【コールセンターのデータ分析手法とは】基本編から徹底解説!
BIZTELユーザから、
「どうやってデータ分析すればいいですか。」
とよく相談されます。
確かにデータがたくさんあると、どんな情報が必要で、どのように扱えばいいか悩みますね。
そこでデータ分析について、数回にわたり説明していきます。
今回はまず、データ分析の基本中の基本から押さえてきましょう。
目次
【分析の基本】
- 測定したデータが正しいものであること。
- データは視覚化すると、容易に見えてくる。
- 適切な判断には、一定期間のトレンドが必要。
- 着眼すべきは、最高や最低ではなく、パフォーマンスのばらつき。
- 指標は複合的に見ないと、判断を誤る場合がある。
測定したデータが正しいものであること
①適切さ;測定するKPIの意図に従い測定していますか。
以前所属していた組織で「遅刻率」について定義したところ、こんな意見が現場から上がりました。
「電車遅延による遅刻は本人の不可抗力であり、遅刻とカウントするのは可哀そうではないか。」
確かに可哀そうですね。
皆さんの会社でも”遅延証明書”があれば、遅刻はなかったことになりますね。
しかしこれは、KPI管理と勤怠管理を混同しています。
勤怠管理では遅刻無しと管理しても構いません。
しかしコールセンターのKPI管理の基本は、あくまでお客さま視点です。
電話がつながりにくくなり、「電車遅延でまだ出勤していないオペレーターがいるので。」とお客さまに言い訳して、果たしてお客さまは「それでは、しょうがないね」とおっしゃっていただけるのでしょうか。
本来9:00の業務開始時に10人必要という事で人を配置したのであれば、その計画に対して実際はどうだったのかと管理することが大事です。
また、事務や応対内容入力などの「ミス」について、“件数”で管理するのは意味がありません。業務量が増えれば、当然ミスも増えるからです。件数はあくまで規模感を知るための参考データに過ぎず、ミスを管理するのであれば、”率”で測定しなければなりません。
「未処理」においても、多くの企業では”率”で管理しています。
これはこれで間違いではないものの、これだけでは正しい判断には不十分です。
“率”は企業視点です。顧客視点でこの指標を管理する目的を考えるなら、“いつまでに処理されたのか”が大事であって、“定められた期限を超えて、まだ処理されていないものの平均遅延時間”もあわせて測定し管理する必要があります。
「ミス」も「未処理」も似たような印象があるので分かりづらいのですが、「ミス=結果」、「未処理=プロセス」と考えてみると、何を測定すべきか判断しやすくなります。
②正確さ;数値的に正しく、測定していますか。
正しい測定をすることは当たり前のことですが、悩むのは“全量調査かサンプル調査か”ということでしょうか。
基本的な考え方としては「精度」(0~100%を基準にするもの)については全量調査が必要です。
とはいえ、母数が大きいものなど、現実的に全量調査が難しいものがあります。
その場合、基調をなしている大多数(母集団)を反映していることを担保できるサンプルサイズを計算し、それにもとづいて収集する必要があります。
サンプルサイズの計算については、インターネット上に自動計算器がたくさんアップされているので、それを活用されるといいでしょう。
③客観的;データを収集する方法は偏りなく出来ていますか。
システムで自動測定されるものであれば問題ありませんが、それでもやったりやらなかったり、データの抜けがあると正しい評価ができません。
ひとつのKPIの測定に全量調査とサンプル調査が混在するのもいただけません。
また主観的要素の強いもの(トーク・会話内容などの応対品質評価など)は、共通する一定スキルをクリアした複数人数で評価するなど、データの客観性の確保に努めなければなりません。
データ分析の前にまずは「視覚化」
まずこの表を見てください。
通話の着信数を1時間単位で1カ月の表にしたものです。
この表を見て、着信呼がどのようなトレンドになっているか分かりますか?
恐らくこれで分かる方は、相当の想像力の持ち主です。
それでは次のグラフはどうでしょうか?
