部下とのコミュニケーショントラブルに向き合う【前編】

毎年発行されている『コールセンター白書』の調査のひとつに、「コールセンター運営上の課題」というアンケートがあります。

これまで「品質向上」が、長く一番の課題として“君臨”してきましたが、2017年度版で「オペレーターの採用・育成」と「SVの採用・育成」に抜かれ、トップの座を明け渡すという驚く結果が出ました。コールセンターの現場にいる方でしたら実感していることと思いますが、

コールセンターの最大の課題は今や
人材不足
そして、それに続く
離職防止
この二つといえますね。

人材不足は立地や採用条件の影響もあり、現場の努力ではどうにもならない面がありますが、離職防止は職場環境の問題はあるものの、基本的には現場で対応すべき課題であり、その施策に頭を悩まされているのではないでしょうか。

離職防止策の根幹をなすものが「コミュニケーション」です。
前回に続いて、今回はマネジメントにおけるコミュニケーションについて考えていきましょう。

上司と部下のコミュニケーション

少し硬い話になりますが、そもそもコミュニケーションとは発信側が受け手に対し何か目的があって行うものです。

そしてコミュニケーションとは一方的なものでなく、両者が情報だけでなく気持ちも交換し合い相互理解を含めることで”良好なコミュニケーション”が成立します。

・ 上司なら、部下に自分の意思を受け入れ、行動してほしい。
・ 部下なら、上司に自分の考えを認め、承認してほしい。
・ 両者に齟齬が認められれば、誤解や対立点を明らかにし、納得のいく結論に導き出す。

はい、まずこの時点で失敗している上司の方はいらっしゃいますね。

「部下は上司の指示に従うのは当たり前。」

「ここは職場であって、仲良しクラブじゃない。」

というような考えを持っていると、コミュニケーションではなく、“通達型の情報発信”をしがちです。

今日の主題はここではなく、もっと“厄介な”上司のコミュニケーションです。

前述した“良好なコミュニケーション”は、あくまでも上司と部下の“お互いの信頼関係が成立”している状態でのみ可能です。

したがって、上司が部下に信用されていない場合、その上司はコミュニケーションはおろか、何をしようとも徒労に終わってしまいます。
しかも、部下から自分は嫌われていると自覚しているならまだしも、そういう上司に限って自覚症状がありません。

今もし、部下とのコミュニケーションに悩まれている方がいるなら、その原因はもしかすると自分にあるかもしれないと考えてみる必要があります。

あなたは既に部下から嫌われている・・・のか?

それでは一つ、皆さんの言動や心に、部下から嫌われ要素が潜んでいるかテストしてみましょう。

下記の10問の質問について、心当たりがあるかどうかチェックしてみてください。
(経験がないことでも、自分の意識レベルでどちらになるか考えてみてください。)

    1. 自分の指示通りにやらなかった部下のミスは、
      あくまで部下自身が責任を最後まで取るべき
      だと思う。
    2. 「責任者を出せ!」とひどいクレームになって、部下から依頼されたが、
      自分は一度も電話を代わって出たことはない。
      (逃げているわけではなく、それは自分の職責ではないという考えもある。)
    3.  自分は職場の中でも優秀なほうだと思う
    4.  初対面の相手に対しては、なによりもまず「経歴」、「役職」、「年齢」が気になる
      そしてそれに応じて、自分の言動に違いが出やすい。
    5.  一度決めたやり方やルールは、それを守ることが大事であり、変更すべきではない。
      (朝令暮改はかえって現場を混乱させる。)
    6.  何かを始めるとき、まず「よそはどうやっているのか?」が気になり、
      前例がない場合は、よほどのことがない限りやらない可能性が高い。
      (前例のないことはリスクがあり、混乱を避けるのは上司の務めだと思う。)
    7.  何かうまくいかない、または面倒になりそうだと感じたら、
      なるべく関わらないようにするか、すぐに手を引く。
      (正直なところ、人間関係のトラブルとか無茶な仕事には関わりたくない。)
    8.  これまで部下に対して一度も熱く語ったことはない
      そういう根性論的なものは時代遅れで、むしろ良くないことだと思う。
    9.  部下のつまらない言い訳や愚痴を聞くのは時間の無駄だと思う。
    10.  部下や年下に反論されたり、自分の間違いを指摘されたりするとカチンとくる
      (たとえ、それが正しいなと感じても、意見されたことに腹を立ててしまいがち。)

どうですか?
誰も見ていませんので、自分の心に正直に答えてみてください。

上記10問は、某メディアで調査した「嫌いな上司像」について事例化してみたものです。
その他の調査機関でも似たような結果が出ており、信頼されない上司の典型例と言えるかもしれません。

  1.  責任を取らない上司 【質問1と2】
  2.  人を馬鹿にする上司 【質問3と4】
  3.  決断力のない上司 【質問5と6】
  4.  理念や信念のない上司 【質問7と8】
  5.  人の話を聞かない上司 【質問9と10】

質問に該当するとチェックしたものについて、もしかすると、知らず知らずのうちに自分の言動に現れているかもしれません。

皆さんが部下として、自分の上司にどれが当てはまると嫌ですか。
そして、それが自分のチェックしたものと被っていませんか。

もし、該当するものがあった場合、あなたは部下から嫌われている可能性があります。
それでは良好なコミュニケーションは難しく、今現に、自分に対して好意的ではない、または言うことを聞かない部下がいるのではないでしょうか。

部下の信頼を失った上司ができること

コールセンターの上司(管理者)は、多くの部下を抱えています。
そのため、上司は全ての部下と良好な関係を築くのは至難の業です。
特に女性の部下からいったん嫌われてしまうと、関係を修復するのはもはやミッション・インポッシブルな技でして、下手すると組織として機能しなくなる危険性もあります。

とはいえ、上司として組織をまとめ、全員を1つの方向に向かわせなければなりません。
それができない上司は、会社から“ダメ上司”の烙印を押されかねません。

何かしなければならない!

成功率数%の“絶望的技”ですが、どうにもならなくなった時の最終兵器、そんなリーサル・ウエポン的な技をひとつご紹介します。

自己懺悔の面談(1対1で)

これを決断するあなたのプライドはズタズタです。
もうこの時点で「無理!」なら、もうお話することはありません。
このブログをそっと閉じ、忘れてください

しかし、思い出してみてください。
この限りなく忍耐を要求される技。
そうです、「忍耐」と聞いて、ある人物の顔が思い浮かびませんか。

徳川家康

幼少期からずっと忍耐し続けた、忍耐の権化のような人です。
家康さんもこう言っています。

「戦いでは強い者が勝つ。辛抱の強い者が。」

「堪忍は無事長久の基、怒りは敵と思え。」

「勝つことばかり知りて、負くること知らざれば、害その身に至る。」

「人は負けることを知りて、人より勝れり。」

「決断は、実のところ、そんなに難しいことではない。難しいのはその前の熟慮である。」

「人の一生は、重荷を負うて遠き道をゆくがごとし。急ぐべからず。」

さあ、心が定まりましたか。

さて面談ですが、ただやればいいというわけではありません。
少しでも成功に導くにはコツがいります。
そのポイントについて、後編で考えてみましょう。

後編に続く】