応対品質管理をやってみよう(第4回)
このシリーズの過去の記事はこちら
*【KPI】とっても大事な応対品質。管理するコツとは?
*応対品質管理をやってみよう(第1回)
*応対品質管理をやってみよう(第2回)
*応対品質管理をやってみよう(第3回)
さあ、今回から具体的に応対品質管理表を作っていきましょう。
今回は縦軸の評価項目を、次回は横軸の評価基準で進めていきます。
目次
評価項目の考え方
これまで進めてきた、顧客視点で整理した5つの観点で項目を作ります。
- 顧客の要求を正しく理解する。
- 適切な手段で解決のアプローチをとる。
- 速やかに対応する。
- お客さまの要望を確実に達成する。
- お客さまと良好な関係を築く。
作業の進め方
- まず顧客視点、オペレーター視点での事象を思いつくだけ書き出す。
- 次に書き出した事象が上記5つの観点のどれに属するのか分類していく。
- 分類したものを、観点の意図に沿うようにカテゴリ別にさらに分類する。
- カテゴリを項目として文章化する(評価項目の完成)
※項目はこの時点ではまだ曖昧でも構いません。横軸の評価基準でこの項目を1~4のレベルでさらに具体化します。
これまでの評価項目との違い
1.視点の違い
これまで各社の評価チェックシートを多く見てきました。
また自分もそれらと同じようなチェックシートを使ってオペレーターをモニタリングして評価してきました。
その中で気づいた点は、「オペレーターの挙動にフォーカスしすぎている」ことです。
確かにオペレーターの評価をする以上、オペレーターの挙動に目が行きますが一方で、「お客さまの反応」も同じかそれ以上に重要ではないかと考えました。
さらにオペレーターの挙動にフォーカスしすぎると、「オペレーターは表面的なテクニックに走りがち」という点も見受けられました。
そのため、具体的な事象をあげて重要ポイントを明確にすることにしました。
2.様々な要因が含まれる項目は、分かりやすく分散させる。
ひとつの項目でも、様々な要因が含まれているものがあります。
例えば「話し方」について、ほとんどのコールセンターではひとつの項目として取り扱っているかと思います。
しかし「話し方」には、適切な手段で解決のアプローチをとるための話し方(スピード、滑舌、話し癖など)もあれば、速やかに対応するための話し方(簡潔など)、お客さまと良好な関係を気づくための話し方(声のトーン、謝辞、敬語など)と様々です。
ひとつの項目に押し込むことで評価者が評価に悩む要因のひとつではないかと考え、これらを分散することにしました。
それによって、同じような内容が複数出てくることもあります。
以上の手順で、項目を作っていきましょう。
以下、分かりやすく説明するため、前述した【作業の進め方】の2から解説します。
顧客の要求を正しく理解する
考えられる事象例
- お客さまの一度の説明でオペレーターは正しく理解できた。
- お客さまの意図をオペレーターは把握できた。
- お客さまが何度も説明したり、言い換えたりする必要が無かった。
- お客さまの話を遮らず、最後までしっかりと聴いていた。
- オペレーターはオープン/クローズ質問を、効果的に使い分けて話を聴いていた。
- お互いのミスを防ぐための復唱ができていた。
カテゴリに分類
顧客の要求をオペレーターが理解したかどうかを図る「理解力」があげられます。
ここでの重要ポイントは理解の度合いであり、一般的に自分の本音までさらす人は少なく、多くの人は遠回しな言い方で、本音は言葉に表れにくいですね。
今風にいうなら、“忖度”することを相手に求めがちなのが日本人ではないでしょうか。
そこまで読み取れたかどうかを判断します。
もう一点は、お客さまが正しく要求を伝えるには、オペレーターの「聴き方」のテクニックが必要になります。
はっきりと自分の意思を伝えられるお客さまもいれば、そうでないお客さまもいらっしゃいます。
特に後者のお客さまの場合、オペレーターが積極的に話をリードしたり、話を整理したりしてお客さまをサポートできていたかを判断します。
項目に書き出し
事象、観点、カテゴリを踏まえ、項目を以下のようにしました。
理解力:
お客さまの意図を、オペレーターは正しく理解した。
聴き方:
オペレーターの適切なサポートで、お客さまは要望を正しく伝えられた。
適切な手段で解決のアプローチをとる
考えられる事象例
- オペレーターは結論を先に話し、次いで詳細の説明をした。
- お客さまの要望に応えるため、オペレーターは最短の手法で応対した。
- 選択場面では、お客さまの気持ちや考えを優先して進められた。
- オペレーターは会社のルールを順守して応対した。
- オペレーターは独断で判断せず、必要に応じて管理者に確認していた。
- ルール通りの適切なクロージングだった。
- オペレーターは、お客さまが聞き取り易いスピードで話していた。
- 専門用語や社内用語を避け、お客さまに分かりやすい言葉でオペレーター話した。
- お客さまから聞き返されることはなかった。
カテゴリに分類
ここでは3つのカテゴリが考えられました。
一つ目は、「応対手順」の適切さです。
お客さまが知りたい事中心の応対だったか、お客さまより会社都合優先でなかったか判断します。
二つ目は、「ルール順守」の適切さです。
すべての組織には、守るべき手順やルールが存在します。
また業種によって法令順守が義務付けられているものも存在します。
それらのルールに沿った応対であったか判断します。
三つめは、「話し方」の適切さです。
お客さまの要望の解決に向けてオペレーターの声や話し方が聞きづらいと、お客さまは理解できず、間違った処理につながりかねません。
