2019.10.03
2021.12.14

応対品質管理をやってみよう(第5回)

このシリーズの過去の記事はこちら
*【KPI】とっても大事な応対品質。管理するコツとは?
*応対品質管理をやってみよう(第1回)
*応対品質管理をやってみよう(第2回)
*応対品質管理をやってみよう(第3回)
*応対品質管理をやってみよう(第4回)

今回から前回作成した縦軸に対し、横軸を作っていきましょう。
横軸とは、それぞれの評価項目の基準のことを指します。

応対チェックでは、縦軸の項目に対し評価されるオペレーターが基準1~4のどのレベルにあるのか判断して得点をつけていきます。

この評価基準の作成が、応対品質の仕組みづくりの中で最も難しいものになります。
そこで、そのポイントについてじっくりと考えていきましょう。

評価基準の考え方

縦軸で作った評価項目に対し、その到達度を1~4段階で配点していきます。
そのポイントは3つあります。

①最初に4段階の基本方針を決める

複数ある評価項目の評価レベルがぶれてしまうと、例えばAの項目は基準3の難易度が高く、Bの項目は基準2の難易度が高いとなると、A項目とB項目の基準3の重みが異なってしまいます。
これでは、最終的に評価結果をレーダーチャートなどで表した際に、いびつな形になり、スキルレベルの状態を正しく理解しにくくなります。

そこで、4段階がどの水準のことを指すのか、最初に定義することで、レベルのばらつきを防ぎます
またこの定義によって、それぞれの評価基準を作りやすくなります。
ここでは事例として以下のように定義します。

基準1
オペレーターの応対スキルとして不合格レベル。オペレーターとしてデビューまたは業務遂行不可。フォローアップが必須。

基準2
オペレーターが業務遂行する上で最低限の要件。この水準をすべてクリアしたオペレーターのみ業務遂行可。新人のデビュー要件。

基準3
会社が考える顧客応対力として求める応対品質レベル。デビューして1年以内の到達を目指す。正社員の場合は人事評価のプラス要因。派遣社員等の場合は、処遇や契約更新への考慮要因。

基準4
会社が期待する顧客応対力であり、顧客満足度向上に強く影響するレベル。デビューして3年以内の到達を目指す。2年目以降のベテランに求める水準。昇格や昇給へのプラス要因。

②評価基準内容は、客観的に判断できるようブレイクダウンする

応対品質のチェックは複数の管理者が実施するケースが一般的です。
そのチェック者の判断基準を一致させることがとても重要で、そのため、誰が判断しても同じ結果を出せるよう、基準内容を具体化させることが必要です。

また応対チェック者が一人であっても、チェックされるオペレーターにフィードバックする場合、オペレーターにもなぜ自分の評価点がそれなのか理解してもらうには、より具体的である必要があります。
したがって「概ね」、「ある程度」、「ほとんど」といった曖昧な言葉は人によって解釈が異なるので避けなければなりません

一番良いのは数値化できることです。これなら判断がぶれることはありません。
しかし、評価項目には感性的な要素が含まれることが多く、全てを客観化することが困難です。
ここが評価基準を作成する一番の難しさです。
それを避ける方法として、評価基準内容を具体的なケースで記載したり、複数記載したりするほかに、作成後に評価者同士で基準合わせ(カリブレーション)することが必須です。

カリブレーションとは、実際の音声を聴きながら各自が採点し、点数が異なった箇所について、お互いに意見をすり合わせる行為のことを指します。
これを何度か繰り返すことで、お互いの解釈のブレを修正することができます。
会社によっては評価点1~4の基準テープを作成し、その音声を聴きながら修正するという方法もあります。

③4つの評価基準のバランスを均等に

これまで見てきた多くの企業の評価基準の課題はまさにここです。
普通に100点満点で考えるなら、4段階はそれぞれ25点間隔であるべきです。

評価基準1:1~24点
評価基準2:25~49点
評価基準3:50~79点
評価基準4:80~100点

しかしながら、多くの企業の評価基準は2のウエイトが多く、4のオペレーターが異常に少ないというのが一般的です。
これを評価点で表現すると、こんな感じです。

評価基準1:1~24点
評価基準2:25~70点
評価基準3:71~90点
評価基準4:91~100点

まるで評価基準4が、誰も到達しえない未知の領域のようです。
これは多少大げさかもしれませんが、これに近いところは多いのではないでしょうか。
ここで大事になるのが最初に上げた「①最初に4段階の基本方針を決める」です。
これにより、このアンバランスさを防げます

