コールセンター関係者のための【最新ボイスボット大全】(BIZTEL大学 第12回 講義レポート)
BIZTEL大学は、コールセンター(コンタクトセンター)従事者の方へ「学びの機会」と「悩みの解決」を提供するために開校したオンラインセミナーです。累計1,500名以上の入学者へ「センター運営の持続的な成長」に役立つ情報をお伝えしています。
本記事は、ボイスボット業界のリーダー3社をお招きして開催した『BIZTEL大学 第12回 コールセンター関係者のための【最新ボイスボット大全】』の講義レポートです。
近年注目を集めている「AIによる電話応対の自動化」の実用性について、さまざまな角度から解説していただきました。
目次
講師紹介
第一部:これからのコールセンターに「ボイスボットが必要」な理由
クラウドPBX/CTI「BIZTEL」の概要と主な機能
坂元 初めにBIZTELについて紹介いたします。BIZTELは「法人向けのクラウド音声サービス」です。お客さまの予算や運用方法に応じて必要な機能を選択できるという柔軟さが特長です。
代表的な機能は次の通りです。
・レポート機能
・シートビュー機能
・音声認識機能
・ChatGPTによる要約・通話分析機能 など
コールセンター業界のAI活用について
坂元 コールセンター業界はAIや最新技術を最もアダプトしやすい業界と考えています。2020年には音声認識の一般化、2023年は生成AIの活用が始まり、2024年はボイスボットが一般化する年なのではないかと思っています。コールセンターに関わる皆さまは、AI活用の最先端のチャンレンジャーでもあるのではないでしょうか。
BIZTELはさまざまなシステムと連携するためのAPI群を用意しているので、ChatGPT・ボイスボットはもちろん、企業の独自システムとの連携にも対応できるサービスとなっています。「こんなことができないか?」といったことがあれば、ぜひ仰っていただけたらと思っています。
BIZTELの「ボイスボット連携」機能とは
坂元 コールセンターでのボイスボット活用は、「お客さまからの着信に対し、自動応対できる内容はボイスボットが対応し、ボイスボットで解決できないものをオペレーターにエスカレーションする。引き継いだオペレーターは顧客対応し、終話後は顧客管理システムへの登録をする」というのが一般的な流れです。
シンプルな仕組みですが、いくつかの課題がありました。
ボイスボットシステムのこれまでの課題
坂元 まず一つ目が、ボイスボットとPBXシステムがシームレスに連携できていないことにより、お客さまの発信番号がボイスボット・オペレーターに通知されなかった点です。
二つ目は、PBXからボイスボットへ外線転送によって通話の受け渡しがされることで、不要な通話料が発生してしまっていたという点です。
BIZTELでは、これらの課題を解決した「ボイスボット連携」が可能です。
BIZTELと、今日ご登壇する3社のボイスボットとの連携では、通話を内線転送でやりとりするため、お客さまの発信番号をボイスボット・オペレーターへ連携したり、通話料を削減したりすることができます。
第二部:業界のリーダー3人が語る“最新情報”ボイスボットの機能や運用方法とは
ボイスボット業界のリーダー3人と 、最新情報を交えたパネルディスカッションを行いました。基本機能・仕組み・運用方法・成果事例・代表的なサービスなど、ボイスボットの実態について多岐にわたってお話しいただいています。
パネリスト紹介
- 株式会社AI Shift 田島 努さま(以下、AI Shift 田島)
- 株式会社ソフトフロントジャパン 前田 兼孝さま(以下、ソフトフロント 前田)
- 株式会社PKSHA Communication 宮崎 純一さま(以下、PKSHA 宮崎)
代表的なボイスボットサービス3選
最初のトークテーマは『コールセンター業界を代表する「ボイスボットサービス」3選』と題して、各社が提供するボイスボットの特長について伺いました。
株式会社AI Shift「AI Messenger Voicebot」の特長
AI Shift 田島 弊社がボイスボット事業において大切にしていること・強みは「顧客体験(使い心地)」と「外部システム連携」です。
まず体験(使い心地)についてですが、電話はいわば「企業の窓口」なので、ボイスボットによってお客さま体験を損なうことがないようにする必要があると考えています。そのために、会話中の間のコントロールや、雑音・言い淀みといった実環境ならではの障壁への対策を行っています。
