【顧客対応力アップ】その1(後編) 苦情を3つに分類して対策する

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1.苦情にもタイプによって対応の仕方を変える必要がある

ネットに溢れる苦情対応に関する情報は、押しなべて真摯に向き合い誠実に対応することを求めています。苦情研修やセミナーでも同じような話を聞きます。果たして苦情すべてに全力で向き合う必要があるのでしょうか。

そんなことをしていては顧客応対の最前線にいるスタッフが壊れてしまいます。

数年前、衣料量販店でお客さまが従業員に土下座させ、SNSに画像をアップした事件がありました。あの土下座させられた二人の従業員はどう思ったでしょうか。そしてあの写真をご覧になった皆さんはどうお感じになりましたか。苦情に対してどう向き合うべきなのか、いま一度考え直してみませんか。その第一歩として、まず苦情の視点で分類し考えてみましょう。

苦情は要因別に3つに分類できます。

1. 企業に起因する苦情。
2. 企業と顧客の認識ギャップに起因する苦情。
3. 顧客に起因する苦情。

この中でも企業が全力で向き合うべき苦情は「1.企業に起因する苦情」で、次に「2.企業と顧客の認識ギャップに起因する苦情」です。「3.顧客に起因する苦情」については、社内でルールを決めて顧客対応の最前線に負担がかかりすぎないよう、”割り切り”が必要です。

しかし、「お客様は皆、神様です」という発想をもつ経営層は多く、しかもその解決を顧客最前線に押し付ける(解決に必要な権限もない)ケースも多いことから、コールセンターでは「2.企業と顧客の認識ギャップに起因する苦情」についてどこまで対応すればよいのか分からず、また現場最前線を知らない経営層と現場のギャップも大きいため混乱し、カオス状態になっているところが少なくありません。

ただし苦しむ現場を理解する経営層もいるものの、予算や他の優先事項のために目をつぶらざるを得ないという事情もあることから、コールセンターがもっぱら “お客さまをなだめる”“お客さまのガス抜き” の場となり、顧客満足度も効率も下がることになります。

“しかもオペレーターたちの精神的負担も増す”

これがコールセンターで働きたいという人を遠ざける要因のひとつにもなっています。

かつて都銀コールセンター部門のある部長が、「銀行といえどもサービス業であることに変わりはない。もう同業内だけで勝った、負けたと言っている時代は終わり、これからは全てのサービス業がライバルだ。」と、10年以上前におっしゃっていました。

どこかが新しい、素晴らしいサービスを提供し、顧客がそれを体験することで満足を得てしまうと、今度はそれが顧客満足の基準になる。それが業種や商品、サービスが異なろうと、お客さまにとっては”知ったことではない”のです。コールセンターのような顧客最前線では、このような顧客基準の最新情報に溢れています。

「2.企業と顧客の認識ギャップに起因する苦情」については、コールセンターと経営層が連携して解決していく苦情であり、それをいち早く克服した企業がこれからは生き残っていくのではないでしょうか。

同じように「3.顧客に起因する苦情」についても、正当かつ常識的な範囲で苦情を申し立てるお客さまへは誠意をもって対応すべきですが、そうでないお客さまの線引きし、その際は誰がどのように対応すべきか、コールセンターと経営層が連携してルールを定める必要があります。それがひいてはコールセンター運営の効率と品質の維持向上につながります。

かつて某外資銀行のコールセンターで実際にあった話です。

とあることから苦情の電話が夜間に入り、その苦情が夜10時過ぎから朝まで延々と続き、これによりSVが一人で掛かり切りになりました。これが連日続いたため、コールセンター運営にも支障が出ました。そのため銀行とコールセンターで協議したうえ、常識の限度を超えたお客さまであると判断し、最終的に口座閉鎖をお客さまへ通告し、強制的に解約手続きを取りました。

2.コールセンターの運営管理者が取り組むべき苦情対策

この記事の上部に掲載した苦情分類の一覧の中で、コールセンターの運営管理者がフォーカスすべきは、「1.企業に起因する苦情」の「1-2商品サービスに問題はないが、まずい対応がある。」のタイプです。