以上の3点に注意して、早速やってみましょう。

「顧客の要求を正しく理解する」の評価基準作成

前回の評価項目作成では、2つのカテゴリができました。
理解力」と「聴き方」です。
まずは「理解力」から作ってみましょう。

①理解力:お客さまの意図を、オペレーターは正しく理解した

ここで問われるのは、
「お客様の要望を正しく理解できたのか、できなかったのか。」
「お客さまの言葉の裏にある意図や期待をつかめたのか、つかめなかったのか。」
「顧客の意図の理解に時間がかかったのか、かからなかったのか。」
「正しく理解するために、オペレーター自身が主導的にアプローチしたのか、しなかったのか」
以上の4点を評価基準1~4に反映させます。

考え方としてまず、「正しく理解したか、しなかったか」が評価の決定的なポイントになるので、それを評価基準1(不合格)と2(最低限の合格)に反映させます。

次に「理解するまでにかかったスピードやプロセス」は経験やスキルに影響するので、これを、評価基準2~4に反映させます。

以上を踏まえて評価基準を作成すると以下のように考えられます。

(評価基準1)
・オペレーターが誤解して間違った応対につながった。
・オペレーターが正しく理解するまでに、お客さまが説明に工夫を何度もしなければならなかった。

(評価基準2)
・お客様の要望を、最終的には正しく理解できた。
・お客さまの説明が明快で、オペレーターは容易に要望を正しく理解できた。

(評価基準3)
・表明した要望については一度の説明で理解できた。
・オペレーターの適切な質問や誘導で、お客さまが何を期待するのか明確にした。

(評価基準4)
・お客さまの言葉に表れない意図まで素早く把握できた。
・お客さまの感情をよく観察し、先回りしてお客さまの要望や期待をつかんだ。

②聴き方:オペレーターの適切なサポートで、お客さまは要望を正しく伝えられた

ここで問われるのは、
「オペレーターの相槌や復唱、共感がお客さまの話を促す効果をあげているか、いないか。」
「オペレーターの聴き方のテクニックが自然にできているか、まだぎこちないか。」
「オペレーターがお客さまの話を遮らず、しっかりと待てているかいないか。」
「オペレーターの聴く姿勢がお客さまを安心させているのか、不安にさせているのか。」
以上の4点を評価基準1~4に反映させます。

考え方としてまず、「相槌や復唱、共感といった基本的な聴くテクニックをオペレーターが駆使しているか。」、「相手の話を遮らずに聴けているのか。」が評価の決定的なポイントになるので、それを評価基準1(不合格)と2(最低限の合格)に反映させます。

次に「その『聴く姿勢』がどのレベルまでできているのか。」は経験やスキルに影響するので、これを、評価基準2~4に反映させます。

以上を踏まえて評価基準を作成すると以下のように考えられます。

(評価基準1)
・オペレーターの反応が鈍く、お客さまが不安を感じていた。
・お客さまの話を遮り話すことがしばしば見られ、お客様はストレスや不満を感じていた。

(評価基準2)
・オペレーターは確認や復唱しながら話を聴いているものの、まだ儀礼的な域に留まる。
・お客さまの話を最後まで聴こうという姿勢はあるものの、話の被りや遮りがみられた。

(評価基準3)
・オペレーターの自然で要所をついた質問や復唱が、お客さまとの意思疎通を円滑に導いた。
・お客さまの話を遮らず、最後までしっかりと聴いていた。

(評価基準4)
・オペレーターの自信を持った態度がお客さまを安心させていた。
・オペレーターの相槌や共感、間の取り方が絶妙で、お客さまは気持ちよく話せていた。

以上、最初の項目で作ってみましたが、客観的な面よりも感性的な面がありますね。
内容をもう少しブレイクダウンするか、基準内容を増やす必要があるかもしれません。

次回は、残りの項目の基準を考えていきますが、皆さんも第4回の評価項目一覧表をもとに考えてみてはいかがでしょうか