2020.06.15
2024.03.11

応対品質管理をやってみよう(第10回)【最終回】

このシリーズの過去の記事はこちら
*【KPI】とっても大事な応対品質。管理するコツとは?
*応対品質管理をやってみよう(第1回)
*応対品質管理をやってみよう(第2回)
*応対品質管理をやってみよう(第3回)
*応対品質管理をやってみよう(第4回)
*応対品質管理をやってみよう(第5回)
*応対品質管理をやってみよう(第6回)
*応対品質管理をやってみよう(第7回)
*応対品質管理をやってみよう(第8回)
*応対品質管理をやってみよう(第9回)

 

長きにわたって続いたこのシリーズも今回が最終回です。

 

最後は評価基準をもとにした電話応対スキル評価表の作成です。

ブログの終わりにサンプルシートがついているので、各自でカスタマイズして活用することができます。

それでは、いってみましょう。

 

電話応対スキル評価表とは

※画像をクリックすると拡大できます

評価基準表をもとにオペレーターの応対をモニタリングし、個人別に評価を記録します。そして、作成したこの評価表をもとにオペレーターへフィードバックし、応対スキルの改善に役立てます。応対スキルを改善するにはこのような仕組みが不可欠です。

応対品質改善に取り組むコールセンターでは、独自の評価表を作成して活動しており、コールセンター運営における必須ツールの一つとなっています。

それでは、そのポイントについて整理します。

 

二つの評価

①項目評価

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評価基準表の4段階評価に基づく評価点です。

4段階の評価基準の前提について、第5回目のブログの時に以下のように定めました。

基準1:オペレーターの応対スキルとして不合格レベル。オペレーターとしてデビューまたは業務遂行不可。フォローアップが必須。

基準2:オペレーターが業務遂行する上で最低限の要件。この水準をすべてクリアしたオペレーターのみ業務遂行可。新人のデビュー要件。

基準3:会社が考える顧客応対力として求める応対品質レベル。デビューして1年以内の到達を目指す。正社員の場合は人事評価のプラス要因。派遣社員等の場合は、処遇や契約更新への考慮要因。

基準4:会社が期待する顧客応対力であり、顧客満足度向上に強く影響するレベル。デビューして3年以内の到達を目指す。2年目以降のベテランに求める水準。昇格や昇給へのプラス要因。

 

15項目 × 各4点 = 60点満点となるので、新人のデビュー要件として30点、1年目で45点、2年目以降で60点を目指します。

また図の個別評価列(緑色箇所)にABCと3つの列がありますが、これは3人で評価することを表しています(ABCは記名式でも構いません)。

一人で評価すると、どうしても評価にブレが出やすくなります。
また評価者の癖や好みも出てしまいます。
可能な限り複数の人間で評価するのが、適切な評価のために望ましい体制です。

ただし、複数で評価する場合は事前にカリブレーション(評価基準合わせ)が必須です。

カリブレーションとは、ひとつの応対音声を複数の人間で評価し、その評価点が全員で一致するように各自の誤差について確認・議論し、お互いの評価のブレを矯正することです。

 

②加重評価

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上記の項目評価点だけでも結構ですが、評価ウエイトに差をつける加重評価もあわせて実施してみてください。

加重評価点とは、5つの観点に対して合計100点になるよう重要性に応じて点数を配分し、その配分に応じて各観点の評価点を増減させたものです。

この加重評価のポイントは、皆さんの業種や業務内容により重視する観点が異なる場合に、各観点に平等に配点して評価するよりも、重視する観点とそうでない観点との配点を変えることで、より実態に近づけることができるというところにあります。

例えば「顧客の要求を正しく理解する」の観点には2つの評価項目があり、それぞれ4点満点で、合計8点満点です。この観点について上記図例の加重評価点では、15点満点になるよう配分しています。

評価項目1点あたり、加重評価点では15点÷8点=1.875点が配分されます。

今回サンプルとして提示した「電話応対スキル評価表」を例にとると、評価者Aさんはこの2つの項目に対し、項目評価点においては8点満点中、合計3点としています。3点×1.875点=5.6点獲得(小数点第2位で四捨五入)ということになります。

加重評価点は点数の配分によって合格の目安が異なります。各社でテストを繰り返したうえで、合格点を設定してください。

 

評価コメント

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評価者は3つのポイントについてコメントを記載します。

①総合評価

今回の応対全体についてサマリーを記載します。特定の細かい話は次の「項目別評価」にまわし、重要で代表的なポイントのみに的を絞って簡潔に書くことが求められます。

②項目別評価

各評価項目について、プラスおよびマイナスの両面でポイントとなる点について記載します。

ネガティブなことばかり書くのはNGです。必ず良い点も書いて全体のバランスがとれるようにしましょう。

③優先課題と対策

上記の「総合評価」と「項目別評価」を踏まえ、応対スキル改善のために何をすべきなのか具体的にアドバイスします。

一度にあれこれと書き連ねるのではなく、ひとつかふたつに的を絞って、次回までの改善テーマとして提示することがポイントです。

 

応対品質管理の運用

応対品質管理をスキルアップにつなげるにはポイントがあります。

①実施サイクルは短く

理想から述べるなら、1か月以内に全員を1度実施することが望まれます。

しかしながら、応対チェックの工数は意外と大きく、1本の応対を何度も聞き返して評価するため、5分程度の応対をチェックするのに、1件あたり40~50分くらいは見込んでおく必要があります。

またチェック中はずっと神経を集中させておかなければならず、その集中力の維持を考慮すると一人が1日でチェックできるのは5~7件が限界ではないでしょうか。

それらを踏まえると、1か月サイクルで応対をチェックするのはハードルが高く、現実的には3~6か月サイクルでチェックしているコールセンターが一般的です。

しかしながら、チェックのサイクルが長すぎる場合、例えば6か月単位でチェックするとなると、年2回の応対チェックではオペレーターの応対スキルが本当に改善するのか疑問が残ります。実現性と効果のバランスを十分考慮して取り組んでください。

②継続して実施すること

当然ですが、繁忙などを理由としてやったり、やらなかったりでは改善効果を期待することはできません。

応対品質管理は、SVなどの管理者が兼務すると継続実施することが難しいケースが多いです。そのため、安定的に実施するには専属の担当者を配置することが望ましいのですが、小規模コールセンターではハードルの高い課題です。

その場合は外部委託を活用するのもひとつの手です。

外部委託をするメリットとして、内部事情に左右されず、徹底して顧客目線で評価ができるという点があります。

③応対品質管理者をトレーニングすること

業務経験が豊富な人材であれば、ある程度の精度で評価をすることができますが、専門的なトレーニングを積むことで、よりロジカルな視点でオペレーターの応対の課題を解決することができるようになります。

他者を評価し得点化する行為は、評価される側からすると非常にデリケートな問題です。特に評価が処遇に反映される場合はなおさらです。

評価される側から、「なぜ自分のここの評価は低いのか?」と追及され、明確な回答を求めることも珍しくなく、評価者のプレッシャーはかなりのものがあります。

そのためにも、理論武装できるだけの知識と相手が受け入れやすいような指導方法のトレーニングは不可欠です。

※ 応対評価のためのサンプルシート

最後に評価基準表と電話応対評価表のサンプルシートを添付しています。
これをベースに、自社オリジナルの評価の仕組みを作り、応対スキル改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

▼電話応対評価表【サンプル】
https://go.biztel.jp/blog_score_sample1

▼評価基準表【サンプル】
https://go.biztel.jp/blog_score_sample2