また、外部システム連携は、自動化の度合いを決める大きな要素であり、より広い範囲を自動化するために重要だと考えています。AI Messenger Voicebotでは、作り込んだ個別開発によって、完全自動化を実現することを重要視しています。
いずれも電話応対業務の自動化をする際に非常に重要な要素で、AIが進化したとしても必ず求められる部分です。
株式会社ソフトフロントジャパン「commubo」の特長
ソフトフロント 前田 commuboは「らしさ」引き出すAIボイスボット。組織が活きる、顧客とつながる』というブランドメッセージを持っており、企業の大事にしたいポイントをボイスボットに反映できることが最大の特長です。設定項目が100以上あり、口調やスピードなどの細かい調整が可能になっています。契約継続率は96.4%以上と、多くのお客さまに使い続けていただいているサービスです。
どのような担当者さまに導入いただいているかですが、自分たちでさまざまな設定ができるような「自走型が良い」、とはいえベンダーには環境だけ渡して終わりということではなく「伴走してほしい」、いろいろな業務に使えるような「拡張性が大切」といったご要望のある方に評価していただいています。
株式会社PKSHA Communication「PKSHA Voicebot」の特長
PKSHA 宮崎 私が所属するPKSHA Communicationですが、AIを使った顧客接点領域のSaaSの会社と覚えていただけたらと思います。弊社のボイスボット・チャットボット・FAQはありがたいことに、2023年度の調査で市場シェアNo.1となっています。
言わずもがなですが、PKSHA Voicebotは電話対応をオペレーターに代わって「24時間365日」できるようにする仕組みです。
「用件」「顧客」「対象商材」「お客さまが問い合わせた背景」など、ヒアリングする項目を組み合わせることによって、住所変更や解約手続き、作業完了報告といった幅広い業務を自動化するワークフローが構築できます。
最新のボイスボット、ここがすごい!
続いて、ボイスボットの魅力はたくさんありますが、各社が思う“ここがすごい!”というポイントを解説してもらいました。
1.シナリオが柔軟に変更でき、日々PDCAを回して業務改善ができる
ソフトフロント 前田 ボイスボットはシナリオ編集の自由度が高いことが魅力です。
例えば、「一次受付業務」といっても、日中のあふれ呼対応なのか、夜間の営業時間外の対応なのか。他にも、利用するのは通販事業者なのか、サービス系のサポート部署なのか、自治体なのかなどによって、個社ごとで大事にしたいポイントが異なります。ボイスボットはそういった幅広いシーンをシナリオに落とし込むことができます。
また、PDCAを自社で回せるのも特長です。弊社のcommuboの場合は、マニュアルや伴走体制の整備といった導入した企業が自立するまでのサポートを行っています。慣れてくると自社でオリジナルのシナリオをどんどん作成できるようになります 。
2.高い完結率により、導入企業で「放棄率 約20%改善」「AHT 25%削減」など成果拡大中
PKSHA 宮崎 ボイスボットは導入して終わりではなく、導入後にどのような成果をあげるかが大切です。
例えば、生命保険会社さまの事例ですと、月3,500件を超える住所変更の受付を自動化し、全体の問い合わせの約7割をボイスボットで完結できるようになりました。
他にも通販会社さまでは、あふれ呼をボイスボットでカバーし、広告のROI(投資利益率)を最大化した事例があります。テレビCMの直後は入電が増えるため、オペレーターが待ち構えている必要があり、CMを流すタイミングを慎重に選ばなければなりませんでしたが、ボイスボットがそこを補うことで人員に縛られることがなくなり、効果が最も高いタイミングで広告が打てるようになりました。また、放棄率も約2割改善できました。
坂元 導入効果を数値化して経営陣に示すことも重要だと思いますので、こういった効果があらわれるのは素晴らしいですね。
3.ボイスボットは想像以上に賢い。高度な意図理解をしてくれる
AI Shift 田島 これまでのボイスボットによるFAQの回答は、お客さまの発話を数値に変換し、それに近い答えを持ってくるという仕組みでした。
しかし、現在は生成AIをシステムに組み込むことで、お客さまの質問の意図を理解し、マッチした回答を出せるようになっています。
他にも、製品型番などの数字やアルファベットの羅列は音声認識が難しく、従来の解決策は音声認識エンジンの性能をあげる方法が主流でしたが、生成AIの活用により、誤った音声認識があっても、認識した発話に近い型番の製品を検索するといったことが実現できるようになっています。
コールセンターの現場の疑問にお答えします!
