【マネジメント最初の一歩】部下の指導で上司がやってしまうミス
よくコールセンターの責任者の方と話をすると、
「管理者が部下を上手く指導できない。」
というような話をよく聞きます。
コールセンター運営で一番難しいことは「人のマネジメント」ですね。
考えてみればSVになると、部下を10~30人くらい率いています。
その上のマネージャーになると50~100人。
大規模センターになると、センター長は1,000人くらいの部下を持っています。
中小企業の社長さんでも、なかなかここまでいきません。
それを20~30代の若い人たちが仕切るのですから、上手くいかないのも無理はありません。
今回からマネジメントについて、少し考えていきましょう。
目次
数百円のトラブルで離職発生
とあるコールセンターで実際に起きた事件です。
あるコールセンターベンダー(A社とします)は、あるクライアントからコールセンター業務を受注し運営していました。
その後、クライアントの業務拡大に伴いセンター移転ということになりました。移転先は電車で15分程度離れた場所で、オペレーターも全員異動します。
しかし、クライアントの業務は24時間、365日の対応だったため業務を止めることができず、現在の場所での対応と併行して、移転先に徐々に業務を移管するという二重運営を1か月することになりました。
大変なのはシフト運営です。
現行場所と移転先のシフトを用意せねばならず、またオペレーターも両拠点を行ったり来たりという状態でした。
さらに面倒だったのは交通費の問題です。
A社では今回の特別措置として、移行期間中、移転先での業務の場合は交通費を別途支払うとしていました。現行の場所より遠くなるオペレーターが増えることから不満がでており、繁忙期を目前に控え、離職者を出したくないための措置でした。
交通費の請求を間違えないよう詳しく指示書を作り、オリエンテーションを実施して周知したものの、70人近いオペレーターがいるとミスする人が出てきます。
締め日から1カ月過ぎたころ、一人のオペレーターから交通費の請求忘れがあったとの申告がありました。もちろんオペレーターは請求したいとの希望を持っています。金額は数回分の数百円です。
あらかじめ請求漏れについては支払いをしないため間違えないよう、うるさいほどに伝えてありました。というのも、タイミングの悪いことに、ちょうど年度の決算月をまたいでいたためです。
A社も数万人のオペレーターを抱える大企業であり、ルールは厳格です。とはいえ、できないことはなく、やりくりで何とか抜け道もあるはずです。
困った担当者は上司であるマネージャーに相談しました。担当者としては、何とかしてあげたいという気持ちです。
ところがそのマネージャーは「ルールはルール。例外は認めない」の一点張り。挙句の果てに、「お前が言いにくいのなら、私が直接説明する」と妙なやる気を見せてきました。
不安を感じた担当者は、「たかが数百円です。今回はこちらが折れることで相手に恩を売る方が得策ではないですか。頑張っている優秀な人ですし」と食い下がります。しかしマネージャーは「任せろ」の一点張り。
後日、業務後に面談の場となりました。
マネージャーは普段は現場に顔を出すことが少ないため、当該のオペレーターと直接話すのは初めてでした。相手のオペレーターは不穏な空気を察したのか、仲のいい同僚2名を連れ3人体制で面談に臨みました。
結論から言うと、マネージャーはルールを盾に一歩も譲らず、面談は荒れに荒れ、怒号が飛び交う最悪の結果となりました。
そして数か月後、面談に参加した3名のうち、2名が離職しました。「A社は信用できない」という言葉を吐き捨てて。しかもその2名は優秀なオペレーターだったので、経緯を知ったクライアントからも叱責です。
好意でやった措置が、裏目に出てしまうことになりました。
何が間違っていたのか
あくまで特殊な事例ではありますが、ここにはマネジメントにおける問題の本質が隠れています。
皆さんは何が真の問題だと考えますか?
また皆さんならどうしますか?
特別措置を取ったことが、そもそもの間違いだったのでしょうか?
ルール違反のオペレーターがわがままなのでしょうか?
それとも、杓子定規に対応したマネージャーが厳しすぎるのでしょうか?
これらは全て表層的な問題です。
コミュニケーション不足により、上司と部下の信頼関係が無い状態で、相手の気持ちを汲むことなく一方的に結論を押し付けたこと。
これが、この問題の核心です。
上司と部下の信頼関係ができていれば、些細な問題として終わったはずです。
これまで、会社では「上司」は絶対権力者であり、「部下」は上司の命令に従うのは”当たり前”とされてきました。
しかし、そこは人間。
序列を盾に権力を行使して人を動かすというのは、もはや時代遅れとなってきました。“パワハラ”と逆に糾弾される時代です。
部下を指導するうえで重要なものは、“お互いの信頼関係”です。外資系企業の上司は、まず部下との信頼関係づくりから始めます。古い体質の会社ではここが軽視され、いまだに”お上“気分で下の者を扱おうとして失敗します。その信頼関係を築くための第一歩が“コミュニケーション”に他なりません。
部下の指導で失敗するケースを検証すると、その多くはコミュニケーショントラブルに起因するものです。
一方で、部下のやる気を育て、職場を活性化する良い上司は皆、コミュニケーション上手です。
さて、次回以降からそのコミュニケーションについて、皆さんと考えていきましょう。