クラウドとオンプレの違いとは?クラウド/オンプレミスPBXの比較
ここ10年ほどの間に、企業のITシステムは急速にクラウドへと移行しています。
一方でオンプレミス型システムも根強く残っており、用途や役割に応じてクラウドとオンプレを使い分ける企業も少なくありません。コストと機能性のバランスが取れたコールセンターを構築するためには、クラウドとオンプレの違いや特性を理解しておくと良いでしょう。
ここでは、クラウドとオンプレの違いについてPBXを例に解説していきます。
目次
クラウドとはどのような概念?
まず、一般論として、クラウドとオンプレミスの概念などについて解説します。
クラウドとは何か?
クラウドの正式な名称は「クラウドコンピューティング」です。クラウドコンピューティングの語源は諸説あるものの、インターネットを「雲」に例える表現が一般化していたことから「雲=クラウド」の名称が用いられたと言われています。
よりシンプルで純粋な意味でのクラウドは「計算資源やソフトウェアを、インターネットを介して適宜利用すること」を指します。したがって、サービスとして利用する場合も、自社の資源をインターネットの向こう側に配置して利用する場合も、同じく「クラウド」になります。
以下は、クラウドの代表的な利用形態です。
- パブリッククラウド…自ら計算資源やソフトウェアを所有せず外部サービスとして利用する形態
- プライベートクラウド…ネットワークを挟み、自社資源や外部サービスを占有に近い状況で利用する形態
- マルチクラウド…複数のクラウドサービスを組み合わせて利用する形態
- ハイブリッドクラウド…オンプレミスと混合して使用する形態
また、このほかにも「クラウドから何を提供するか」によって次のような分類が可能です。
SaaS(Software as a Service)
クラウドを活用して「ソフトウェアを提供する」サービスです。機能そのものを利用するため、手元の端末にソフトウェア・アプリケーションをインストールする必要がありません。
また、使用によって作成されたデータもすべてクラウド上に保存される形式が一般的です。端末の種類や場所に依存しない作業が可能になるというメリットがあります。
PaaS(Platform as a Service)
クラウドを活用して「ソフトウェアやアプリケーションを動かす環境(Platform)を提供する」サービスです。本番環境のほか、開発環境やテスト環境として使用するケースが一般的です。
PaaSには、環境構築や維持にかかる手間とコストが削減できるほか、複数の環境を同時に維持しやすいというメリットもあります。
IaaS(Infrastructure as a Service)
クラウドを活用して、「情報システムの基盤となるネットワーク・ストレージ・サーバー(仮想マシン)のすべてを提供する」サービスです。ITインフラの構築には多大なコストを要するため、インフラ構築時のイニシャルコストを削減できるというメリットがあります。
クラウドサービスの中では最も提供範囲が広く、CPUやメモリ容量・OS・ミドルウェア・ネットワーク機器などもサービスの対象です。
オンプレミスとは?
オンプレミスとは「自社で計算資源やソフトウェアを保有/活用する」考え方の総称です。その語源は「店内で」「構内で」などを指す英単語「on-premise」だと言われています。オンプレミスという呼び名は、クラウドが本格的に普及し始めた2007年ごろから使われるようになりました。
その理由としては、クラウド登場以前はオンプレミスが当然であり、あえて概念化する必要がなかったことが挙げられます。
一般にクラウドと対比して、物理的な機器などの設備を必要とするシステムなどがオンプレミス型と呼ばれます。
クラウドとオンプレミスの違い
2者の決定的な違いは「計算資源とその設置場所を自社の手元に保有しているか否か」という点です。実際には「オンプレミス型のプライベートクラウド」などもあり、明確な違いを見つけにくい場合もありますが、概念的には上記のような理解で良いでしょう。
クラウド型PBXとオンプレミス型PBXの違い
近年はコールセンターシステムもクラウド化が進み、とくに電話システムの中心であったPBXはクラウド化が盛んです。そこで、PBXの視点からクラウドとオンプレを比較していきます。
クラウド型PBXの特徴
クラウド型PBXは、PBXが持つ機能をクラウドサービスとして提供するものです。IPを用いて音声通信を行う「IP-PBX」の発展版とも言えます。ハードウェアの調達が必要ないため短期間で導入することができます。また、数席~千席規模のコールセンターまで幅広く対応可能です。
さらに、相手番号に応じたコールフロー設定が可能な「着信ルーティング」や外部システムとのシームレスな連携を担う「API連携」が使えるなど、機能も豊富です。物理的な制限を受けないことから、分散型拠点やリモートワーク環境構築に強みを発揮するでしょう。
一般的にクラウド型PBXは、オンプレミス型よりもランニングコストが高いと言われることが多いです。しかし、機能追加や保守・メンテナンスにかかるコストを考慮すると、数年スパンではランニングコストが小さくなるケースも珍しくありません。
また、クラウド型PBXでは、随時リリースされる新しいバージョンにアップデートすることで、最新機能が利用できるというメリットがあります。
オンプレミス型PBXの特徴
オンプレミス型PBXは、自社内(構内)に置く「設備」のひとつです。PBX主装置の調達やネットワーク施設工事などが必須であり、こうした準備にかかるコストが高いという特徴があります。ただし、導入時のカスタマイズで自社独自の細かな業務要件に対応できたり、セキュリティ強度を高められたりといったメリットもあります。
また、連携対象の業務システムがオンプレミス型である場合は、クラウド型よりも連携しやすいことがあるようです。
クラウド型PBXとオンプレミス型PBXの比較
クラウド型PBXとオンプレミス型PBXの特徴を踏まえたうえで両者を比較すると、次のように整理することができます。
コスト
イニシャルコストはクラウド型PBX側に軍配があがります。ただし、ランニングコストは機能追加や設定変更、保守作業の頻度によって変化するため、どちらが優れているかはケースバイケースです。
スケーラビリティ
スケーラビリティについては、クラウド型PBXが優れています。これはPBXに限ったことではありません。同一の性質を持つシステムならばクラウド型のほうがスケールイン/アウト(スケールアップ/ダウン)しやすくなります。なぜなら、クラウドは契約変更やオプション契約で計算資源の「使用範囲・使用量」が容易にコントロールできるからです。
オンプレミスの場合は、スケールイン/アウト(スケールアップ/ダウン)に応じて、計算資源の増減や機種変更などが必要です。
外部連携
クラウド型PBXは、標準機能としてCRMやSFAといった主要な業務システムとの連携機能を持つものが多いです。こうした連携の結果、着信ポップアップやIVRなどの機能を手軽に利用できるようになります。
オンプレミス型PBXでも同様の機能は実現可能ですが、製品によっては連携部分の開発やカスタマイズなどが別途必要です。
まとめ
ここでは、クラウドとオンプレミスの概念を解説しつつ、PBXの比較も行いました。クラウド・オンプレミスともに特徴やメリットが異なるため、どちらが優れているかは判断しにくい側面があります。ただし、スピードや柔軟性、拡張性、BCPの面から見るとクラウド型PBXが有利かもしれません。
自社環境の変化に対応できるよう、必要に応じてクラウド型PBXへの移行を検討してみてはいかがでしょうか。
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