ボイスボットの導入を検討する際、コールセンターの現場の皆さまが気になっているポイントについて、Q&A形式で詳しく回答していただきました。
(疑問1)ボイスボットの導入に向いている業界・商品・サービスはありますか?
PKSHA 宮崎 ずばり、導入に向いているのは全業界・全業種といえるでしょう。現状、定型的なヒアリング業務は、ほぼボイスボットで代替できます。
さらに、今後はLLM(大規模言語モデル)との組み合わせで対応範囲が広がるため、すべての業界・業種で利用が拡大すると想定されます。
これまでのボイスボットは、数字や一部の項目の認識が得意とされていましたが、昨今は音声認識の精度が上がり、氏名や住所などの認識も可能になってきました。今後はLLMによって、一括の聞き取りや、より複雑な応対ができるようになり、高度化が進んでいくでしょう。
現在、主に利用されている領域としては、先ほど例として出した通販や、通信サービス/インフラのお問い合わせ受付・資料請求・契約・機器レンタルなどが挙げられます。金融業界でも、契約保全(顧客が保険に加入できるか審査する業務)などで活用が進んでいる状況です。メーカー・流通についても、定型的な業務での利用事例があります。
(疑問2)ボイスボットのトーンや口調、テンポは、お客さまの心情に寄り添ったものになるよう調整できますか?
ソフトフロント 前田 ボイスボットを導入する側が不安に感じる点として、「お客さまに受け入れられないのではないか」「感情的な部分を汲み取れず、クレームに発展するのではないか」などがあります。お客さまの体験をすごく大事にされている、ということだと思います。
電話をする人の属性を意識し、「丁寧な対応をしようとしている」ということをボイスボットで表現する設計が大切です。
では、どういう観点で表現する必要があるかというと、次のポイントが挙げられます。
年齢層や活用シーンに配慮する(急いでいる場面なのか、など)
・テンポ
利用者のストレスが軽減できるように調整
・答え方のガイド
ロボットとの会話に不慣れな人の不安を解消できるようにする(お客さまの氏名を聴取する際、『「〇〇です」のように名前をおっしゃってください』とガイダンスを流す、など)
PKSHA 宮崎 最近では音声合成の技術も向上しているため、トーンやテンポを調整して感情を表現することができるようになっています。
実際、「お客さまはボイスボットに抵抗があると想定していたが、反応を見ていると意外となかった」というケースは多いです。
(疑問3)ボイスボットで受け付けた注文は、どのように処理されますか?
