PHSとは?サービス終了の背景や携帯電話との違い、主な用途を紹介
過去、その利便性の高さや費用の安さからさまざまな場面で利用されてきたPHSですが、2021年1月をもってほぼすべてのサービス提供が終了しました。今でこそ携帯電話やスマホが主流となっているものの、PHSが移動体通信の普及に果たした社会的役割は大きいといえます。
この記事では、PHSの概要に加え、その仕組みや利用方法、携帯電話との違いなどについて解説します。
目次
PHSの概要と仕組み
まず、PHSの概要とその仕組みについて解説します。
PHSとは
PHSは「Personal Handy-phone System」の略称であり、1995年に移動体通信サービスの一つとして登場しました。パーソナルハンディフォンシステム = 個人の手軽な電話という意味合いのとおり、PHSは個人が簡単に利用できる有用な通話手段としてヒット商品となります。
サービス開始当時、携帯電話と比較して通話品質に優れていたPHSはそのコストの安さも相まって普及し、最盛期には700万件の契約を獲得するまでに至りました。一つの時代を築き上げたサービスといってもいいでしょう。
PHSの仕組み
PHSは既存の固定電話を延長する形で通信を行っていました。具体的には、半径500m程度の短距離をカバーするアンテナを設置して有線の電話回線に接続し、PHS本体からアンテナまでは無線で、それ以降は有線で通信を行うことで、通話を実現していました。
一つ一つのアンテナのカバー範囲が狭く、エリア内に多数設置する必要がありましたが、短距離用の小規模なものでよいため、設備コストを安く済ませることができました。
サービス終了の背景とは
一時期は主要な移動体通信の手段として用いられていたPHSですが、一部の法人向けのものを除いて2021年1月にサービスが終了しました。現在、移動体通信は携帯電話やスマホがメインとなっています。これは、PHSが携帯電話やスマホの高品質化・高機能化によって競争力を失ったことに加え、通話エリアが少ないために消費者離れを招いたことによります。
PHSの主要な事業者のうち、黎明期から提供してきたアステルが2006年に、NTTドコモが2008年にそれぞれサービスを終了しました。最後の1社となったY!mobileも2021年1月にサービスを停止しています。
PHSと携帯電話の違い
PHSと携帯電話にはどのような違いがあるのでしょうか。以下では、両者の比較からそれぞれの特徴を紹介します。
通信方式の違い
携帯電話は大型の基地局を介して高出力の電波を送受信することで、広域で無線通信を行うことができます。大規模なものであれば一つの基地局で数十km程度の広さをカバーすることが可能です。一方で、PHSは上述のとおり、有線回線と半径500m程度をカバーする低出力の短距離無線電波を組み合わせて通信を実現していました。
仕組みが異なることから、事業者が必要とする免許も変わってきます。携帯電話サービスを提供するためには電波法に基づく無線局免許が必要ですが、微弱な電波を利用するPHSサービスにおいては不要でした。
こういった両者の通信方式の違いから、以下で紹介するようなコストや利用エリアの違いが生まれました。
コストの違い
PHSは微弱な電波を利用することから、基地局を小さいサイズで設置することができました。よって設備にかかる費用が低く、利用料も携帯電話と比較して割安でした。
しかし、携帯電話も技術の発達によって提供コストが徐々に下がっていったことに加え、シェアを増やすPHSに対抗するための戦略として値下げが行われたことにより、両者の利用料は近づいていきました。
利用エリアの違い
上述のとおり、PHSは短距離の無線通信を行うものであり、広域の通信に向かないことから、主に都市圏で利用されました。基地局が小型であったことから、携帯電話が不得意だった地下鉄や地下街にも設置することができ、都市部においては広い範囲で通信できるという特長がありました。
一方で、PHSは地方や山間部など基地局が設置しにくいエリアでは利用できず、携帯電話にシェアを奪われる原因にもなりました。
PHSの用途と契約数の移り変わり
PHSは、その時代に応じてさまざまな用途で使われてきました。以下では、年代ごとにPHSがどのように利用されてきたのか、契約数の変化とともに解説します。
発売開始から最盛期(1995年~1999年)
PHSの発売当初は携帯電話が高額だったこともあり、低コストの移動体通信サービスとして注目されました。とくに若者の間では当時流行していたポケベルに代わる連絡手段として支持され、爆発的に普及しました。PHSの略称である「ピッチ」という言葉も生まれるなど、新しい文化として定着していきました。
また、当時は携帯電話の通話品質が低かったこともあり、エリア内であればクリアに通話ができるPHSはビジネス用途でも広がりをみせました。広域用に携帯電話、都市部用に通話料が安いPHSといったように、2台を併用するケースもありました。
携帯電話とのシェア争い(2000年~2007年)
3Gの登場や提供企業の合併などにより、携帯電話サービスが技術・営業の両面で力をつける中、通信エリアが限られるという根本的な欠点があったPHSは、徐々にそのシェアを失っていきます。最盛期は約700万件あった契約数も、2007年には約500万件まで減少しました。
一方で、電波が微弱であるというPHSの特徴がメリットとして活かされる病院や介護施設などでは、主要な通信手段として活用され続けました。
PHSサービスの終焉(2008年~)
その後も契約数は衰退し、2006年に電力会社系のPHS事業者であるアステルが、2008年にはNTTドコモがサービスを終了しました。
DDIポケットから社名を変更し、PHS事業を継続していたウィルコムは、通話エリアが限られるものの低コストで利用できるというメリットを打ち出し、携帯電話に続く2台目の通信手段としてPHSを普及させる戦略をとりました。しかしながら、経営状況は芳しくなく、2010年にはソフトバンクの傘下となります。同社はソフトバンクの支援を受けて一時期はシェアを伸ばしたものの、スマートフォンや4Gの登場などにより消費者のPHS離れは再び進んでいきました。
そして、2020年12月にはPHSの契約数は109万件まで落ち込み、最後のサービスとなったY!mobileにおいても2021年1月に提供を終了するに至りました。
まとめ
一時代を作ったPHSは、携帯電話との競争の中で移動体通信の普及に一役買ったといえるでしょう。PHSの終了に伴い代替手段が必要となりますが、とくにビジネスの用途ではFMCサービスが有効な解決策となります。
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