2020.08.28
2022.11.09

クラウドPBXのメリットとデメリット、比較ポイントを徹底解説

PBXは、企業内において、外線と内線のシームレスな交換・接続のために用いられてきました。現在では、電話回線を中心とした従来型のPBXから、インターネットプロトコルを活用したIP-PBXへ、さらにクラウド上から機能を提供するクラウドPBXへと進化しています。

クラウドPBXであれば、高額なメンテナンス・保守費用を大幅に削減しつつ、柔軟性の高い電話システムの構築が可能です。ただし、選定時には注意しなければならないポイントが存在します。クラウドPBXを導入する際は、メリット・デメリットの両面を把握し、自社にマッチすることを確認しつつ導入を進めるべきでしょう。

ここでは、クラウドPBXのメリットや注意点、比較ポイントなどを紹介します。

クラウドPBXとは?

まず、PBXクラウドPBXについて簡単に解説します。

PBXとは

PBXとは「Private Branch eXchange(構内交換機)」の頭文字をとった略称で、「外線を複数の内線端末に接続したり、外線を経由せずに内線同士を接続したりできるシステム」を指しています。最小限の公衆電話回線で社内電話網が構築でき、さらに内線同士の通話コストがゼロにできる仕組みとして重宝されてきました。

従来、PBXはオンプレミスでの提供が主流であり、高額な導入・メンテナンス費用が拠点の数だけ発生し、かつ、電話回線の敷設や固定電話機の設置が必要なことなどから、コストが嵩みがちになるという問題を抱えていました。こういった課題を解決するために生まれたのが、クラウドPBXです。

クラウドPBXとは

クラウドPBXは、PBXが提供する内線・外線間の接続・交換機能を、クラウド上から提供するサービスです。電話回線を使ったオンプレミス型PBXでは、オフィス構内にPBXを設置する必要があり、物理的なスペースの確保や設置・メンテナンスコストなどが企業の負担になっていました。一方、クラウドPBXでは、インターネット回線さえあればクラウド上からPBX機能が利用できます。物理的な機器や設置スペースの調達・工事などが不要なため、安価かつ短期間で電話網が構築できます。

オンプレミス型からクラウドPBXに移行する企業は年々増え続けており、今後はクラウドがスタンダードになると見られています。 

クラウドPBXのメリットと注意点

ここでは、クラウドPBXのメリットと導入にあたっての注意点について、具体的に解説します。

メリット

  • 低コストで導入可能

クラウドPBXは、前述したように物理的な投資(PBX本体や電話機の購入・設置など)が必要ないことから、導入コストを大きく抑えることができます。そのため、少ない席数のコールセンターでも気軽に導入することが可能です。

ちなみに、「オンプレミス型は初期費用こそ高いが、長期的に利用すれば毎月利用料を支払うクラウド型の方がトータルでは高い」という見方をされることがあります。しかし、クラウドPBXでは、保守期限切れに伴うシステム更改やメンテナンス・設定変更にかかるコストを削減できることから、5年~10年の中長期的なスパンで試算した場合で比較しても割安になるケースがあり、一概に言い切ることはできません。

クラウドPBXにおいてどれだけのコストが必要になるかは、運用の方法や規模、オプションの有無などによって異なります。そのため、クラウドPBXの導入を検討する際には、自社の要件をもとに料金のシミュレーションを行うことをおすすめします。

  • 短納期で導入可能

クラウドサービスという特性上、サーバーなどの準備が不要であり、インターネットとPCがあれば電話環境が構築できるクラウドPBXは、導入が容易といえるでしょう。これまでは、PBXを導入するためにはPBXの設置やオフィス内の回線敷設などで工事が必要でしたが、クラウドPBXであれば工事不要で導入できます。これにより導入までの期間の大幅な短縮が実現します。

  • 常に最新の状態を保てる

クラウドPBXでは、ソフトウェアなどが自動でアップデートされるため、機能面の不足や保守対応にかかる手間が感じにくいというメリットがあります。

  • 場所に縛られない運用が実現

クラウドPBXは物理的な制限を受けず、複数の拠点で共用することができるため、離れた場所にあるコールセンター同士を統合的に運用・管理することができます。このようなクラウドPBXの特性は、在宅勤務のように場所を問わない働き方の実現に大いに役立ちます。

具体的には、国に点在するテレワーク人材をクラウドPBXによって接続し、コールセンターのメンバーとしてアサインすることで、出勤・転勤が伴わない働き方を提供することが可能です。

またコールセンター以外でも、例えばオフィスを持たずリモートワークを中心とする会社において、顧客や社内のスタッフとの連絡手段として電話環境を構築するといった際に有効です。
さらに、オフィス移転や拠点の新規立ち上げにおいても効果を発揮します。

