IVRとは?仕組みとメリット、コールセンターでの導入事例を解説
目次
はじめに
現代のコールセンターは、顧客満足度の向上がミッションとされています。丁寧な対応やスピーディな問題解決によって顧客満足度が高まるほど、自社商品やサービスの継続利用につながります。
一方で、窓口が分かれていたり、オペレーターの役割分担が決まっていたりするコールセンターでは、待ち時間が発生しやすく、顧客満足度の低下を招きがちです。
これを解決する方法としては「IVRの活用」が挙げられます。
IVRは省人化や業務効率化を後押しするばかりではなく、顧客満足度の向上も期待できる機能です。
ここでは、IVRの仕組みや解決できる課題・メリット、導入が向いているコールセンター、費用、選定ポイントなどを紹介します。
IVRとは?
IVR( Interactive Voice Response )とは「自動音声応答システム」のことで、あらかじめ設定した案内を自動音声で流す仕組みです。
IVRの基本的な動作は「着信 ⇒ 自動応答による音声ガイダンス ⇒ 音声ガイダンスに従ってプッシュボタンを操作 ⇒ 担当者・窓口に接続」という具合に、取次作業を自動化できるものとなっています。
以下は、IVRが活用されるシーンの一例です。
IVRの利用シーン
- 担当窓口への自動振り分け
製品やサービス、問い合わせ内容によって担当窓口が分かれている場合に、IVRによって自動的な振り分けを行います。「製品Aに関する問い合わせは2を、製品Bについては3を…」といった具合に複数のルートを設定できるため、より専門性の高い知識を持つ担当者へ自動的につなぐことができます。
- あふれ呼対策
担当者や窓口がすべて対応中の場合に「あふれ呼対策」としても利用可能です。
時間を置いてから掛けなおすことを促したり、折り返し連絡の予約を受け付けたりと、顧客の時間の浪費を防ぐことができます。
- 不在時の対応
離席や休暇などで電話に出ることが出来ない場合も、IVRでの自動応答が役立ちます。
メッセージの録音や営業時間内での掛けなおしを促す内容を案内することが可能です。
- 有人業務の一部無人化
IVRの案内にボタン操作や音声入力を含めることで、情報入力を促すこともできます。
各種情報照会や資料請求の受付など、定型作業の自動化・無人化にも役立ちます。
IVRにより解決できる課題と導入メリット
それでは、IVRを導入することでどのような課題を解決できるのでしょうか。導入メリットとともに以下で解説します。
リソース不足への対応
人材難や問い合わせ内容の複雑化・求められる対応の高度化などを背景に、コールセンターの業務負荷は日々増加する傾向にあります。
そのため、対応リソースの最適化がコールセンターの喫緊の課題となっています。
製品・サービスなどにより担当者が分かれているケースにおいては、問い合わせ内容に応じた取り次ぎが発生します。このような場合にIVRの自動振り分け機能を使うことで、スムーズな顧客対応が実現可能です。
「製品Aに関する問い合わせは1を、製品Bについては2を……」というように複数のルートを設定できるため、専門性の高い知識を持つなど、問い合わせ内容に適した担当者へ素早くつなぐことができます。
その結果、たらいまわしによる顧客満足度低下のリスクが軽減できるでしょう。
また、IVRの自動応答やガイダンスによる案内は、電話対応にかかる時間・人手の削減にも有効です。
案内時にボタン操作や音声入力を顧客に促すことで、情報の照会や資料請求といった定型業務の自動化・省力化も実現できます。IVRの設定によって入電フローが整理できるため、オペレーターは事前に顧客がどのような意図で電話をかけてきているかを知ることができ、スムーズな案内が可能になるのです。
あふれ呼対策・応答率の向上
IVRは、オペレーター全員が対応中の場合に発生する「あふれ呼」への対策としても効果的です。時間を置いてからかけ直すことを促したり、折り返し連絡の予約を受け付けたりして、顧客に時間を浪費させることを防ぎます。また、いつまでたっても電話がつながらないという不快感を顧客に与えずに済みます。
さらにIVRの活用により、定型的な内容であれば自動で対応することができるため、混雑時のリソース最適化につながり、結果として応答率の向上も見込めるでしょう。
営業時間外の対応
営業時間外や離席・休暇などで電話に出られないような場合にも、IVRでの自動応答が役立ちます。
メッセージの録音や、営業時間内のかけ直しを促す案内が可能です。また、自社WebサイトのFAQやチャットボットへの誘導などを行うこともできます。
IVRのデメリット
一方で、IVRにはデメリットも存在します。
顧客側に操作の手間を取らせてしまう
顧客側が操作を行うIVRは、手間と時間がかかるという理由からストレスを感じさせてしまうことがあります。
