2019.07.31
2022.02.18

応対品質管理をやってみよう(第3回)

このシリーズの過去の記事はこちら
*【KPI】とっても大事な応対品質。管理するコツとは?
*応対品質管理をやってみよう(第1回)
*応対品質管理をやってみよう(第2回)

「さあ、次回は具体的に指標づくりを考えてみましょう。」

...と前回、言ったものの、さっそく壁にぶち当たることになりました。

今回はその悪戦苦闘の過程をさらけ出すことで、どういう指標が望ましいのか皆さんと考えていきましょう。

応対品質チェック表の考え方

応対チェック表は縦軸横軸で構成します。

縦軸はチェックする項目を、横軸にはその項目の規準を点数別に決めていきます。

縦軸

話し方聴き方解決度合いといった項目を決めます。
各項目はさらに細かく分けていく場合があります。
選択する項目は、企業がオペレーターに何を望むのかになります。
どのように望むのかというレベルは横軸の規準になります。

※作成のポイント

油断するとあれもこれも入れたくなります。
しかしながら、項目が増えれば増えるほど、一度のモニタリングでチェックしきれず、何度も聞き返すことになり、膨大な工数につながるばかりか、結果的にやらなくなってしまいがちです。

いくつの項目数が適切なのかについて、まだ明確な正解例はありません。
一般的には15~20項目1件のチェックに1時間以内を想定している企業が多いようです。

何が必要かで考えると項目数が増えてしまうので、逆に1件にどの程度の工数をかけるかで縛りを入れ、因子の優先順位をつけて取捨選択することも有効です。

横軸

横軸にはそれぞれの項目の採点レベルを具体的に決めていきます。
例えば話し方について、どのような話し方であれば4点で、3点との違いは何なのか明確にします。
基準について、これまでは5段階評価が一般的でしたが、これでは3点ばかりになりやすい欠点があり、現在は4段階評価が増えてきました。
今回は4段階評価で考えていきます。

※作成のポイント

応対品質管理で多くの企業が苦労しているのがこの基準です。
その原因は説明の“曖昧さ”で、例えば「謝辞を適切に言えている」という場合、この“適切”とはどのようであれば適切なのか、チェック担当者によって基準がぶれます。
またチェックされる人にとっても分かりにくいものになってしまいます。

理想は、誰がチェックしても同じ判定ができるほど具体的であることです。
しかし、言ったか言わなかったか、やったかやらなかったかは簡単に判定できるものの、感性的な項目(信頼感、お客さま優先など)になると、その基準作りは難しくなり、最終的にはチェック担当者の感度が問われます。

縦軸と横軸ができたら、総合点の配点ウエイトを決めます。
複数ある項目は重要度において異なり、例えば「応対マナー」と「解決度合い」があれば、当然ながら「解決度合い」の比重が高くあるべきです。
このように、各項目に配点ウエイトをつけ、基準点と掛け合わすことで総合点を出します

現状のチェック表の課題と目指す方向性

さて具体的に項目を考えていきましょう、というところで課題が出てきました。
多くの事例を見ていくと、「お客さまに配慮する言葉を投げかけている」、「わかりやすい説明ができている」など、多くの項目が企業視点で作られており、オペレーターの行動にフォーカスしています。

しかし、ちょっと待ってください。

コールセンター業界は今や、カスタマー・エクスペリエンス(CX)の時代に突入しました。
CXとは一人ひとりの顧客体験を向上していこうというものです。
またNPSに代表されるように、顧客の推薦意向が顧客満足よりも重要視される時代になってきました。
CXやNPSに共通するものは、“顧客の気持ち”が最優先ということです。

これを考えるなら、従来の企業視点の応対評価の仕組みは、顧客視点の仕組みに刷新する時期に来たのではないでしょうか。
例えば「わかりやすい説明ができている」について、それはあくまで企業側(チェック者)の視点で、実際にお客さまが分かってくれたかは曖昧です。

それでは顧客視点で考えるならどうなるのでしょうか。
もし「わかりやすい説明ができている」ならば、お客さまは一度の説明で理解できたはずですね。
当然ながら聞き返すことはありません。また説明に納得したリアクションをするはずです。

さらに「わかりやすい説明ができている」ためには、話の構成が簡潔であること、話し方においても、話すスピードや明瞭な発声も影響するはずです。
そうなると、従来型の「話し方」の枠に収まっていた因子もひとくくりするのが難しくなります。