  • 設定変更や回線数の変更が簡単

クラウドPBXは、オンプレミスのPBXと比較して簡単に設定変更ができます。番号の発行・削除がスピーディーにできるほか、インターネットブラウザで操作できる管理画面から設定変更(IVR・ACD・転送先など)が可能なため、臨機応変な運用が可能です。

また、オンプレミスのPBXでは、オフィス内のレイアウト変更などを行う際に電話回線の敷設工事が必要になることもありますが、クラウドPBXはインターネット環境さえあれば利用できるため、変更の影響が比較的少ないでしょう。組織変更や異動に伴う対応なども、コスト・時間をかけずに実施できます。

  • システム保守のコストが不要

クラウドPBXは多くの場合、システム保守もサービスに含まれており、社内における保守コストが不要であることが一般的です。通常、システムの導入後には、セキュリティ対応やバージョンアップ対応などの作業が必要ですが、クラウドPBXにおいては基本的にベンダー側がこれらの作業を実施します。

保守にはコストだけではなく人的なリソースも必要となるため、クラウドPBXは省力化にも有効といえるでしょう。

  • 付加機能・外部システム連携が豊富

クラウドPBXでは、システム提供をしているベンダーによって「IVR(音声ナビ)」「ソフトフォン」「稼働状況モニタリング」「通話録音」といった機能を標準で提供しているサービスもあります。

また、CTI・CRM・音声認識AIといった周辺システムと連携することで、着信と同時に顧客情報をPCに表示したり、通話音声を書き起こしたりできるなど、応対品質向上・オペレーターの負担軽減に役立つさまざまな機能が利用できます。

 クラウドPBXのデメリット

  • 通話品質

クラウドPBXを利用する場合、インターネット回線の通信環境が通話品質に影響します。通話品質の維持・向上のためには、有線で接続するなど安定したインターネット環境で使用する必要があります。

また、ベンダーによっては満足のいく通信品質が確保されないリスクも存在します。

  • 番号が継続できない場合がある

現在利用している電話番号によっては、クラウドPBXの導入時に変更が必要となるケースがあります。電話番号の継続可否は各サービスで異なりますが、BIZTELの場合は、原則として以下の通りです。

【BIZTELの場合】

  1. 03/06などの地域番号
    :政令指定都市の番号に対応しており、基本的に継続利用が可能(電話番号の契約状況によっては、ルータ・ゲートウェイの設置などが必要になるケースあり)。
  2. 0120/0800/0570番号
    :場合によりキャリアの変更が必要になるものの、基本的には継続利用できる。
  3. 050番号
    :原則としてBIZTELでの継続利用はできない(ただし、一部のケースにおいて継続利用できる)。
  • 特定番号への発信が不可

クラウドPBXは、一般的に「110番」や「119番」など、特定番号への発信ができません。ただし、多くの企業やコールセンターでは、特定番号への発信が必要となる可能性は低いため、影響は少ないでしょう。

  • セキュリティ対策

クラウドPBXしかり、クラウドサービスは外部ネットワークと接続するため、利用にあたってセキュリティ面の懸念をする企業もあることでしょう。

クラウドPBXに限らず、一般的にフリーWi-Fiなどのパブリックネットワーク(公衆インターネット回線)を使用する場合は、不正アクセスや盗聴(パケット・スニッフィング)などのセキュリティリスクが存在します。パブリックネットワークには不特定多数の人間がアクセスするため、セキュリティリスクをゼロにすることは困難です。リスクをできるだけ抑えるためにも、業務への利用は避けるべきでしょう。

自身が契約している自宅回線では、このようなセキュリティリスクは起こりにくいですが、企業内のルールや取り扱う情報などに応じて、VPNや通信の暗号化といったセキュリティ対策を確認しておくと安心です。

  • FAX連携

FAXはアナログ電話回線をベースとして開発されていることから、機種や環境によっては継続して利用できない場合があります。ただし、クラウドPBXのサービスによってはインターネットFAXを提供しており、そちらを利用することができます。

クラウドPBXのデメリットについて詳しく知りたい方はこちら

クラウドPBXのデメリットを解消するためのポイント

クラウドPBXのデメリットは、正しく対応すれば解決できます。

以下では、クラウドPBXのデメリットを解決する方法を紹介します。

事前の確認・トライアル利用

通話品質は、実際にサービスを利用してみないと判断できません。多くのクラウドPBXでは無料トライアルを提供しているため、導入する前に利用して、実際の音質や使い勝手などについて確認してみることをおすすめします。

インターネット回線の整備(光回線利用)

