Googleに学ぶ、「優れたマネージャーとは」

Googleは「『働く』をもっと良いものに」をテーマに、「Google re:Work」という研究をしています。

その中のひとつに、優れたマネージャーについて研究、実践したものがあるので、今回ご紹介します。

詳細については該当サイトをご覧いただき、今回はそのポイントをご説明します。
※Google re:Work

きっかけ

2002年、すべてのマネージャーを廃止して管理職のいない組織にするという「実験」を行いました。しかし、この実験は失敗に終わりました。

2008年には、調査チームが、マネージャーは重要な存在ではないという一部の意見を証明しようと試みますが、すぐにまったくの正反対であることがわかりました。つまり、マネージャーはきわめて重要な存在だったのです。

そこで、優れたマネージャーの要件とは何か調査しました。

評価の高いマネージャーに共通する10の行動様式

研究チームは、マネージャーの質を 2 つの定量的尺度に基づいて定義しました。

①マネージャーの業績評価。
② Google で年 1 回実施される社員アンケートからのフィードバック。

その結果、有能なマネージャーがいるチームは、満足度も生産性も他に比べて高いという結果が出ました。

さらに評価の高いマネージャーを分析すると、共通する10の行動様式を発見しました。

マネージャーの成長を促すフィードバック

Googleは、マネージャーが成長するためのアクションをしやすくするため、フィードバックを提供してサポートする必要がありました。そこでマネージャー1人に対して部下3名から匿名のアンケートを取り、それをマネージャーにフィードバックして、チームと話し合うことを求めました。

アンケート自体は簡単なもので、13 の項目に対して社員が同意するか同意しないかを回答します。各項目は Google で成功するマネージャーの 10 の行動に基づいています。

1.マネージャーとして他の人に推薦できる。
2.能力を伸ばせる機会を与えて、キャリア開発をサポートしてくれる。
3.チームに明確な目標を伝えている。
4.具体的にアクションできるフィードバックを定期的に提供してくれる。
5.仕事に関して自主性を尊重してくれる(マイクロマネジメントをしない)。
6.1 人の人間として常に思いやりを示してくれる。
7.困難な状況においてもチームが最優先の仕事に集中できるように取り計らってくれる(他のプロジェクトを断ったり、優先順位を下げたりすることが必要となる時など)。
8.上層部からの重要な情報を随時伝えてくれる。
9.過去半年の間に、自分のキャリア形成について有意義な話し合いの場を設けてくれた。
10.部下を効果的にマネジメントするための専門知識(技術的知識、セールスの知識、経理の知識など)を有している。
11.マネージャーとの間で意見の相違があったとしても、自分の意見を尊重してくれていることが行動から伝わる。
12.困難な状況においても優れた意思決定を行える(複数のチームに関連したり、関係者間での優先順位が異なったりしている状況など)。
13.チームや組織の枠を超えたコラボレーションを効率よく行える。

マネージャーへのフィードバック アンケートでは自由形式でのコメントを寄せることができます。これはマネージャーに匿名で開示されます。

1.マネージャーに今後も続けてほしいと思うことは何ですか?
2.マネージャーに改めて欲しいことは何ですか?

※サンプル:「マネージャーに関するフィードバック アンケート」

これをもとに、率直な話し合いをするチームほど、その後のアンケートで評価が上がる傾向が見られました。

マネージャーとビジョンを共有するチームほど強い

評価の高いマネージャーはビジョンを持ち、それを効果的に部下に伝え、ビジョンを共有していることが調査から分かってきました。
こうすることにより、同じ方向に向かって全員が仕事に集中しやすくなるだけでなく、「何を優先させ」、「どこで妥協するか」決めやすくなります。

マネージャーがチームと協力してビジョンを策定できるように、Google では次のようなステップのチーム演習をしています。

マネージャー主導型セッション例(8時間×2日間)

※サンプル:「共有ビジョンの設定」
※サンプル:「共有ビジョンの設定_ファシリテーターガイド」

ここでGoogleはマネージャーに効果的なコミュニケーションを求めています。
そのポイントは3つ。

①相手の気持ちを受け入れる。
②不明確な点から相手の視点を明確にする
③受け入れて共感する

ところが、ここが一番難しいとGoogleは考えており、フィードバックの際、次の点について考慮するようマネージャーにすすめています。

①質の高いフィードバックを提供する。

自分に問いかけてみてください。

「各チームメンバーに同じ質のフィードバックを提供しているだろうか?」
「チームメンバーのプロジェクトを、彼らと同じくらい理解しているだろうか?」

②基準に一貫性を持たせる。

自分に問いかけてみてください。

「チームメンバーへの期待や、予期する成果について、メンバーに説明したことはあるだろうか?」
「成功の基準をチームメンバーごとに設定したことがあるだろうか?」

③思い込みを避ける。

自分に問いかけてみてください。

「思い込みに基づいて行動していないだろうか?」

たとえば、子供がいるチームメンバーを出張が多い仕事から外していないでしょうか?思い込みが、チャンスを与える妨げにならないように注意してください。重要なのは、メンバー全員に対して、一貫したコミュニケーションを取るように努めることです。

