【ロジハラ問題について考える】「共感」足りていますか?

昨年から、”新種”のハラスメントとしてネットやメディアで取り上げられているものがあります。

 

「ロジハラ」ってご存知ですか。
ロジカル・ハラスメントのことで、正論を振りかざし、論理的(ロジカル)に相手を追い詰めるハラスメントだそうです。

 

なんとも世知辛い世の中になってきました。
これも、コロナ禍による先の見えない世の中に対する不安やストレスが影響しているかもしれません。

 

とはいえ、「ロジハラ」については現在でも賛否両論があり、ハラスメントにあたるのかどうかは判然としません。

かたや

「正しいことを言って何が悪い。」

「ミスや間違いはロジカルに考えないと解決しないのでは。」

 

一方では

「正論さえ言えば相手の感情なんか無視してもいい、という考えがそもそも間違っている。」

「他者の気持ちを配慮せずに正論を押し付けて、相手に必要以上のストレスを与えるのがよくない。」

 

さて、皆さんの感覚では「ロジハラ」はハラスメントにあたりますか?それとも、また別の意見でしょうか。

 

ひとつはっきりしていることがあります。

それは、「絶対に正しいコミュニケーション」は存在しないということ。

 

例えばコールセンター業務において、お客さまとのやりとりに「ロジハラ」と思われるコミュニケーションをしてしまうと、かなりの確率でクレームになりそうですね。

 

またコールセンターの管理者が「ロジハラ」を振りかざしてしまうと、そのセンターは離職率が高くなりそうな予感がします。

 

一方で、今のビジネス界は「ロジカル・シンキング」が花盛りです。

ビジネスにおいて、論理性のない提案で周囲を納得させることは難しいでしょう。

 

「ロジカル・シンキング」と「ロジハラ」、

この一見して矛盾する問題。

何が問題で、私たちはどう向き合えばよいのか考えてみましょう。

 

皆が心の「いいね!」を求めている

コロナ感染の恐怖。
テレワークによる孤独感。
コロナ禍による倒産や閉店など、未来に対する不安。

 

今、人々は得も言われぬ不安に駆られています。

お互いが心のよりどころや安心感を求めています。

こうした状況で相手の気持ちを顧みずに「論理的に正しいから」と話を進めてしまうと、場合によっては、正論を振りかざして相手を追い詰めてしまった、ということにもなりかねません。

 

論理的に正しいことが、絶対に正しいとは限りません。

とくに、「話の内容についての論理性」と、「コミュニケーション自体の方法論」は別々の事柄だということに気をつける必要があります。

 

そんなことは皆分かっている。

分かっているけど…という気持ちが問題になっているのではないでしょうか。

 

「気持ちを受け止めてほしい。」

 

これを今、人々が望む気持ちが強まっていて、それに反する行為が「ロジハラ」という形で顕在化しているのかもしれません。

 

「気持ちを受け止める」それはまさに、共感です。

 

「共感」とは

前節でも触れましたが、あくまでコミュニケーションに「絶対に正しいこと」は存在しません。

ここではとりわけ、コミュニケーションの方法論のひとつとしての共感についてご紹介します。

 

「自分の感情に同意してほしい」「自分の考えを肯定してほしい」というのは、多くの人が持つごく普通の欲求です。

ここでいう共感とは、自分の気持ちや正論はとりあえず置いておき、まず相手の気持ちを受け止めるということです。

 

内心は同意できなくても良いのです。ここが大事です。

しかし、この点を受け入れられない方が結構いらっしゃいます。

「言動一致」、「有言実行」という美名に縛られているのでしょうか。

それとも「本心とは違うことをいう = 嘘をつく」と思っているのかもしれません。

 

大事なことは「相手の気持ちを受け止めること」であって、受け止めることは同意とは異なります。

 

例えばこうです。

Aさん「私、最近太ってない?」

Bさん「えー、全然そんなことないよ。」

 

上のBさんの対応は、ひとつの正解です。

ここで、

「確かに、すこしふっくらしてきたよね」

と言ってはいけません。友情が壊れます。

 

なぜか?

 

Aさんは、自分が太ったことにうすうす気づいています。

でも気持ちとしては、「そうであってほしくない」と思っていて、誰かに否定して欲しいと望んでいます。

これがAさんの気持ちであり、Bさんはその気持ちを受け止めて、その期待する言葉を返してあげればよいのです。

 

これが共感です。

 

そしてこの共感をベースにした「共感コミュニケーション」は、お客さまや同僚、部下との人間関係を良好に保つためのひとつの方法となります。

 

「共感」は身に着けられるスキル

さて、自分の共感性をひとつテストしてみましょう。

次の質問に対し、あなたはどのように答えますか。

 

晴子:「いまの仕事が辛くて辛くて気が滅入るのよ。」

 

あなた:「                   」

 

 

さて、あなたはどのように回答しますか。

ポイントは晴子さんの気持ちはどういう状態なのかで、どういう回答を期待しているかです。

 

「じゃあ、転職すればいいじゃない。」

「仕事なのだからしょうがないじゃない。」

と回答した人はアウトです。

晴子さんは別に助言が欲しいわけではありません。

またあなたが激励のつもりで言ったとしても、激励も欲しいわけではありません。

 

ただ、気持ちを受け止めて欲しいのです。

 

「大変そうだね。でもよく頑張っているよね。」

こういう共感が欲しいのです。

 

確かに「転職すれば」も「仕事なのだから」も正論です。

最初に述べたように

「論理的に正しいことが、絶対に正しいとは限らない。」

これにつきます。

 

相手を思いやるコミュニケーションを心がけよう

このように相手の気持ちを受け入れて肯定するコミュニケーションをすることで、時に物事を円滑に進めることができます。

 

とはいえ、コミュニケーションはあくまでバランスが重要。

もしもアドバイスを求められたら、説明に論理性が必要になることもあるでしょう。

その時は、相手が理解できるよう丁寧に「なぜ」を分解していくと、印象を和らげられるかもしれません。

 

まだまだ精神的にきつい時期が続きそうです。

そういう時こそ、相手を思いやる気持ちを忘れず、時には「共感コミュニケーション」で乗り切りましょう。