ここではオペレーターの話し方のテクニックを判断します。
項目に書き出し
応対手順:
お客さまが知りたいこと中心のオペレーターの応対だった。
ルール順守:
オペレーターは会社のルールと正しい手順で応対した。
話し方:
オペレーターの聞き取りやすい話し方で、お客さまは理解しやすかった。
速やかに対応する
考えられる事象例
・オペレーターの保留時間は適切だった。
・お客さまの問題の解決までにかかった時間は妥当だった。
・お客さまから、回答や対応を急かされることはなかった。
・お客さまから、同じ説明や質問が何度もされることはなかった。
・オペレーターの説明は簡潔で、回りくどくなかった。
・オペレーターは迅速に処理・応対していた。
カテゴリに分類
「速やかに」となると、一般的に処理時間や保留時間・回数など数値に目がいきがちですが、もうひとつお客さまがストレスを感じることなく、オペレーターの応対がスピーディーに行われたかどうかが重要であると考えました。
一つ目は、「かかった時間」の速やかさです。
ここでは保留や転送といった中断や処理時間が妥当だったか判断します。
二つ目は、「応対の効率性」における速やかさです。
オペレーターの説明は回りくどくなかったか、やり直しはなかったか、テキパキと応対していたかを判断します。
項目に書き出し
かかった時間:
オペレーターは最小限の中断と適切な応対時間であり、お客さまの不満は表れなかった。
応対の効率性:
オペレーターは簡潔な説明やテキパキした応対で、お客さまがストレスを感じている様子は見受けられなかった。
お客さまの要望を確実に達成する
考えられる事象例
・オペレーターはお客さまへ正確な情報を伝えた。
・オペレーターの応対や処理は正しく行われた。
・問題解決のための最適な回答をお客さまは得られた。
・お客さまの質問や問題はすべて解決した。
・オペレーターの回答は、情報量・質ともに十分だった。
・問題の再発防止策をオペレーターが応対、または助言した。
・オペレーターの自己中心的な応対でなかった(過剰・無関係な情報提供など)。
・お客さまから気持ちのこもった安心、安堵、喜びの感情表現が見られた。
・オペレーターの応対にお客さまは満足し、利用意向を示していた。
カテゴリに分類
ここでは3つのカテゴリが考えられました。
一つ目は、「正確性」です。
回答や処理の正確さや妥当性を判断します。
二つ目は、「完全性」です。
オペレーターの応対内容が質と量の両面において十分だったか判断します。
三つめは、「満足度」です。
お客さまの要望が確実に達成されたかどうかを判断するには、お客さまの反応から判断するのが妥当ではないかと考えました。
ただし、横軸の判断基準を考えるとき、評価者のスキルや感性が問われてしまう項目になります。
項目に書き出し
正確性:
お客さまはオペレーターから正しい情報を得られ、要望は正しく処理された。
完全性:
お客さまの目的はすべて達成され、同じ事案で再び連絡する必要が無かった。
満足度:
オペレーターの応対は、お客様を満足させるに十分であり、お客さまから好意的な反応が見られた。
お客さまと良好な関係を築く
考えられる事象例
- 発声が明るいトーンで、オペレーターは友好的な雰囲気を作っていた。
- オペレーターはお客さまの話したい気持ちを受け止め、聞き役に徹していた。
- 復唱や相槌を使い、オペレーターはお客さまの話を理解していることを示していた。
- お客さまの感情に合わせたオペレーターの声のトーンから、真剣さが伝わった。
- オペレーターは共感と謝辞を使い、お客さまを受け入れる姿勢を示していた。
- お客さまの不満にも、オペレーターは感情的にならず、辛抱強く応対した。
- オペレーターの適切な敬語を使えていた。
- オペレーターの言葉やトーンに、人を馬鹿にしたようなものが無かった。
- オペレーターは終始、お客さまに対し謙虚な姿勢で親切に応対しようとしていた。
- オペレーター最後に感謝の気持ちを伝えて切電した。
カテゴリに分類
ここは顧客応対における、もっとも重要なポイントになります。
したがってカテゴリは5つ出来ました。
一つ目は、「話しやすさ」です。
お客さまが話しやすいよう、オペレーターは努めて穏やかに、お客さまとの積極的な会話になる雰囲気づくりに努めていたか判断します。
二つ目は、「関心を示す」です。
オペレーターが積極的にお客さまの話を聴く姿勢を見せていたか判断します。
三つめは、「受け入れる」です。
一般的に言われる共感姿勢がオペレーターにあったか、たとえ苦情であってもお客さまに寄り添う姿勢を保ち続けたか判断します。
四つ目は、「敬意」です。
お客さまはいつも、自分が大切な客として扱われているかどうかを気にします。オペレーターの姿勢や言葉遣いに、その点が表れていたか判断します。
最後は、「サービスマインド」です。
顧客窓口としての義務を果たしているのか、オペレーターの前向きな姿勢がお客さまに伝わっているのか判断します。
以上を一覧表にまとめてみました
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評価項目はひとつのモデルでしかない
上記で作成した評価項目は、皆さんのコールセンターでの評価項目を考えるうえでの、ひとつのサンプルとして提示させてもらいました。
業種や皆さんの職場事情によって、重要視するポイントやウエイトは異なると思います。
上記の考え方をもとに、皆さんのコールセンターでも自身の評価項目を作ってみてください。
さて次回は各項目に対する、横軸の評価基準を作っていきましょう。
こちらの方の難易度が高いです。