④自分を正しく理解してもらう。

自分に問いかけてみてください。

「自分の言いたいことが正確に伝わっているかどうか?」

フィードバックを伝えた相手との相違点が多いほど、言いたいことが意図したとおりに伝わっていない可能性が高くなります。

5.評価の高いマネージャー = 優秀なコーチ

Googleの調査で、評価の高いマネージャーは優れたコーチングスキルを持っており、評価の低いマネージャーよりも頻繁に、チームメンバーと1対1のミーティングを行っていることが分かりました。

そこで、コーチングスキルを活かした指導力を上げるために「GROWモデル」を使ってコーチングするよう求めています。

※GROWモデルとは

※ウィキペディア(英文)GROWモデルとは

 

また評価の高いマネージャーは以下のようなミーティングを行っていました。

①定期的なミーティング(毎週または隔週で 30~60 分、決まった時間に行う。)
②議題を決める(アジェンダを作成・共有する。作成にはマネージャーとチームメンバーの双方が関わる。)
③1 対 1 で会う(会議室や自分の席ではなく、オフィスの外で行う。)

※サンプル:「1 対 1 ミーティング テンプレート」

効果的なマネージャーは、チームに権限を与え成長させ伸ばす

効果的なマネージャーには4つの行動をとっていることが分かりました。

①細かく管理しない。
②自由にやらせつつも必要に応じて助言をする。
③チームに対する信頼を明確に示す。
④チームの成果を周囲に伝える。

しかしながら、このバランスを保つことは容易ではなく、チームとの信頼関係を築くことが秘訣であると考えています。

①意見を求める。
②アイデアや知見を求める。
③肯定的なフィードバックを行い、関係を強化する。
④リーダーを育てる。
➄各チームメンバーの能力を伸ばす。
⑥チームメンバーにコーチングする。
⑦オープンなコミュニケーションを推奨する。
⑧チームメンバーへの信頼を示す。

チームに上手に任せるヒントとして、以下の6つのポイントを挙げています。

①目標を見据える。
②自身を見つめる(任せられない仕事の種類とその理由を考える。)
③適任者を見出す。

④委任する。
・業務の概要を説明する。
・新たな責任について詳しく説明する(期待される成果については明確に伝えますが、仕事をどのように完了すべきかについて具体的に言及するのは避けます。)
・質問、感想、提案を受ける。
・担当者の意見を聞き、親身になって答える。
・チームにどのような影響があるかを共有する。
・励ます。
・チェックポイント、成果物、締め切り、進捗管理の方法を決める。

⑤連絡を取り合う。
⑥感謝の念を示す。

専門知識でサポートし、結果を重視する

効果的なマネージャーはチームの生産性を維持し、結果を出すために5つのことを行っています。

①チームには常に結果を重視させる
②チームによる優先順位付けをサポートする
③障壁を取り除く
④誰が何に取り組んでいるかを明確にする
⑤懸命に働き、チームの指針となる

そして、マネージャーはチームにとって信頼できるアドバイザーでもあるために、以下の行動をとることが重要であると考えます。

①チームの傍らで懸命に働く
②問題点を把握する
③専門知識とスキルを活かして問題解決をサポートする

「マネージャーがチームのために働いているのであり、チームがマネージャーのために働いているのではない。」

このことがとても重要だとしています。

Googleのマネージャー支援体制

Googleはマネージャーの育成支援のために、2つの施策でサポートしています。

①新任マネージャー向けトレーニング

マネージャーとしての仕事が始まってから通常 45~90 日後に開始されます。

就任前に始めるほうが理にかなっているように感じるかもしれませんが、新しい職務に就いてしばらく経験を積んだ後の方が、さまざまなことを効率的に吸収できることがわかっています。

②マネージャーのコミュニティを構築

Google には、マネージャー同士が教え合い、学び合えるコミュニティがあります。公式のコミュニティの他にも、自主的に作られた非公式のコミュニティがいくつかあります。

いずれもマネージャー同士で質問や提案をしたり、仲間のマネージャーに愚痴を聞いてもらったりすることもできる、有益なコミュニティです。

・マネージャーを対象とするメーリング リスト
・アイデアを共有するための非公式なフォーラム
・マネジメント スキル開発イベント:

 

いかがでしたか。

内容に特別なことはなく、これまでの管理者教育でしばしば言及されるものばかりです。注目すべきは、施策の完全性と一貫性です。

管理者育成は1日や2日の短期研修で身に付くものではなく、時間をかけて成長を促し続けることであるというのが鍵です。
これがいまのGoogleの強さにつながっているのではないでしょうか。

管理者育成に悩んでいる方の参考になれば幸いです。

おまけ

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