Googleに学ぶ、「効果的なチームとは」

前回に続いて、Googleの研究発表資料を見ていきましょう。

Googleは「『働く』をもっと良いものに」をテーマに、「Google re:Work」という研究をしています。
※Google re:Work公式

前回はチームのパフォーマンスを最大化するにはマネージャーの力が不可欠であり、その優秀なマネージャーとは何かという話をしました(前回のブログ参照)

今度は、「効果的なチームとは何か」についての研究を見てみましょう。

「チーム」の定義づけ

調査にあたり、まず「チームとは何か」を定義することから始めました。

「チーム」という言葉は曖昧で、組織や仕事の内容で様々に定義されるものの、Googleは最も根本的なレベルとして、「ワークグループ」と「チーム」に区別して進めることにしました。

ワークグループ

相互依存性が最小限という特徴があり、組織または管理上の階層関係に基づく。ワークグループのメンバーは、情報交換のために定期的に集まる場合がある。

チーム

メンバーは相互に強く依存しながら、特定のプロジェクトを遂行するために、作業内容を計画し、問題を解決し、意思決定を下し、進捗状況を確認する。チームのメンバーは、作業を行うために互いを必要とする。

 

次にチームの効果を測定する方法として、定量的手法と定性的手法で調査しました。

定量的手法

書いたコードの行数、修正したバグの数、顧客満足度など。

定性的手法

マネージャー、チームリーダー、チームメンバーという 3 つの立場からの意見を収集する。

 

ところが、定性的手法については立場によって重要視する観点が異なることから、最終的に以下の4点の観点でチームの効果性を測ることにしました。

1.マネージャーによるチームの評価
2.チームリーダーによるチームの評価
3.チームメンバーによるチームの評価
4.四半期ごとの売上ノルマに対する成績

「誰がチームメンバーであるか」<「チームがどのように協力しているか」

様々に調査した結果、真に重要なのは、「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることをGoogleのリサーチチームは突き止めました。チームの効果性に影響する因子を重要な順に示すと次のようになります。

一方で、チームの効果性に影響していないものは以下のとおりとなりました。

● チームメンバーの働き場所(同じオフィスで近くに座り働くこと)
● 合意に基づく意思決定。
● チームメンバーが外交的であること。
● チームメンバー個人のパフォーマンス。
● 仕事量。
● 先任順位。
● チームの規模。
● 在職期間。

※ただし、どの組織でも同じとは限らない。

この結果にもとづいて、人事管理担当者が進行役として、チームリーダーとチームメンバーとのディスカッションの材料に使うよう促しました。

※サンプル「チームの効果性に関するディスカッション ガイド」

チームの効果性に最も重要な「心理的安全性」

Google のリサーチチームが発見した、チームの効果性が高いチームに固有の 5 つの力学のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性です。

「チームの心理的安全性」とは

提唱者:エイミー エドモンソン氏(ハーバード大学で組織行動学を研究)
定義:対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え

● チームの中でミスをしても非難されない。
● チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える。
● チームのメンバーは、自分と異なるということを理由に他者を拒絶することがない。
● チームに対してリスクのある行動をしても安全である。
● チームの他のメンバーに助けを求めることは難しくない。
● チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない。
● チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる。

チームの心理的安全性を高めるために、個人ができる簡単な取り組み

● 仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える。
● 自分が間違うということを認める。
● 好奇心を形にし、積極的に質問する。

心理的安全性の高いチームの特徴

離職率が低い。
他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができる。
収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が 2 倍多い。

 

Googleは心理的安全性について、チームリーダーとチームメンバーが話し合うことを求めました。

※サンプル「心理的安全性を高めるためにマネージャーにできること」

効果的なチームのためにマネージャーができること

Google のリサーチチームが発見した効果的なチームに必要な振る舞いを促すために、マネージャーやリーダーができることへのヒントは以下のとおりです。

心理的安全性

チームからの意見やアイデアを求める。
個人的な仕事の進め方の好みをチームメンバーに伝え、チームメンバーにも自分自身の好みをチーム内に共有するよう促す。

相互信頼

各チームメンバーの役割と責任を明確にする。
各メンバーの仕事に透明性をもたらす具体的なプロジェクト計画を策定する。

構造と明確さ

チームの目標を定期的に周知し、目標達成のための計画をメンバーに理解させる。
チームでミーティングを開く際には、明確な議題を設定し、リーダーを指名する。

仕事の意味

チームメンバーが効果的に行なっている取り組みに対して好意的なフィードバックを提供し、メンバーが課題に直面している場合には手を差し伸べる。
誰かが自分を助けてくれた場合は、メンバーの前で感謝の気持ちを伝える。

インパクト

各チームメンバーの仕事が、チームや組織の目標達成に貢献するような明確なビジョンを共同で策定する。
自分またはチームの仕事がユーザーや顧客、組織に与える影響をよく考える。
ユーザーの目線で物事を評価する仕組みを導入し、ユーザーに焦点を当てる。

Googleの調査から見えてくること

「優れたマネージャー」と「効果的なチーム」の二つから見えてくることがありますが、お気づきになりましたか。

①頻繁に出てくる言葉は、「上司と部下が話し合うこと」
 しかも”腹を割って”話し合うこと。

②上司は部下と共に考え、部下の意見を求め、部下と共に行動すること。

皆さんの職場はまだ“上意下達”の組織になっていませんか。
マネージャーであるあなたは、”神輿の上”で踊っているだけではありませんか。

さらに懸念されるのが、昨今推進されている『働き方改革』です。
従業員の勤務時間の削減に皆さん苦慮されているかと思いますが、上司と部下のコミュニケーションが犠牲にされていませんか。

最も先進的で洗練された組織がGoogleと言われていますが、そのGoogleがこう言っているのです。一考の余地があると思いますが、いかがでしょうか。

おまけ