2020.04.28
2022.02.18

「KPI何からやればいいですか?」その3 AHT

(前回まで)
● その1 応答率
● その2 ミス率

今回は3つ目のAHTについて考えてみましょう。

とはいってみたものの、既に過去ブログ「生産性管理の基本 AHTとは(2018.06.11)」
で書きつくした感があります。詳しくはこちらをご覧ください。

…と終ってしまうのもなんですので、今回は”基本のキ”について考えてみましょう。

AHTとは何?

AHT(Average Handling Time)とは、お客さまとオペレーターとの応対時間のうち、通話時間・保留時間・後処理時間を合計した平均処理時間を指します。

※後処理時間:
電話が終わった後に、応対の記録や依頼処理をシステムに登録するなど、電話に出られない状態の時間のこと。
同じ電話に出られない状態で、ランチやトイレなどが理由で業務から離れる場合には、「休憩」「離席」「ログオフ」などのステータスとなる。

業務やオペレーターの生産性を見る指標で、業務効率の妥当性を検証する際には真っ先にチェックするKPIのひとつです。

AHTは3つの応対プロセスをそれぞれ集計します。

  • 平均通話時間(1件あたりにかかった通話時間の平均)
  • 平均保留時間(1件あたりにかかった保留時間の平均)
  • 平均後処理時間(1件あたりにかかった後処理時間の平均)

計算式は、集計期間に対する
「総通話時間 ÷ 総通話件数 =1件あたり平均通話時間」
というように、かかった時間を件数で割り出して算出します。

なぜAHTを管理しなければならないの?

「AHTが長い = 1件あたり処理時間が長い」ことになるので、業務量が増えれば増えるほど、より多くのオペレーターが必要になります。
運営コストが増えるだけでなく、人材を必要数確保できなければ、応答率低下とそれに伴う顧客満足の低下を招きます。
AHTを改善することは、収益面と顧客満足度面でのプラス効果を生み出します。

AHTはどうやって管理するの?

AHTは全体と個人の両面で管理するのが基本です。

全体

AHTが長い場合は、「業務プロセスが複雑」または「無駄なプロセスが存在」する可能性と、「オペレーターのスキル不足」を起因とする可能性があります。
個人別のデータと照らし合わせながら、真の課題を特定します。

個人

きちんと教育しても必ず個人差が出ます。
それが経験による違いであれば時間が解決しますが、ベテランなのに後処理時間が突出して長い場合や、新人の保留時間が長く、回数も多いなどが見られる場合は、個別に指導して改善していくことが望まれます。

AHTはどこを見れば分かるの?

BIZTELの稼働状況モニタリングで常時監視し、時間がかかっているオペレーターに素早くサポートに入ることで、AHT改善だけでなく、場合により苦情の発生を抑えることにもつながります。

BIZTELでは以下のメニューで把握することができます。

【稼働状況モニタリング】

当日の業務開始から現在までの状況を確認できます。

【コールセンターレポート】

期間と時間を指定して検索し、全体のAHTを確認できます。

【エージェントレポート】

期間と時間を指定して検索し、個人別のAHTを確認できます。

AHTの目安となる目標値は?

応答率なら、だいたい90%など目安となる目標値はあるものの、AHTにはありません。
そして短ければ良いというわけでもありません(これについては次章で)。

なぜなら業種・企業・業務内容によって全く異なるからです。
また応対内容によって簡単なものはすぐに終わり、難しいものは時間がかかります。それらが1日の業務のどれだけの割合を占めているかでも変わってきます。

ただし、平均保留時間については「1分以内」を目標値にするコールセンターが多い傾向にあります。

AHTは他社の目標値をあてはめようとすると失敗します。
また自社で測定した平均値を目標値にするのも間違いです。

大事なことは自社の最適値を見つけることです。

厳密にやろうとすると大変なので、会社として認められる応対モデルを実践しているオペレーターのデータを参考に割り出すことで容易に算出できます。
ただし、応対が優秀過ぎる人や理想過ぎるデータをベースにすると、目標値が現実と乖離してしまうので注意してください。

AHT管理の注意点とは?

AHTを無理に短くしようとすると、事務的な応対になり、電話を早く切ろうとするオペレーターの姿勢がお客さまに伝わり、お客さまの不満足に繋がりやすくなります。
また後処理を急がすことで処理が雑になり、ミスにもつながりやすくもなります。

AHT管理の肝は2点。

①無駄な時間の極小化
②個人のばらつきの極小化

① 無駄な時間の極小化

応対時間はお客さまとの関係性を築くための重要な時間であり、時間をかけて丁寧に応対することで、お客さまの満足度向上につながることもあります。実際にテクニカルサポートのコールセンターでは、お客さまの問題解決にとことん付き合うことを掲げているところもあります。したがって、ここにメスを入れるのは最後です。

保留時間は短いに越したことはありませんが、確実な処理のために必要な場合もあり、必要最低限の時間で対応している限り、あまりメスを入れる必要はありません。

後処理時間については、ほとんどのコールセンターで何らかの後処理作業があると思います。
そしてAHTに課題がある場合は、この後処理時間が影響しているケースも多く、真っ先にチェックする対象です。
その最適な時間の設定については、事前にシミュレーションして最適値を導き出してください。

②個人のばらつきの極小化

AHTの課題の本丸です。
一部の遅いオペレーターたちによって、全体の数値が悪化するというのがよくあるパターンです。
それが顕著に表れるのが後処理時間です。
タイピングスキルが遅いなどのスキル面の課題だったり、のんびりやっていたり、わざと遅くやっていたりと、その理由も様々です。

応対時間については、新人などスキルの低いオペレーターほど時間が長くなる傾向にありますが、ベテランで応対時間が長い人がいる場合は、応対をモニタリングして、説明が回りくどくなっていないか、分かりにくい説明のため、お客さまから聞き返されていないかチェックする必要があります。

課題の発見には、ヒストグラムなどの分析を通じて、処理時間の遅いグループを割り出して個別に指導していくと効果的です。

※ヒストグラムの作り方は、当ブログの「【分析編4】ヒストグラムを使って改善ポイントの早期発見」(2019/03/03)を参照してください。