ここの課題は二つあります。

1. 組織の問題

  • 教育の質と量において不足はなかったか。
  • 教育期間中にスキルチェックし、理解不足については必要な是正措置を取ったか。
  • 最終的な知識とスキルのテストを実施し、テストに合格した人物のみをデビューさせたか。
  • 教育担当者の資質とスキルは適切だったか。
  • デビュー後の新人を継続してサポートしたか。
  • デビュー後も教育を継続しているか。
  • 応対を随時モニタリングし、素早くフォローできているか。
  • SVは困ったオペレーターにすぐ対応できる状態を維持しているか。

2.  個人の問題

  • 会社の目的や責任を正しく理解し行動できているか。
  • サービスマインドをもって応対しているか。
  • 知らないことを曖昧なままにしていないか。
  • 話し方や聴き方は適切か。
  • 自分の感情をきちんとコントロールできているか。

この苦情タイプはコールセンターだけで解決できるものが多く、マネジメント指標として1-2の苦情発生の撲滅を掲げることが望まれます。

*  BIZTELではIVRを使ったアンケート機能(オプション)を装備しています。ご興味のある方は、弊社担当営業にご確認ください。

アンケート設定画面

3.苦情対応が苦手な人への教育手法

とある量販店であった、お客さまと応対者の話を紹介します。

そのお客さまはカーテンを購入し、後日配送してもらうことになりました。16:00配達予定でしたが、時間になっても配送業者は現れません。きっと交通事情などで遅れているのかもと、その時は気にしていませんでした。ところが17:00を過ぎても配送業者は一向に来ず、連絡もありません。これは何かあったなと、お客さまが購入した店舗に電話しました。

電話に出た女性には「16:00配達予定のカーテンがまだ届かないのですが。」とだけ伝えたところ、その女性はいったんお詫びしたあと、状況を確認するということで、いったん電話を保留しました。待った時間は1分少々という感じでした。電話から戻ったその女性は、「あと1時間以内に配達されるよう手配したことを伝え、再度お詫びの言葉を述べました。」お客さまは怒ることもなく、「それでは、よろしく。」と言って電話を切り、実際に1時間以内にカーテンは到着しました。

この話のポイントは電話に出た女性が、“お客さまの言葉ではなく、その言葉の裏にあるお客さまの心をキャッチしたこと” に他なりません。

お客さまの心の声は「早く持ってきて。」です。もし、このときに配送状況だけの回答や遅れている理由の説明だけであったり、再配達を後日にしてしまったりすれば、お客さまは怒り出したかもしれません。この担当者はお客さまの心を聞き、短い保留中に配送状況を確認すると同時に、最短で配達する段取りまでしたことで苦情にならずに済んだだけでなく、お客さまから一定の信頼も得ました。

このように苦情応対が得意な人は、顧客の “ 言葉 ” でなく “ 心の声 ” を聞き取ります。

一方で苦情応対が苦手な人は相手の言葉にとらわれ、言い訳に終始した挙句、言葉尻を取られ炎上するか、顧客と押し問答した挙句に、「責任者と代われ!」と言われてしまいます。

“ 顧客の心の声 ” は様々な形で私たちにメッセージを送ります。例えば眉間にしわを寄せた表情をみると、「この人は今、機嫌が悪いな。」とか、「何か疑問や不満を感じているな。」と察することができます。電話応対の中では、「声のトーン」や「話の間」、「使う言葉」、「息継ぎ」など声の表情から、顧客の姿や心の声を察することができます。

苦情応対が苦手な人への教育アプローチは「要は相手が何を望んでいるのか」という結論をイメージさせるトレーニングです。

相手が望むものは

1. 謝罪か
2. 是正か
3.それ以外の見返りか

それは結局のところ、“ 洞察力 ” を鍛えることに他なりません。

この鍛錬に便利なツールとして国語の大学入試問題が使えます。国語の問題のなかに、作者や登場人物の意図を問う読解力を試される問題がありますね。これが意外と使え、オペレーターの洞察力を図る物差しにもなります。理解力に合わせ大学のレベルを上げるなど、継続教育にも向いています。しかも難関大学の問題をクリアできれば、本人たちの達成感にもつながり、ポジティブな意識の植え付けもできます。

もし苦情対応に苦戦しているオペレーターの教育に困っていたら、一度試してみてはいかがでしょうか。

おまけ「管理者として困る人」フィードバック(FB)編
作:ちさ