AI Shift 田島 ボイスボットで受け付けた内容は、予約システム・CRMシステム・基幹システムなどに連携・保存でき、従来は別のシステムに入力していた作業も自動化することができます。
いわゆる「API連携」と呼ばれる仕組みが主軸となりますが、ケースによってはCSVファイル形式で別のシステムと連携し、ボイスボットが対応した情報を格納していきます。予約システムと連携し、空き枠を検索して登録できるほか、受注システムと連携して商品名・個数・送付先の住所などの情報を取り込み、受注を完結させるといったこともできるようになります。
また、完全に自動化はせず、ボイスボットが聞いた内容をオペレーターがチェックしてから手動で入力するといったフローを組まれる企業さまもいらっしゃり、どちらの運用方法にも対応できます。
セミナー参加者からの質問(一部ご紹介)
(質問1)ボイスボットの導入を検討する場合、どのくらいのスケジュールで、どのようなステップで進むのか知りたいです。
AI Shift 田島 構築・設定を弊社側で行うので、1〜2ヵ月ほど要する場合が多いです。開発が含まれると、2〜3ヵ月程度のイメージです。
ステップとしては、「要件定義(どういった使い方をしたいのか)→シナリオのすり合わせ→設定→テスト→微調整」といった流れになります。
ソフトフロント 前田 導入においては、シナリオ作りが一番のポイントになっており、ロボットの対応範囲をどこまでにするか定めるのが大事になっていきます。
導入までの期間はソフトフロントでも大体同じくらいで、早ければ1ヵ月、もう少し時間がかかると2〜3ヵ月くらいです。対象業務のボリューム感や、どこまで設計が整理されているかによっても期間は変わります。
PKSHA 宮崎 企業によっては社内での検証期間を長くとってからエンドユーザに展開する場合もあります。その社内検証期間によって前後することはありますが、要件定義・対話フローの構築を踏まえると、PKSHAの場合も概ね同じくらいの期間で終わると思います。
(質問2)導入する案件の会話を学習させて、それを元に顧客対応のためのシナリオを作成・アレンジすることは可能ですか?
PKSHA 宮崎 現在のボイスボットは、定型的な業務への実装をメインにしており、ボリュームゾーンの問い合わせを自動応対へ代替していくことに取り組んでいるため、「現状はできない」というのが回答になります。
とはいえ、今日の話にもあった通り、生成AIを使うことでより柔軟な対応が可能になっていきますので、そうした技術を応用することで、オペレーターとお客さまの会話を読み込ませてシナリオ化することは、そう遠くない将来実現できると考えています。
コールセンターの改善に励む皆さまへのメッセージ
最後に、コールセンター運営の改善に励んでいらっしゃる皆さまに向けて、ボイスボット業界のリーダーたちからメッセージをいただきました。
AI Shift 田島 直近のところでは、皆さまはボイスボット運用の実現性を高める方法が気になっているのではないかと思います。
私たちAI Shiftや、PKSHAさん、ソフトフロントさんは色々な企業さまを支援し、経験を積んでいます。そうした経験をぜひ頼っていただき、皆さまのサポートができたらと思っています。
また、ボイスボットの未来に関しては、この1〜2年で、生成AIの能力を組み込むことによって一気に性能が上がると予測しています。ずっと昔から言われていた「コールセンターの業務を代替する」未来が、いよいよ近づいていると思っています。弊社もそうしたものが作れるよう、引き続き頑張っていきたいです。
AI Messenger Voicebot に関する詳細はこちら
ソフトフロント 前田 今後は「電話をしたら相手がロボットだった」という体験が増えてくるのではないかと思います。そうなると、人と話す方が希少になってくるかもしれません。
ボイスボットを多くの企業が使うようになってから導入すると、その時点から慣れていない部分が色々と出てくるかと思います。過渡期である今のうちからスモールスタートして、運用に慣れておいたり、どこでボイスボットを活用したら効果的か考えたりするなど、感覚を養いながら進めるのがおすすめです。
commubo に関する詳細はこちら
PKSHA 宮崎 これまでのお話を聴いていただいて、ボイスボットへの期待感は高まっていると思います。分からないことや、「こういった業務は対応できるのか」などのご質問があれば、ぜひご相談ください。
一方で、ボイスボットが普及していくと、オペレーターさんの価値は上がっていくと思います。ボイスボットで自動化を進めることを通じて、オペレーターさんが人でなければできない業務にどんどん対応し、その価値を高めていけるよう私たちもサポートしていきたいと考えています。
PKSHA Voicebot に関する詳細はこちら
BIZTEL大学のご紹介
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