そうなると、まず顧客視点で大項目を洗い出し、次にそれらを構成する要因を小項目で選択する作業が必要になります。
これまでの発想の逆転が求められます。

実はここで構成作りに苦戦しています。
それでは、現在どのように考えを進めているか経過を書きだすので、皆さんも一緒に考えてみてください。

顧客視点で考えてみる

それでは、オペレーターにフォーカスした項目を顧客視点で見た場合はどのよう考えるといいのでしょうか。
そのためには、お客さまの反応から考えてみる必要がありそうです。

この前提として、まず顧客について振り返ってみましょう。

まずグッドマン理論分析における日本の第一人者、故佐藤知恭氏は「顧客を維持する前提条件」について2点あげています。
①顧客が満足し、感動すること。
②売り手と買い手の信頼関係。

そして当ブログでの第2回目、第2章「顧客の不満や要望の整理」で導き出した結論、
①要求を正しく理解し、
②解決のアプローチを適切な手段で、
③かつ速やかに、
④顧客の要望が確実に達成される。

これらを踏まえて、5つの大分類を想定しました。

①顧客の要求を正しく理解する。

■必要な要素
オペレーターの理解力(洞察力)、聴き方、オペレーターの知識量など。

■想定される事例
「お客さまが何度も説明することなく、一度の説明で済んだ。」
「お客さまの言葉の裏にある意図を、オペレーターは察知できた。」
「相槌や復唱を交え、お客さまが話しやすい状況を作った。」
「お客さまの曖昧な理解や説明をオペレーターがうまく誘導し、お客さまが伝えたい意図を表現できた。」
など。

②適切な手段で解決のアプローチをとる。

■必要な要素
オペレーターの知識量と質、回答の正確さ、適切さ、話し方など。

■想定される事例
「お客さまはオペレーターの説明を一度の説明で理解できた。」
「お客さまの欲しい回答が、真っ先に得られた。」
「会社のルールを順守して対応するオペレーターをお客さまも受け入れた。」
「オペレーターの聞き取り易い話し方(スピード、抑揚、滑舌、構成の簡潔さなど)により、お客さまから聞き返されることが無かった。」
「お客さまとオペレーターの円滑なコミュニケーションのキャッチボールが、お客さまの理解力を高めた。」
など。

③速やかに対応する。

■必要な要素
保留時間・回数、解決度、解決にかかる時間など。

■想定される事例
「オペレーターは不明点を確認するための保留なく対応した。」
「保留明けのお客さまは、待ち疲れのようなストレスを表明しなかった。」
「お客さまから、回答や解決を促すような言動がなかった。」
など。

④お客さまの要望を確実に達成する。

■必要な要素
オペレーターの知識量と質、回答の適切さ、解決力など。

■想定される事例
「お客さまはオペレーターの対応に満足した。」
「お客さまの質問全ての回答に、お客さまが納得した。」
「お客さまの状況に合わせた配慮に、お客さまから感謝の表明があった。」
「対応が完全で、お客さまが同じ用件で再度電話をかけてくることはない。」
など。

⑤お客さまと良好な関係を築く。

■必要な要素
お客さまに関心を示す、敬意、第一声、クロージング、受け止め、不満や不安の対応力、利用意向、無用なセールスをしないなど。

■想定される事例
「オペレーターの真剣な姿勢がお客さまを落ち着かせている。」
「お客さまの話を遮らず、復唱や相槌を伴い、話しやすい状況をオペレーターが作っている。」
「お客さまの感情をオペレーターがしっかりと共感し受け止めている。」
「お客さまがオペレーターの対応に満足し、利用意欲を高める言動が見られた。」
「お客さまがストレスや不満を表明しなかった。」
など。

難しいですね。
お客さまを主語で作ろうとしても、オペレーターが主語になるケースが出てきます。

さらに5つの中でボリュームが大きくなりそうなのが、「➄お客さまと良好な関係を築く。」です。
しかもここは感性的な面が強く、これを誰もが同じ判定ができるまでブレイクダウンするのは、非常に困難な作業になりそうです。

しかしながら、ここまで作業して気づいたことは、①から④までを考えてみれば、全て➄の下位に含まれるかもしれないということです。
そうなると、応対品質チェックは、“お客さまとの良好な関係を築くための応対ができているのか?”が全てなのかもしれません。

それでは、今の応対品質管理の仕組みは果たしてそうなっているのか、オペレーターの言動にフォーカスしすぎて、結果的にマニュアル対応のロボット・オペレーターを作り出していないか不安になります。

さて、これをたたき台に、次回は本気で項目を考えてみましょう。

→「応対品質管理をやってみよう(第4回)