また、操作方法の説明や選択肢の読み上げが煩わしく感じる顧客も存在します。案内文はできるだけ簡潔にするなど、顧客にストレスを感じさせないような工夫が必要です。
担当者とつながるまでに、かえって時間がかかるケースもある
IVRでコールフローの階層や選択肢を多く作り、複雑な振り分けを実施すると、案内を聞く時間や操作時間が長くなります。
「いつまでたっても通話が開始できない」といった不満を顧客に抱かせてしまうと、満足度は低下してしまうでしょう。
そのため案内が複雑になりすぎないようバランスを取りつつ、いずれの選択肢の場合でも、できる限り1〜2階層ほどの短いコールフローで案内が完結できるように設計する必要があります。
「その他」の問い合わせが増える
IVRのシナリオ設計が不十分であると、顧客はどのボタンを選択すればよいかわからず、結局「その他」の選択肢を選んでしまいます。
これでは振り分けを行う効果を十分に得ることができないため、事前に問い合わせの多い内容を選別するなどして、案内すべき窓口が明確なものとなるようにシナリオを設計しましょう。
IVR導入が向いているコールセンター
IVRはコールセンター業務を効率化できるため、導入を検討している企業も多いでしょう。そこで、IVRの効果を得られやすいコールセンターの傾向を整理してみました。
窓口が複数あり細分化されているコールセンター
製品・サービス・問い合わせ内容ごとに窓口を分けているコールセンターは、IVRの導入で複数の効果が得られやすいでしょう。
まず、取次の手間が自動化されるため、細分化された窓口と問い合わせ内容のマッチングを判断する人手(一次受付)が不要になります。
さらに、仮に窓口が埋まっている場合でも、電話の掛けなおしや自動音声対応への誘導によって顧客に「次のアクション」を選択してもらえるようになるため、単純な待ち時間を減らすことが可能です。
24時間対応など営業時間が長いコールセンター
24時間問い合せを受け付けているコールセンターであれば、一部の問い合わせをIVRで自動化・無人化してみても良いかもしれません。
例えば深夜帯など、問い合わせ数が少ない時間帯の対応をIVRで行えば、余計な人件費をかけずにサービス品質を維持できます。
定型的な問い合わせが多いコールセンター
単純な問い合わせへの回答や案内など、半ば定型的な業務が常に発生しているコールセンターでも、IVRの導入がおすすめです。定型業務への対応をIVRに任せることで、複雑な問い合わせやクレーム対応に投下できる人的リソースが増加し、顧客満足度の向上が期待できるからです。
例えば、以下のような業務が該当します。
- 商品の注文対応において、商品の種類・数量・宛先などを受付する業務。
- 利用可能額・ポイント残高など、カード情報から各種残高を照会する業務。
こうした定型業務の削減は従業員満足度を向上させる要因でもあるため、ES対策としても有効です。
「音声認識×IVR」「API×IVR」で利便性が向上
これまでのIVRは「音声案内」と「プッシュボタン操作」による情報入力が主流でした。こうした従来型のIVRは、電話をかける顧客側に「音声案内を待っている時間がもったいない」「メニューに応じてボタンを押す手間が面倒だ」などのデメリットを感じさせてしまうことがあります。
また、電話システムと業務システムを連携させている場合、受付だけを自動化しても業務全体としての効率化が達成されないこともあります。
こうした従来型IVRの課題を解消するものとして、「音声認識」「API」と連携したIVRが登場していることをご存じでしょうか。音声認識やAPIを組み合わせたIVRであれば、これまでよりも顧客側に優しく、なおかつ柔軟な業務自動化が可能になります。
音声認識IVR
音声認識とIVRを組み合わせることで、「音声によってメニュー選択」が可能になります。ボタン操作の作業が音声入力ベースになることで、顧客側の労力を低減できるわけです。
また、ボタン操作だけでは難しかった「テキスト情報ベースでのコールフロー構築」も可能です。より具体的な情報をもとにコールフローを構築できるため、問い合わせ内容と接続先窓口とのマッチング度が上がり、顧客満足度の向上が見込めます。
さらに、オペレーターを介さない申し込み・解約作業が可能になるため、無人化対策としても有効です。
BIZTELでも音声認識を採用したIVRを提供しています。
API連携IVR
IVRと外部システムをAPI連携によって接続する機能です。コールセンター側の受付業務と業務システムを連結することで、システムをまたいだ自動化が可能になります。
例えば、予約システムと連携することで、「日時や人数を入力して予約受付 ⇒ 予約システムに登録し予約完了」といった業務が自動化されます。
また、受注システムと連携し、購入・解約手続きの対応など定型的な業務の自動化も進むでしょう。
