リアル×デジタルの融合で進化するマーケティングの今
昨今のビジネスでは、業種や企業規模を問わず「サブスクリプション型」への転換がトレンドになっています。これは、サービス・製品を「売る」ことがゴールではなく、「継続的かつ長期的な関係の構築」が最重要課題になっていることを意味します。
加えて「カスタマーサクセス」「顧客体験」が重視されるようになり、マーケティングにも新たな潮流が生まれています。
ここでは、マーティングの新たな潮流である、「リアル×デジタルの融合」について解説します。
目次
「個の時代」に注目される「One to Oneマーケティング」
サブスクリプション型ビジネスの成功には「顧客満足度の向上」が必須です。
顧客満足度は、顧客の期待値と実際の結果の差が大きいほど高まります。また、顧客の期待値を大きく上回る結果を出すには「パーソナライズ化されたサービス・対応」による「顧客体験」や「カスタマーサクセス」の向上が欠かせません。つまり、製品・サービスと特定の「1人」を結びつける「One to Oneマーケティング(顧客一人ひとりの嗜好にあわせて展開するマーケティング活動)」が重要になっているのです。
このことから、集団を対象とした「マス・マーケティング」から脱却し、One to Oneマーケティングに舵を切る企業が増えています。そこで、マスマーケティングとOne to Oneマーケティングの違いを整理しておきましょう。
従来のマスマーケティングでは「30代・女性」といった大きなくくり(マス)に対して画一的なアプローチ(テレアポやカタログ配布など)を行います。一方、One to Oneマーケティングでは、自社のwebサイトを訪問したユーザーの嗜好・行動パターン・属性などを細かく分析し、それに基づいて具体的な提案を行います。
マスマーケティングの特徴
● 「女性」「30代」など、ターゲットを一般的かつ普遍的な属性でカテゴライズする
● 「大量生産」「大量販売」「均一化された製品・サービスの提供」
● 規模が大きければ大きいほど結果が出やすく、巨大資本を持つ企業ほど有利になる
● 失敗したときのリスクが大きい
One to Oneマーケティングの特徴
● 一般的かつ普遍的な属性よりも「どの製品やサービスに」「いつ」「どういった経路(チャネル)で」アクセスしたかを重視し、個人的な好み、購入意欲が増すタイミングなどを把握する
● カタログやDMの一斉配布など、大量・一括のアプローチではなく、個々の需要に合わせたアプローチを行う
● アプローチにかかるコストが小さい
● 失敗のリスクが小さい
このように、莫大な広告費をかけずに優良顧客の獲得・育成を重ね、自社のファン層を拡大できることが、One to Oneマーケティングのメリットといえるでしょう。
では、One to Oneマーケティングの成功事例をいくつかご紹介します。
One to Oneマーケティングの成功事例
個々人にカスタマイズされたメルマガを配信して購買率アップ
ガスコンロを扱う有名メーカーでは、メルマガによるOne to Oneマーケティングで効果を上げています。ユーザーの行動履歴から発行タイミングや対象を絞り込み、特定の商品に対し購買意欲が高いと判断した顧客に対し、メールでアプローチした結果なのだそうです。
POSデータに基づいたクーポン配信で収益増
全国にチェーン展開する ある外食企業では、それまで蓄積し続けてきたPOSデータをもとに、スマートフォン向けアプリで配信するクーポンを変化させました。どの商品が、どれだけ、どういったタイミングで売れているかを分析し、アプリ登録者の属性(年齢、性別、子どもの有無、注文傾向)に応じてクーポンを配信。これにより、新聞広告の約100分の1のコストで大幅な収益増を達成しています。
見直される「リアル」なアプローチ
テクノロジーを使ったOne to Oneマーケティングが注目を浴びる一方で、アナログでリアルなアプローチも再評価されています。
顧客体験やカスタマーサクセスの向上を目指すとき、「生身の人間によるアプローチ」や「物理的に確認できる安心感・特別感」は、大きな強みになるようです。「DM(ダイレクトメール)」や「電話」がこれに該当します。
DM(ダイレクトメール)
電子メールに比べて大幅に高い開封率を誇り、一説では80%を超えるというデータもあるほどです。電子メールやアプリ配信クーポンとは異なり、「物理的に手元に残る」ことで記憶に残りやすく、消費者はじっくりと内容を吟味する傾向にあります
電話
生身の人間がリアルタイムで対応するため、チャットやEメール、アプリなどデジタルなアプローチではフォローしきれない質問に対応できます。「人対人」のリアルタイムかつ詳細なヒアリングが可能で、デジタルよりも顧客との距離が近く、顧客体験を向上させやすい点が特長です。
リアル×デジタルの融合による「クロスチャネルOne to One」
こうった実情を踏まえると、今後のマーケティングは、リアルとデジタルをうまく融合させた「クロスチャネルマーケティング」が重要になってくると予想されます。
クロスチャネルマーケティングとは、さまざまなチャネルで顧客接点を創出し、なおかつそれらを統合してシナジーを発生させるマーケティング手法です。つまり、自社Webサイト、Eメール、チャット、アプリといったデジタルなチャネルに加え、電話やDMも活用することで、顧客との距離を縮めていくわけです。
さらに、クロスチャネルマーケティングとOne to Oneマーケティングを組み合わせた「クロスチャネルOne to One」まで到達できれば、顧客満足度向上のスキームとしてはベストに近いのではないでしょうか。
クロスチャネルOne to Oneの実現には、CRMやSFA、コールセンターシステムなどの連動が必要です。
例えば、コールセンターでの通話内容をCTIと連動したCRMやSFAで活用するとしましょう。CRMやSFAでは、顧客接点の履歴や顧客属性、嗜好性をデータとして蓄積・管理します。そして、顧客を分析し、最適と思われるタイミングでお客様へアプローチします。このアプローチにおいて、リアルの方法として活躍するのが電話を使ったアプローチです。そして、電話でのアプローチを支援する仕組みがコールセンターシステムです。コールセンターシステムとCRMやSFAを連携させることで、PCからワンクリックで電話を掛けたり、通話の録音履歴をCRMやSFAに自動で残したりといったことも可能となります。
このように、シームレスにシステムを連携させることで、クロスチャネルOne to Oneの実現を一歩前進させることができるのです。
まとめ
サブスクリプション型ビジネスが盛り上がるなかで、クロスチャネルOne to Oneは、さらに重要さを増していくでしょう。
一方、CTIを始めとしたコールセンターシステムは、電話によるリアルな対応を効率化するとともに、CRMと組み合わせることで顧客一人ひとりの嗜好や行動に関するデータを蓄積できるため、クロスチャネルOne to Oneの実現に効果的な仕組みです。
また、クラウドベースで提供されているサービスであれば、初期費用やランニングコストも低く抑えることができます。「リアル×デジタル」なマーケティングを実現する仕組みとして、コールセンターシステムやCRM、SFAの連携に注目し、各ベンダーに問い合わせてみてはいかがでしょうか。