIコンシュルジュ」によって自動化しています。具体的には、ガス利用の申し込みや開栓の立会い予約などをAIコンシュルジュが「音声通話」で受け、対応しているようです。

AIチャットボットによるテキストベースの自動応答は増えているものの、音声による応答を自動化している稀有な例ではないでしょうか。問い合わせ窓口の混雑解消や人手不足対策として有効でしょう。

また、人間のオペレーターは、より顧客に寄り添った対応に比重を傾けられるため、サービス品質や顧客満足度の向上も期待できます。

コンタクトセンターにおける社内情報共有を改善・効率化した事例

あるクラウドサービスベンダーでは、顧客からの問い合わせや社内手続きに関する質問などを集約したデータベースを構築しました。

さらに、データベースを利用したFAQにおいて、AIチャットボットを導入。必要な情報をスムーズに検索できるようになり、インサイドセールス業務の改善・効率化や、顧客対応力が強化されたとのことです。

AIチャットボットの導入により、データベースから自然文(話し言葉ベースの文章)で検索、表示できるようになったことがポイントといえるでしょう。

ディープラーニングを用いたAIは、自然言語処理が可能なことも強みのひとつです。

まとめ

このようにコンタクトセンターとAIは親和性が高く、さまざまな業務課題を解決できる可能性を秘めています。今後は土台となるハードウェアの進歩によって、AIの性能は益々伸びていくことでしょう。

AIの導入でコンタクトセンター運営の成否が決まるわけではないものの、業務効率化において重要なツールであることは間違いなさそうです。コンタクトセンターの構築・運営でお悩みなら、AI導入実績のあるベンダーに問い合わせてみてはいかがでしょうか。

 

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