上の表をグラフにしたものです。
これであれば、着信傾向がすぐに分かりますね。
数字だけだと見えにくい世界が、グラフにするとトレンドが分かりやすくなります。
ここがポイントです。
人は視覚に訴えたほうが、認知度が上がります。
見落としがちな点にすぐに気づいたり、サービス改善点の早期発見ができるので、数字をまとめてレポート化するときは必ずグラフもセットで作りましょう。(こうしたグラフを自動作成する機能のついたコールセンターシステムを活用すると、かなり手間が省けます。)
適切な判断には、一定期間のトレンドが必要
このグラフを見てください。
AHT(平均処理時間)の2か月間の数値です。
4月のAHTが300秒で、翌5月が320秒。
AHTの目標値は310秒とした場合、この結果を見てどういう判断をしますか?
恐らく答えは処理時間が伸びて、評価は「×」になるかと思います。
それではこれはどうでしょうか。
同じようにAHT6か月分のデータです。
これなら評価はどうなるでしょうか。
5月、6月と数値は悪化したものの、7月から改善傾向になり、8月と9月は目標値を上回りました。なので、評価は「〇」になりますね。
最初は2か月分のデータで評価は「×」でしたが、6か月でみると評価が逆転しました。
これは極端な例ですが、良くなっているのか、それとも悪くなっているのか判断するには、一定期間のトレンドを見る必要があるという事です。
2ヶ月分のデータでは、それが一時的な悪化なのかそうでないのか判断できません。
最低でも3か月分のデータがあれば、どちらの傾向にあるのかわかります。
ただできれば6か月や12ヵ月といった長期で評価したほうが、判断ミスを防ぐことができ、正しい改善策にもとづいた効率化ができます。
着眼すべきは最高や最低ではなく、パフォーマンスのばらつき
今度はこの表を見てください。
A社からF社までのオペレーターの応対スキルを100点満点のスコアで評価し、最低点、最高点、そして平均点をグラフにしたものです。目標値は60点とします。
この点数からみて、どこのコールセンターが最も優秀で、逆にどこのコールセンターが最も課題が多いと判断しますか。
最高点の高さではD~F社が高いですね。
最低点の低さではA~D社が低いですね。
ここで考えるべきは顧客視点です。
お客様に対応するスキルレベルの合格点が60点の場合、それ以上の点数のオペレーターは顧客満足度の高いサービスをしているとみなされますが、それ以下の点数では、顧客満足度の低い応対という事になります。
結論からいうと、もっとも課題の多いコールセンターはD社になります。と同時にA社もかなり課題のあるセンターともいえます。
まずD社の場合、オペレーター間のスキルのばらつきが最も大きく、その差が35点もあります。
しかも最低点は目標とする60点の半分強しかなく、全体の平均点も53点と、目標値を下回っています。
何点のオペレーターが顧客対応するかで、お客さまは振り回されるはずです。お客さまから「前に応対したオペレーターは出来ると言ったぞ。」というようなクレームも起こり得ます。
A社においては、オペレーター間のばらつきは少ないものの、全員が目標値を下回る低い応対レベルにあるという事です。誰が電話に出ても、お客さまに不満を抱かせるコールセンターというわけです。問題ですね。
そういった観点で見ると、最も優秀なコールセンターはE社という事になります。
平均点が目標値に達し、オペレーター間のばらつきも少ないです。
もちろん目標値を下回っているオペレーターの教育は必要であるものの、あと6点であり、業務改善の見込みが立ちやすいです。
このように応答率や稼働率、AHTなどを測定し評価する場合は、結果だけでなくばらつきもあわせて検証する必要があります。
指標は複合的に見ないと、判断を誤る場合がある
「稼働率」の回の「3.新稼働率と応答率の関係性」の章で説明しましたが、ひとつのKPIだけで判断すると、間違ったマネジメントやソリューションを導いてしまう場合があるという事です。
詳しくは「稼働率」の回でも解説しています。
今回はここまで。
次回はデータ分析を促進させる、「美しいグラフ」の作り方についてお話しします。
おまけ『センター内の“困ったちゃん”』 作:ちさ
*【コールセンターのデータ分析 超入門】
分析を始める前に
グラフは見やすくかつ美しく!(前編・折れ線グラフの作り方)
グラフは見やすくかつ美しく!(後編・棒グラフの作り方)
*【コールセンターのデータ分析 実践】
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