アイディア次第で、さまざまな業務プロセスを効率化できるため、非常に柔軟性の高い仕組みです。
BIZTELでもAPI連携IVRの提供を開始しました。
具体的な事例はこちら
コールセンターにおけるIVRの導入事例
最後に、実際のIVR導入事例を紹介します。
タイムリーかつ緊急性の高い問い合わせへの対応
モバイル送金・決済サービスを提供するLINE Pay株式会社さまでは、物理カードの発行に伴い、電話窓口の開設を決定しました。この電話窓口において、IVRを活用しています。
IVRの導入によって「カード盗難・紛失」など緊急性の高い問い合わせに対しては、24時間対応が可能になりました。具体的には、IVRによる自動音声応答で決済サービスの利用停止方法を案内するなど、業務の無人化を達成しています。
また、クレジットカード会社のシステムトラブル発生時にも、状況に応じてアナウンス内容を変更できるようになったとのことです。
LINE Payさまの事例はこちらから
導入費用
それでは、IVRの導入にはどの程度の費用が必要なのでしょうか。
IVRは基本的にコールセンターシステムの機能のひとつとして提供されるため、ここではクラウド型コールセンターシステム・BIZTELで提供しているIVR機能を例に紹介します。
BIZTELではIVRが標準機能として利用できます。そのためサービスの基本料金以外には費用が発生しません。ダイヤルボタンで問い合わせ内容を選択して着信を振り分けたり、回線の混雑時や営業時間外での着信に自動案内ガイダンスを流したりといったことが標準機能の範囲で実現します。
その他にも、有償オプションとして音声認識IVRとAPI連携IVRを提供しています。
音声認識IVRでは、ダイヤルボタンの押下ではなく音声での入力操作が可能になります。より複雑な情報が入力でき、またオペレーターを介さずに自動処理できる幅も広がります。こちらの機能は初期費用50,000円〜、月間利用料20,000円〜※です。
※別途、API連携IVRのオプションおよび連携する音声認識サービスの契約が必要です。
API連携IVRでは、顧客が入力した情報を外部システムへ連携し、予約受付や受注・解約といった手続きを行うことが可能です。初期費用100,000円〜、月間利用料40,000円〜で利用できます。
システムの選定ポイント
以下では、IVRを導入する際に留意するべきポイントについて解説します。
導入目的・利用方法の整理
IVRを導入する際は、当然ながら「どのような目的で」「どのような業務に」利用するのかを事前に整理しておかなければなりません。
たとえば、「IVRの基本機能である振り分け機能さえあればよいのか」「時間外や混雑時のガイダンス設定などは必要か」「より高度な運用ができるよう音声認識AIと外部連携をする必要があるか」など、要件に沿って各社が提供するシステムの機能を比較検討すべきでしょう。
導入形態
前述した通り、IVRはコールセンターシステムと一体になっていることがほとんどです。コールセンターシステムは、主にオンプレミス型とクラウド型の2つがあります。
オンプレミス型は自社の業務要件に合わせて細かく柔軟なカスタマイズが可能ですが、一方でPBX機器やサーバー・回線の用意が必要であるため、コストが高くなりがちです。また、導入までの期間が長くなる傾向にあります。
クラウド型は、契約から短期間で利用が開始できる点がメリットです。また、プランの変更も柔軟かつ素早く実施できます。一方で、オンプレミス型ほど細やかなカスタマイズができないというデメリットがあります。
料金形態
特にクラウド型においては、利用する機能や回線数などによって料金形態が異なるケースが多いです。またサービスによっては、特定の機能を利用する際にオプション料金が発生します。
自社が現時点で必要としている機能やスペックはもちろんのこと、将来的な拡張も見越してサービスを選定するとよいでしょう。
設定変更の難易度
IVRによる振り分け内容や自動対応音声などは、コールセンターの運営状況が変化するたびに変更していく必要があります。IVRの設定作業が現場で容易に行えるかどうかは、選定の上で押さえておくべきポイントといえます。
まとめ
ここでは、IVRの特徴、音声認識やAPI連携による新しい機能、選定のポイントなどを紹介してきました。
IVRは単なる自動応答や転送だけに対応する機能ではありません。予約率改善や緊急性の高い問い合わせへの対応など、顧客満足度に直結しやすい分野でも活用できます。
また、音声認識やAPI連携の活用により、より複雑な業務の自動化にも応用できるようになりました。
顧客満足度向上と無人化・省人化などを両立させたい場合は、多機能なIVRの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※IVRについてもっと知る