通話品質の維持・向上のためには、安定したインターネット環境が欠かせません。光ファイバー回線を利用することで、アナログ回線にも劣らない通話品質が実現できます。

また、社内のLAN環境を有線化することで、通信の安定性が高まります。クラウドPBXの提供ベンダーは設備・環境に関する知見があるため、適切にベンダーを選べば、通信品質について重大な問題が発生するリスクは低いでしょう。

番号ポータビリティの利用

クラウドPBX導入後の電話番号の変更を防ぐには、LNPサービス(固定電話番号ポータビリティ)を活用しましょう。LNPサービスの対応エリアであれば、既存番号を継続できるケースが多いです。

LNPサービスが利用できない場合でも、専用ルータやゲートウェイを設置すれば既存番号を継続利用できる可能性があります。

セキュリティ対策

ベンダー側のセキュリティ対策やサービス内容をよく比較して選定を行うことで、セキュリティリスクを低減できます。

近年では、クラウドサービスのセキュリティ機能が大幅に底上げされており、オンプレミス型と遜色のないレベルを実現している製品も多数あります。FW(ファイアウォール)や暗号化・ウィルスチェックなどの機能を提供しているサービスを選ぶことで自社のセキュリティポリシーに即した形で利用ができ、リスクを最小化できるでしょう。

また、上述した通りパブリックネットワークは盗聴のリスクが高まるため、利用しないことをおすすめします。なかには盗聴の対策として、音声の暗号化機能を備えているサービスもあります。必要に応じてこのようなセキュリティ対策オプションを利用することも有効でしょう。

実績のあるベンダー選び

上述した通信品質やセキュリティリスクなども含めて、クラウドサービスは提供ベンダーに多くを依存する仕組みとなります。よって、適切なベンダーの選定は、あらゆるデメリットを排除するためのもっとも重要なポイントです。

ベンダー選定において注目したいのが実績です。多くの企業に選ばれている実績豊富なベンダーは、信用度が高いといえます。また、導入実績が多いほど、多様な企業からの要望やトラブル対応などの経験があるため、社内にスキルが蓄積されている可能性が高いでしょう。

クラウドPBX選定時の比較ポイントとは?

最後に、ここまでの内容を踏まえてクラウドPBX選定時のポイントを解説します。以下のポイントを考慮して選定を行うことをおすすめします。

スケールのしやすさ

事業の拡大・縮小や新拠点の立上げなどがスムーズに行えるよう、席数を柔軟に増減できるサービスを選びましょう。また、月単位で契約内容を見直せるサービスであれば、業務の繁閑に合わせて席数を変更し、コストをコントロールすることができます。

通話品質

音切れや音声の遅延などがあると、エンドユーザと通話する際に適切なコミュニケーションがとりにくくなり、顧客満足度低下の要因となります。また、音声品質の低さが顧客の不満やいらだちを喚起し、苦情を発生させてしまうケースもあります。クラウドPBXを選定する際はトライアルを行い、顧客・オペレーターの双方にストレスのない通話が可能かチェックしましょう。

ソフトフォン・スマートフォンへの対応

ビジネスフォン以外に、ソフトフォン・スマートフォンに対応できるかも重要なチェックポイントです。これらの端末は場所を選ばず利用できるため、リモートワークや在宅勤務時の電話環境の構築が容易になります。

利用開始までのリードタイム

クラウドPBXには、5~10営業日程度で利用可能なサービスもあります。短期間での新規拠点設立や臨時のコールセンター開設といった急を要する案件では、リードタイムが短いサービスを選ぶことが必須条件となります。

他システムとの連携力

CTI・CRM・音声認識などとの連携がスムーズに行えるクラウドPBXであれば、顧客情報の管理・オペレーターの稼働状況管理・対応履歴の可視化・顧客満足度対策などがワンストップで行えます。システム全体の使いやすさ・機能性は、外部システム連携によっても大きく上下するため、連携機能に強いPBXを選ぶようにしましょう。

ベンダーの実績

過去の実績(どのような規模・業界・内容のコールセンターを構築したか)を、具体的に開示しているベンダーがおすすめです。特に、複数の業界で豊富な実績を有するベンダーであれば、ユーザの要望に柔軟に応えることができる技術力・ノウハウ・提案力などを持っている可能性が高いでしょう。

まとめ

本稿では、クラウドPBXの基礎知識やメリット・注意点を解説しながら、選定時のポイントを紹介してきました。クラウドPBXは拠店設立・拡大・多拠点化など、コールセンターの柔軟性・事業継続性強化に活用できるツールです。ただし、セキュリティ他システムとの連携など、サービス選定時には注意すべきポイントがあります。
クラウドPBXの導入にあたっては、製品自体の機能に加え、取り扱いベンダーのノウハウや技術力も重視しつつ比較を行ってみてください。

 

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